家の中で飼っているねこですが、外から迷い込んできたハチやヘビと出会ってしまうこともあります。ねこは好奇心旺盛なので、小さな生物にじゃれついて、刺されたりかまれたりすることも少なくありません。
ねこが虫やヘビに傷つけられた場合、どのような対処をすれば良いのでしょうか。
今回の記事では、ねこを傷つける恐れのある生き物やその特徴、そうした生き物からねこを守る方法をご紹介します。
虫の中には毒を持つものも多く、刺されたりかまれたりすることで重篤な症状を引き起こすこともあります。特に注意したい虫と、引き起こされる症状について解説します。
毒のある虫の代表といえばハチです。街中に住むハチにはスズメバチ、アシナガバチ、ミツバチ、クマバチがありますが、特にスズメバチは攻撃性が高く、毒も強いため注意しなければなりません。
外から入り込んだハチを捕まえようとして前足を刺されたり、顔を近づけて鼻や口の周りを刺されてしまったりすることがあります。ミツバチは一度刺すと死にますが、スズメバチやアシナガバチは毒がなくなるまで何度も刺すため、被害がさらに大きくなります。
また、ハチの死体にも注意が必要です。ハチが死んでも毒は残っているため、ねこが触って毒針が刺さり、ケガをしてしまうことがあります。
ハチの毒は非常に危険です。ハチに刺されると激しい痛みを感じ、数時間後には大きく腫れあがります。
損傷がひどいと組織が壊死してしまうため、他の感染症にかかるリスクも無視できません。また、震えや嘔吐、てんかんといったアナフィラキシーショックを起こすこともあります。
ねこがハチに刺されたら、まずねこが興奮しないように落ち着かせて、毒針を抜き、傷口を流水で洗い流します。その後、患部を冷やしながら動物病院へ連れて行きましょう。
ハチと並んで恐ろしい毒虫です。頭にある顎状の足(顎肢)から毒を分泌し、敵をその足で挟んで(かんで)攻撃します。
ムカデにかまれると患部は腫れて赤みを帯び、痛みを感じます。
ムカデの毒は高温で活性が下がるため、患部に熱めのお湯(43℃程度)をかけると良い、とも言われていますが、人間ならともかく、ねこの場合はおとなしくお湯を浴びてくれるとは限りません。
すぐに病院に連れて行き、治療を受けたほうが良いでしょう。
蚊はハチやムカデのような毒はありませんが、室内に入り込みやすく、刺される頻度が高いため要注意です。
耳の内側や鼻先のような毛の薄い部分の血を吸われることが多く、吸われると発疹やかさぶたができることがあります。
さらに怖いのが蚊によるフィラリアの媒介です。フィラリアは寄生虫の一種で、フィラリアに感染した動物の血液を蚊が吸うことで幼虫が蚊に移り、次の吸血の際に、動物の体内に侵入します。
フィラリアが肺の血管に到達すると、咳や呼吸困難、体重減少といった症状が引き起こされることがあります。
アリの毒であるギ酸は、一時的な激しい痛みを引き起こすのが特徴です。ねこのごはんに集まることがあり、一度侵入すると追い払うのが難しいやっかいな虫です。
また、2017年(平成29年)には、ヒアリが初めて日本で確認されました。ヒアリは特定外来物で、お尻に毒針を持っています。刺されると患部に激痛や痒みが出るほか、発熱やじんましんが生じることもあります。
ヒアリの特徴は以下の通りです。
ヒアリに刺された場合は患部の毒を押し出し、流水で患部を洗浄、冷やした後、すぐに病院へ連れていきましょう。
虫以外で毒を持つ生き物と言えばヘビがいます。毒を持つものと持たないものがあるので、毒ヘビの特徴を知ることが重要です。
日本にいる有毒ヘビはニホンマムシ、ヤマカガシ、ハブの3種類です。そのうちハブは沖縄地方を中心としたごく狭いエリアにしかいません。
今回はニホンマムシとヤマカガシの特徴をご紹介します。
【1】ニホンマムシ
日本で毒蛇といえばこのニホンマムシです。体長は40~60センチ、茶褐色の体に「銭型模様」と呼ばれる斑点があります。無毒のヘビと比べて、頭が三角形に近い形をしているのが特徴です。
性格はおとなしく、自分から攻撃してくることはありませんが、刺激すると飛びついて牙を立てます。人間の場合は、草むらや山を歩いていてうっかりマムシを踏んでしまい、かみつかれるというパターンが多いです。
ねこがマムシにかまれると、腫れやあざ、発熱、嘔吐、下痢、尿が赤くなる、呼吸困難などの症状を引き起こします。手当てが遅れるとかまれた周辺が壊死してしまうこともあります。
【2】ヤマカガシ
非常に強い毒を持ったヘビです。体調は60~120センチで、赤い模様が入っており、いかにも毒蛇といった外見ですが、個体差が大きいため地味な色合いに見える場合もあります。
また、顔もマムシに比べると丸いため、毒蛇に見えづらいかもしれません。
とてもおとなしい性格ですが毒性は非常に高く、かまれると嘔吐や下痢、発熱、震えやけいれんが起こります。患部が腫れないこともあり、発見が遅れてしまう場合があるため注意が必要です。
