柔らかくてたっぷりあるねこの毛。毛づくろいをしたりスリスリしたりするたびに抜けるのは当然ですが、ごっそり毛が抜けてしまうと、「病気なのでは?」と心配になってしまいます。ねこの毛がたくさん抜けるのには、どのような理由があるのでしょうか。また、どのように対処すれば良いのでしょうか。ねこの脱毛についてご紹介していきましょう。
まずは、ねこの毛が抜ける主な原因を見ていきましょう。
換毛期とは、気候に合わせて動物の毛が生え変わる時期を指します。一般的に、ねこの毛は春頃~夏に夏毛に、秋頃から冬毛に生え変わります。特にダブルコート(毛が二層になっている)のねこは換毛期がはっきりしているうえ、毛が多いのでごそっと脱毛したように見えます。しかし、自然なことなので心配はいりません。
感染症やアレルギーといった病気により毛が抜けるケースもあります。毛が抜ける以外に、皮膚にかゆみや発疹といった症状が見られる、食欲や元気がないという場合は要注意です。すぐに動物病院で診察を受けましょう。
脱毛を伴う病気については、後ほど詳しくご紹介します。
栄養の偏りによって毛が抜けるケースもあります。ねこの被毛を健康的に保つためには、質の良いたんぱく質、ビタミンA、Eといった栄養素が必要です。これらの栄養が不足すると、毛がもろくなり、抜けてしまうことがあります。
また、逆に食べ過ぎも栄養のバランスが崩れて脱毛の原因になることがあります。
ねこはグルーミングを良く行います。ねこの舌はざらざらしており、その舌で毛をなめることで毛の間の汚れをかきとり、清潔を保っています。
また、怖いことや決まりの悪いことがあったとき、グルーミングをして気持ちを落ち着けようとすることもあります。
ストレスがたまったねこは過剰にグルーミングをしてしまいます。ざらざらした舌で毛をなめ続けるため、毛が削り取られて抜けてしまうことがあるのです。
ねこの舌が届く部分だけが脱毛している場合は、ストレスによる過剰なグルーミングが原因かもしれません。
先ほどご紹介したとおり、病気によって毛が抜けるケースもあります。その中でも特に良く見られるものや、重篤な症状のあるものをご紹介します。
脱毛の原因として多いのが菌・ダニの感染です。一緒に飼っている他のねこや動物、また人にうつることもありますので、速やかに治療しなくてはなりません。主な感染症としては以下のようなものが挙げられます。
【1】疥癬
疥癬はヒゼンダニが原因で起こる皮膚病です。ヒゼンダニは皮膚の表面ではなく中に寄生し、皮膚の中にトンネルを作ります。非常に強いかゆみを引き起こすため、ねこは自分の体をかきむしり、毛が抜けてしまいます。
【2】皮膚糸状菌症
皮膚糸状菌症は、真菌の一種である皮膚糸状菌が引き起こす皮膚病です。感染している動物と接したり、菌のいる場所に行ったりすることで皮膚に菌が触れると感染します。
顔の周りや足の一部分に円形の脱毛やフケ、かさぶたができるのが初期症状です。治療が遅れると症状が全身に広がったり、厚いかさぶたができたりします。また、脱毛部分をかゆがってかきむしってしまうこともあります。
人にも感染することがあるため、この感染症にかかっているねこは別室に隔離し、お世話をした後は手を洗うなど、感染しないように気をつける必要があります。
アレルギーは体内に入ったアレルゲンに過剰反応してしまうことで発症します。アレルゲンとしてはノミやダニ、食べ物が多いですが、花粉やハウスダスト、特定の素材(金属、プラスチック、ゴムなど)などに反応するねこもいます。
アレルギー性の皮膚炎はねこの目の周りや腹部に多く見られます。発疹や脱毛が起こり、かゆみを伴うためねこが舐めて患部を広げてしまう場合もあります。
皮膚病や内分泌疾患により毛が抜けるケースもあります。脱毛が見られる病気の代表例を以下にご紹介します。
【1】日光皮膚炎
