真っ黒なつやのある毛と輝く瞳が魅力的な黒猫。
しかし、「黒猫は魔女の使い」、「黒猫が目の前を横切ると悪いことが起こる」など、悪いものの象徴として忌み嫌われることもありました。
ですが、その一方で幸運のシンボルとして大切にされることもあります。さまざまな毛色の中で、なぜ黒猫はこのように特別視されるのでしょうか。
今回の記事では、黒猫の歴史や言い伝えをご紹介します。
まずは黒猫基礎知識として、定義や特徴、黒猫が良く見られる品種について解説します。
黒猫とは、名前通り真っ黒な毛に覆われたねこのことです。毛だけではなく、ひげや肉球も黒いことが多く、その姿はまるで闇夜をねこの形に切り取ったようです。
しかし、中には胸やお腹に白い毛がある黒猫もいます。中にはまるでパンツを履いたように、お腹の下の方に▽の白い模様が出ることもあり、とてもユーモラスです。このように、黒猫の体の一部に見られる白い毛を「エンジェルマーク」といいます。
また、黒が大部分を占めている黒白ブチねこや、ブラックスモーク(毛の外側が黒く、内側が白い模様)なども、「黒猫」と呼ばれることがあります。
眼の色はさまざまですが、イエローやカッパーが多い傾向にあります。これらの目の色はメラニン色素の多い、すなわち色の濃いねこに出やすいためです。
黒猫は比較的おっとりしていてマイペース、ひとなつっこい子が多いといわれています。これは目立たない毛色をしているために警戒心が薄いためと考えられています。しかし、毛色と性格の関係性ははっきりしておらず、個体差が多いといえるでしょう。
黒猫はミックス(雑種)にも多く、メジャーな毛色です。しかし、純血種の中にも魅力的な黒猫は多数存在します。その中から特に有名な品種をご紹介しましょう。
【1】ボンベイ
純血種の黒猫といえばボンベイです。ボンベイはアメリカンショートヘアとバーミーズの交配によって誕生した品種で、小さなクロヒョウのような細く筋肉質な体つきとつやのある黒い毛が魅力です。目の色はゴールド、もしくはオレンジがかっています。活発で甘えることが大好きな、温和な性格が多いようです。
※関連記事:小さな黒豹ボンベイ!黒猫とはどこが違うの?
【2】スコティッシュフォールド
ぺたんと折れた耳ととぼけた表情が大人気のスコティッシュフォールドにも黒猫が存在します。スコティッシュフォールドは毛色も毛の長さもバリエーション豊かです。その中でも黒一色のスコティッシュフォールドはレアであるようです。
※関連記事:耳折れが可愛い!スコティッシュフォールド
【3】アメリカンショートヘア
アメリカンショートヘアといえばシルバーの毛に黒い渦巻き模様が有名ですが、ブラウンやクリームなどさまざまなカラーがあります。
ブラック系のアメリカンショートヘアは全身真っ黒なもの、白の混じったバイカラー、ブラックスモークなどがあります。シルバー系やブラウン系と比較すると、やや珍しいためか価格も高めです。
※関連記事:長く人気のあるアメリカンショートヘアの特徴とは?