有毒のヘビにかまれた場合は、毒の吸出しや患部の洗浄を行います。専門的な技術や道具が必要になるため、一刻も早く病院へ連れていき、治療を受けましょう。
日本にいる主な無毒ヘビを3種類ご紹介します。
【1】アオダイショウ
日本全国に生息するヘビで、体調は100~200センチと大きめです。体はオリーブ色で、濃い褐色の縞模様があります。目の後ろの黒い筋で、他のヘビと見分けることができます。
【2】シマヘビ
アオダイショウと並んで生息数の多いヘビです。名前の通り茶色の体に黒の縞が入っています。マムシと色味が似ているので間違いやすいですが、先ほどご紹介したとおりマムシは銭型模様をしているので見分けることができます。
【3】ヒバカリ
「かまれるとその日ばかりの命(当日中に亡くなってしまう)」というのが名の由来ですが、実際は無毒です。
大人のヘビは淡い褐色に茶色の斑点模様、幼蛇は黒っぽい色をしています。おとなしい性格で、よほどのことがない限りかまれることはありません。
無毒のヘビは、有毒のヘビほど危険ではありません。しかし、牙に雑菌がついているため、かまれると傷口が化膿してしまう恐れがあります。すぐに病院へ連れていきましょう。
カエルは刺したりかんだりすることがなく、一見無害そうに感じられます。しかし、ねこがじゃれついてカエルに触れると、中毒や寄生虫への感染といったリスクがあります。
カエルの中で特に注意したいのはヒキガエルです。ヒキガエルは7~10cm程度の大きめのカエルで、畑や庭、公園など人の住む場所の近くでも多く見られます。
ヒキガエルは外敵から身を守るため、耳の後ろにある耳下腺や皮膚から毒液を出します。その液をねこが食べてしまうと、以下のような症状を引き起こすことがあるため注意が必要です。
・発作、けいれん
また、毒液のついた前足で目をこすると、失明するリスクがあります。
ねこがヒキガエルにさわり、中毒と見られる症状が出た場合はすぐに動物病院へ連れて行きましょう。
カエルは鳥やネズミに比べると動きが鈍いため捕まえやすく、ねこが捕まえて食べてしまうこともあります。
しかし、カエルを食べると裂頭条虫に感染する恐れがあります。毒性はそれほど高くありませんが、嘔吐や下痢を引き起こすことがあるため注意が必要です。
ねこを虫やヘビなどの害から守るためには、どのような点に気をつければ良いのでしょうか。飼い主ができる対策を以下にご紹介します。
最も重要な対策法は完全室内飼いをすることです。外に出なければ、虫やヘビといった生き物と遭遇する確率はぐっと減ります。
事故や病気の感染リスクを大幅に減らせる点も完全室内飼いの大きなメリットです。
室内飼いをしていても、外から入ってきた虫やヘビにかまれてしまうこともあります。以下のような対策を行い、侵入を防ぎましょう。
ハチ | ・木酢液など、ハチが好まない匂いを使う
・換気扇や通気口、室外機などハチの侵入経路を防ぐ |
ムカデ | ・侵入口をふさぐ
・ムカデが好む湿気を除去するため、換気や除湿を行う ・ムカデのエサになるゴキブリを増やさないよう、部屋の掃除をこまめにする |
蚊 | ・ボウフラが発生するような水たまり(植木鉢の受け皿や排水溝など)を作らないようにする
・網戸をつけて蚊の侵入を防ぐ |
アリ | ・侵入口をふさぐ
・室内にいるアリや巣を駆除する ・重曹と砂糖を混ぜて食べさせる ※ギ酸と重曹が結びつくと二酸化炭素が発生するため、アリを駆除できる ・食べ残しなどを片付けて部屋を清潔にする |
ヘビ | ・侵入口をふさぐ
・ヘビのエサになるネズミが侵入しないよう、食べ残しなどを片付けて部屋を清潔にする |
カエル | ・カエルのエサになる虫が増えないよう、部屋や庭を清潔にする |
忌避剤や殺虫剤は効果が高いですが、ねこの体に悪いものもあるため注意が必要です。
また、ハーブやアロマもねこに有毒なものがあります。特に虫やヘビの忌避剤として良く使われるハッカ油は、ねこの体内に入ると中毒症状を引き起こすことがあります。
「自然のものだから」と安易に使うのではなく、ねこに悪影響を及ぼさないかしっかり確認しましょう。
虫やヘビにかまれたり刺されたりした場合は、すぐに病院へ連れて行きましょう。すぐに症状が出ていなくても、数分後~数時間後に毒が体に回ることで呼吸困難やけいれんといった重篤な症状が現れる場合があるためです。
また、雑菌による傷の悪化や寄生虫感染といったリスクもありますので、獣医師に相談することも重要です。
ねこに害を与える虫やヘビなどの生き物と、その対処法について解説しました。小さな生き物であっても、ねこや人に害を及ぼせるような強い毒を持っていることは少なくありません。ねこは小さな生き物を見ると狩りの本能が刺激され、ついじゃれついてしまいます。その何気ない行動が重篤な症状を引き起こすこともあるのです。
ねこを虫やヘビの害から守るためには、完全室内飼いをすること、外から生き物が入ってこないよう対処することが重要です。それでも被害を受けてしまった場合は、すぐに獣医師に判断を仰ぎましょう。