日光(紫外線)に当たることで起こる皮膚炎です。耳の先や鼻、唇など毛が薄い場所に良く見られます。また、白ねこは皮膚や毛の色素が薄いために紫外線の影響を受けやすく、日光皮膚炎が多く見られるようです。
初期症状は皮膚が赤くなり毛が抜ける程度ですが、さらに段階が進むと皮膚の炎症や硬化、かゆみが出るようになります。放っておくと扁平上皮癌という皮膚がんになってしまうこともあります。
【2】線状肉芽腫
白血球の一種である好酸球が過剰に働くことで引き起こされる「好酸球性肉芽腫群」の症状の一つです。太ももの後ろ側に起こりやすく、名前通り線状に肉芽腫が盛り上がり、毛が抜けます。かゆみや赤み、ふけを伴います。
【3】甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症は甲状腺で作られるホルモンが過剰に分泌されることによって引き起こされます。脱毛のほか、多飲多尿、多食、嘔吐、下痢、体重が減る、怒りっぽくなるといった症状が見られることもあります。特にシニアねこに起こりやすい病気です。
他にも糖尿病や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)といった、代謝・内分泌疾患によって脱毛する場合もあります。
先ほどご紹介したとおり、ねこの脱毛の原因はさまざまです。それでは、心配な脱毛と自然な脱毛はどのように見分けたら良いのでしょうか。ねこの毛が抜けた時に、飼い主がすべきことをご紹介します。
ねこの毛がたくさん抜けていたら、ねこの様子を良くチェックしましょう。例えば、以下のような症状がある場合は、病気が疑われます。
毛がたくさん抜ける換毛期には、ブラッシングを行いましょう。体の表面に残っている抜け毛を取れるだけではなく、血行増進やコミュニケーションができる点もブラッシングのメリットです。また、換毛期の抜け毛のように見えても、病気やアレルギーなど他の要因が隠れていることもあります。ブラッシングをして皮膚や被毛の状態をチェックすることで、いち早く異常に気づくことができます。
ブラッシングが苦手なねこはかえってストレスになってしまうことがありますので、1日に数分程度の短時間で行う、ブラッシングの後におやつをあげるなど、ブラッシングが苦痛にならないよう工夫してあげることも重要です。
アレルギーやストレスによる脱毛は、元を断たない限り治すことはできません。以下のような対策をして、原因を取り除きましょう。
※必ず獣医師に相談し、指示に従ってください。
脱毛の原因 | 対処法 |
ノミ・ダニアレルギー | ・ノミ・ダニの駆除を行う |
食物アレルギー | ・キャットフードを見直す
・人の食べ物を口にしないよう、食べ物は冷蔵庫や戸棚にしまう、ゴミ箱にふたをつける |
カビやハウスダストなどのアレルギー | ・部屋の掃除をする
・ねこのおもちゃや食器を洗い、清潔を保つ |
日光皮膚炎 | ・日焼け止めを塗る(病院で処方してもらう)
・窓ガラスにUVカットシートを貼る ・日に当たる時間を制限する |
栄養不足や食べすぎ | ・キャットフードや食事量を見直す |
ストレス | ・ストレスの原因をつきとめて、可能な限り取り除く
・遊んだりかわいがったりして構ってあげる |
脱毛が激しい、他の症状があるという場合は病院で診察を受けましょう。その際には、以下のような点をメモしておくと診察がスムーズです。
ねこの脱毛の原因と対処法をご紹介しました。ねこは換毛期に毛が生え変わる動物であるため、毛がたくさん抜ける=病気ではありません。しかし、毛や皮膚に異常があったり、体調が悪そうだったりする場合は何らかの問題が隠れている場合がありますので、動物病院で診察を受けましょう。そして、適切な治療をするとともに、飼育環境を整えて、ねこのきれいなモフモフの毛を守ってあげましょう。