【4】その他
他にも、以下のような品種に黒猫が見られます。
・マンチカン ・アメリカンカール ・ブリティッシュショートヘア ・ペルシャ ・メインクーン ・ノルウェージャンフォレストキャット ・サイベリアン ・ターキッシュアンゴラ ・ブリティッシュロングヘア ・スフィンクス ・ラパーマ ・セルカークレックスなど |
ねこはネズミを捕ることから人に大切にされ、いつしか人と一緒に暮らすようになったといわれています。その中で農業や漁業の守り神として貴ばれるようになりました。
しかし、さまざまな毛色のねこの中でも、黒猫はその黒い毛が持つ神秘性のために、良くも悪くも特別な存在としてとらえられていたようです。
黒猫と人との関わりの歴史をご紹介します。
黒猫が悪魔のしもべとして恐怖の対象となっていたのは有名な話です。その始まりは、13世紀のヨーロッパであるといわれています。暗闇でも目が見えるねこは「地獄の生き物」とされ、中でも喪服や悪霊を連想させる黒い毛皮を持つ黒猫は魔王サタンの化身であるとも考えられたのです。
黒猫にとって最も暗黒の時代となったのは、13~17世紀のヨーロッパで行われた「魔女狩り」でしょう。戦争や飢饉、病気の蔓延に苦しむヨーロッパの人々は、その怒りの矛先を「魔女」に向けました。魔女は黒猫が身近にいる、孤独で非社会的な女性と考えられており、彼女たちは黒猫と一緒に火あぶりにされたのです。なお、魔女狩りにおいては黒猫以外のねこも迫害の対象となっており、飼い主と一緒に火刑台に引き立てられたねこも数多くいました。魔女狩りによって火あぶりになったねこは、数百万匹にものぼるといわれています。
魔女狩りでのねこの迫害はかえってヨーロッパの人々を苦しめることになりました。ねこの数が減ったためにネズミが増え、ネズミが媒介する疫病が大流行したためです。
ここでやっと、ネズミを捕ってくれるねこの存在が重要視されるようになり、17世紀初頭に魔女狩りは終わりを迎えました。その後もねこを火あぶりにする儀式は行われていましたが、18世紀にルイ15世がねこの火あぶりを禁止する命令書を作成させ、黒猫をはじめとするねこたちは、やっと平和を手にすることができたのです。
魔女狩りの時代は遠く過ぎ去りましたが、現在でもヨーロッパにおいて黒猫は不吉の象徴とされ、虐待の対象となっているという問題があります。
そのため、欧米では黒猫の魅力をアピールし、虐待から守るために「黒猫の日」が設けられています。
有名な「黒猫の日」は以下の通りです。
アメリカ | Black Cat Appreciation Day
黒猫感謝の日 |
8月17日 | 黒猫をこよなく愛した女性の命日に由来。黒猫が「不吉」といわれる迷信を払拭し、里親探しを広めることを目的とし、黒猫を愛でる一日とする |
イギリス
アメリカ |
National Black Cat Day
全国黒猫の日 |
10月27日 | 黒猫の殺処分数が多い問題を受け、動物愛護団体Cat Protectionが制定。 |
イタリア | Gatto Nero Day
黒猫の日 |
11月17日 | 動物愛護団体AIDAAが主体となり、黒猫虐待に反対する様々なイベントを開催する。 |
先ほどご紹介した「黒猫の歴史」からも分かる通り、黒猫は不吉の象徴とも幸運のシンボルともとらえられてきました。黒猫のとらえ方は国によって、時代によってさまざまであり、数多くの言い伝えがあります。その中からいくつかご紹介します。
魔女狩りが行われていたヨーロッパでは、黒猫は不吉の象徴と見なされることもあります。主な言い伝えとしては以下のようなものがあります。
黒猫は不吉といわれる一方で、幸運のシンボルとされる言い伝えもあります。
特に日本では、黒猫の瞳は暗闇でも良く見えることから、魔よけや幸運の象徴と考えられていたようです。黒猫を幸運のシンボルとする言い伝えとしては、以下のようなものがあります。
黒猫にまつわる歴史や言い伝えをご紹介しました。黒猫はそのミステリアスな見た目から、他の毛色のねことは違ったイメージがあり、人に特別な感情を抱かせます。しかし、それゆえに悲惨な迫害に巻き込まれたという事実も見逃せません。
そんな黒ねこを守るため、欧米では黒猫を記念する日が設けられ、黒猫が幸せに生きていけるようさまざまな活動がなされています。
また、日本では闇の中で光る黒猫の目は、不安や迷いを照らす光のようにもとらえられ、邪を祓い幸運を呼ぶ存在として大切にされていました。
つやのある神秘的な黒い毛、キラキラ光る瞳、ひとなつっこい性格。黒猫は今も昔も、人の心をとらえて離しません。迫害の歴史を越え、黒猫は穏やかに丸まって、人の生活に寄り添い続けているのです。