ねこも人間と同じように、赤ちゃん返りをします。
ねこが赤ちゃんみたいに甘えたり、頼ってきたりするのはかわいいですが、その行動の裏にはさまざまな問題が隠れていることもあります。
今回の記事では、ねこが赤ちゃん返りをした時にする行動や赤ちゃん返りをする理由、対処法についてご紹介します。
ねこも赤ちゃん返りをすると、子ねこのようにふるまうことがあります。主な行動としては、以下のようなものが挙げられます。
毛布や人の手をチュッチュッと吸ったり、前足を交互に動かしてフミフミしたりするのは、赤ちゃん返りの代表的な行動です。
赤ちゃんねこはお母さんねこの乳首に吸いつきながら、お乳を前足でもみます。そうすることでお乳の出を良くしようとしているのです。何らかの原因で赤ちゃんの頃の癖が残ると、大人のねこになっても身近なものに吸いついたりもんだりします。このような時、ねこはうっとりと目を細めてゴロゴロと喉を鳴らしています。お母さんねこに抱かれてお乳を飲む、幸せな赤ちゃん時代に戻っているのです。
実は鳴くのも子ねこ特有の行動です。子ねこは鳴くことでお母さんねこに自分の存在を知らせ、コミュニケーションを取っています。大人のねこが鳴くのは、基本的に発情期とけんかの時だけです。
しかし、飼いねこは飼い主を親だと思うため、鳴いて気を引こうとします。このような時の鳴き声は、「ニャーーーー」というような長めの、甘い響きになります。
また、ゴロゴロ喉を鳴らすのも子ねこが母ねこに対して存在を知らせたり、甘えたりしている時の行動です。
長く鳴いたりゴロゴロ喉を鳴らしたりしている時、ねこは飼い主を「お母さん」だと思って甘えているのです。
飼い主にずっとスリスリしたり、ぴったりくっついて座ったりするなど、甘えるような行動も、赤ちゃん返りをしたねこに良く見られます。
ねこが甘えてくれるのは嬉しいのですが、中には飼い主を追い回したり、姿が見えなくなると泣き叫んだりするなど、問題行動に発展することもあります。このように、ねこが病的に飼い主と離れるのを嫌がることを「分離不安」といいます。
赤ちゃん返りがおそそうやいたずらといった困った行動につながってしまうこともあります。飼い主と離れている不安や、飼い主の気を引きたい気持ちの表れであると考えられています。
また、赤ちゃん返りにより攻撃的な性格になることもあります。引越しや、同居人・同居ねこが増えた時のストレスが原因になっていることが多いようです。
ねこが赤ちゃん返りをする理由としては、以下のようなものが挙げられます。
赤ちゃんの時に捨てられた、もらわれてきたなど、お母さんねこと過ごす時間が短かったねこは赤ちゃん返りをしやすい傾向にあります。
お母さんねこに十分甘えられなかった分、飼い主に甘えているのでしょう。特に飼い主や物をもんだり吸ったりする行動が出やすいようです。
人の子どもと同じく、飼い主に赤ちゃんが生まれた時に急に赤ちゃん返りをして、甘えん坊になったり攻撃的になったりするねこも多いようです。
これは環境が変わったことへのストレスや、飼い主が赤ちゃんにかかりきりになり、自分に構ってもらえなくなる不安が原因になっていると考えられます。
このように、環境の変化によりねこが不安やストレスを感じると、赤ちゃん返りをすることがあります。例としては以下のようなものが上げられます。
避妊・去勢手術をしたねこは、未手術のねこと比べて甘えん坊で、赤ちゃん返りをしやすい傾向にあります。手術をしたねこは、交尾の相手を探したり、ライバルのおすねことけんかをしたりする必要はありません。愛情や興味の対象が親のように面倒を見てくれる飼い主だけになるため、赤ちゃんのようにふるまうというわけです。
老化や病気により赤ちゃん返りをするねこもいます。思うように動けない、目が見えづらくなってきたといった体の衰えや苦痛により不安を覚え、飼い主のそばにいたがるようになるのです。
また、シニアねこであれば、認知症による赤ちゃん返りも疑われます。認知症になると欲求のコントロールが難しくなり、何度もごはんをねだったり、昼夜構わず大きな声で鳴き続けたりする場合があります。
赤ちゃん返りは一見かわいらしく見えますが、その影にはストレスや不安、病気が隠れている場合があります。なぜ赤ちゃん返りをしたのか原因をつき止め、何らかの問題がある場合は対処をしてあげなくてはなりません。
ねこが赤ちゃん返りをしたときの対処法について解説します。
赤ちゃん返りの多くは、飼い主に構ってもらえないことへの不満や、環境の変化によるストレスが原因になっています。
赤ちゃん返りが始まったら、一緒にいる時間をなるべく増やし、遊びやブラッシングなど、愛猫の好きなことをしてあげると良いでしょう。
仕事や育児で忙しく時間が取れないという場合も、合間を見つけてなでたり、声をかけたりして「あなたのことを忘れていないよ」、「大好きだよ」という気持ちを伝えてあげましょう。そうするだけでも、ねこの不満や不安を和らげることができます。
ストレスで赤ちゃん返りをしている場合は、原因を取り除くことで改善することがあります。
例えば、新しく迎えたねこと気が合わずストレスを感じているのであれば、生活スペースを分けて1匹でくつろげる場所を作ってあげると、赤ちゃん返りが収まるかもしれません。
ねこは五感が敏感で、環境の変化に弱い動物です。人が気づかないような小さな変化でもストレスを感じていることがありますので、ねこの様子をよく観察して、ストレスの要因を取り除いてあげるようにしましょう。
先ほど触れたとおり、体の不調や老化により赤ちゃん返りをしていることもあります。赤ちゃん返りと平行して元気や食欲の減退や嘔吐、下痢といった気になる症状があったら、獣医師に相談しましょう。異変が始まった時期や頻度をメモしておくと診察がスムーズです。動物病院で治療を受け、病気やケガの苦痛を取り除くことで、赤ちゃん返りの改善が見込めます。
老化による不安や認知症が原因になっている場合は、決定的な治療法がないかもしれませんが、ねこが少しでも安心して過ごせるよう、獣医師からアドバイスをもらうことはできます。
ねこの様子をこまめに観察し、少しでも不安な点があれば獣医師に相談するようにしましょう。
ねこの赤ちゃん返りについて解説しました。ねこはもともと赤ちゃんのように小さくて柔らかく、かわいい動物です。甘えてくれるのも嬉しくて、ついつい甘やかしてしまうかもしれません。
しかし、ねこの赤ちゃん返りには、ケガや病気のような体の不調やストレス、老化による認知症など、さまざまな問題が隠れている場合があります。
いうなれば、赤ちゃん返りはねこからの「もっと自分を見てほしい」というSOSのサインなのです。ねこの気持ちをしっかり受け止め、健康に、また快適に過ごせるよう気を配ってあげましょう。