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ねこの病気
ねこの出血!吐血や鼻血、どこが悪いの?猫の体内出血の原因となる病気を解説

ねこの出血!吐血や鼻血、どこが悪いの?猫の体内出血の原因となる病気を解説

ねこが血を吐いた、鼻血を出した…飼い主さんからすると原因が分からず、パニックになってしまうかもしれません。しかし、体内からの出血は、ねこからの「SOS」です。しっかり受け止めて、適切な対処をしてあげなくてはなりません。

今回の記事では、ねこの体内からの出血の種類と、そこから考えられる病気について解説します。

もくじ

1.口からの出血
∟1-1.消化器からの出血の原因
∟1-2.呼吸器からの出血の原因
∟1-3.口腔内からの出血の原因
2.鼻血
3.陰部出血
まとめ

1.口からの出血

ねこが口から血を出す場合、出血の原因として考えられる部位は大きく分けて3つあります。ねこが血を吐く時の前動作や吐いた血の状態を観察することで、どこから出血しているかを見極めることができます。

・消化器系からの出血

食道、胃、小腸といった消化器から出血しているケースです。正確には「吐血」は、この消化器からの出血により血を吐くことを指します。食べたものを吐く時と同じように、お腹をグッとへこませる動作が見られるのが特徴です。吐いた血は消化液の影響により、赤茶色をしていることがあります。同時に嘔吐や下痢、食欲不振などの症状が見られることもあります。

・呼吸器系からの出血

気管、気管支、肺といった消化器から出血しているケースで、こちらは「喀血」と呼びます。咳と一緒に吐き出すことが多く、吐き出した血は薄いピンク色、もしくは褐色や黒の塊状のものが多いです。呼吸器系の病気になっている場合は、呼吸が速くなる、口を開けて苦しそうにするなど、息の仕方にも異常が現れることが多いです。

・口腔内からの出血

口の中のケガや病気により出血しているケースです。咳や吐く動作は見られず、つばをペッと吐くように血を吐いたり、口のはしから血が垂れたりします。多くの場合鮮血で、量も多くありません。

それでは、この3つのケースにおいて、原因となる体の不調や病気を見ていきましょう。


1-1.消化器からの出血の原因

ねこが吐血する場合は、消化器疾患が疑われます。特に多く見られる胃腸炎、胃潰瘍、肺水腫について解説します。

【1】胃腸炎、胃潰瘍

胃から腸にかけての粘膜が炎症を起こす病気です。粘膜が傷ついていることから、吐いた物の中に血が混じることがあります。原因はさまざまで、細菌やウイルス、寄生虫の感染や誤食、ストレスなどが挙げられます。

胃腸炎には慢性と急性があり、急性の場合は症状が重く、死に至ることがあるため注意が必要です。

ねこの場合はごくまれですが、腸炎がひどくなると胃の表面がはがれ、胃潰瘍になることもあります。暗褐色(コーヒー色)の血を吐くほか、嘔吐や血便、腹痛が見られます。

【2】腎不全

ねこに良く見られる腎不全も吐血の原因です。腎機能が低下すると嘔吐が増えるため、消化器に炎症が起こり、吐血することがあります。

また、腎不全の末期症状である尿毒症では消化器障害が起こり、胃潰瘍による吐血が見られることもあります。


1-2.呼吸器からの出血の原因

ねこの呼吸器からの出血(喀血)は危険度が高いため、すぐに病院へ連れて行かなくてはなりません。特に注意したい肺癌、肺水腫について解説します。

【1】肺癌

肺癌になると、血の混じった痰を吐くことがあります。他の症状としては、呼吸が早くなる、咳が出る、食欲や体重の減少などが挙げられます。それほど多い症例ではなく、初期は目立った症状もないので、発見が遅れてしまう危険性の大きい病気です。

【2】肺水腫

肺水腫とは、肺を取り巻く毛細血管から水分がもれ出し、肺胞内に溜まる病気です。呼吸がうまくできなくなるため、呼吸が早く浅くなる、たんを伴う湿った咳を出すといった症状を見せることがあります。また、咳と共に血液の混じった液体を吐き出すこともあります。症状が重いと呼吸困難を起こし、死に至ることもあるため、早期発見、早期治療が重要です。


1-3.口腔内からの出血の原因

口腔内からの出血の原因となる病気としては、歯周病や口内炎、口腔内腫瘍などが挙げられます。

大人しいねこであれば口の中を見ることができますので、異常があるかどうか確認して見ると良いでしょう。

病気以外ではおもちゃや動物の骨など硬いものを噛み、口の中が傷ついてしまっていることが考えられます。また、子ねこの乳歯が抜ける際、出血することがありますが、すぐ止まるようであれば心配はいりません。


 

2.鼻血

ねこの鼻血の原因はほぼ病気です。

ねこの鼻は人間のものとは構造が異なるため、軽くぶつけたくらいでは鼻血は出ません。交通事故や高い場所からの落下といった大きなダメージを受けた時に鼻血が出ることはありますが、その場合はケガをしているのですぐに分かるはずです。

ケガがないのに鼻血が出ている場合は、病気を疑いましょう。鼻血の原因となる主な病気は以下の通りです。


【1】鼻炎・副鼻腔炎

鼻炎とは、鼻の中が炎症を起こしている状態を指します。炎症がさらに進んで副鼻腔に達すると副鼻腔炎になります。

主な症状は鼻水やくしゃみですが、重症になると鼻の中の粘膜が傷ついて鼻血が見られることもあります。純粋な鼻血というよりは、血が混じった鼻水が出ることが多いです。

ねこの鼻炎の原因として多いのが「猫風邪」です。猫風邪は猫ウイルス性鼻気管炎や猫カリシウイルス感染症の総称で、鼻水やくしゃみのほか、発熱、食欲不振、眼の炎症といった症状が見られるのが特徴です。

※副鼻腔:鼻の穴の奥にある骨で囲まれた空洞


【2】鼻腔内腫瘍

鼻腔内腫瘍は鼻の中にできる腫瘍です。ねこの鼻腔内腫瘍はほとんどが悪性で、リンパ腫が最も多く、他にも腺癌、扁平上皮癌、遷移肉腫などがあります。

初期症状として鼻づまりや鼻水が見られ、さらに悪化すると鼻血が出ます。腫瘍ができた側の鼻の穴から鼻血が出ますが、さらに進行するともう一方の鼻腔内まで浸潤し、両方の鼻の穴から出血します。

鼻炎と症状が似ていること、初期の段階では鼻の表面に変化が見られないことから、早期発見が難しい病気です。

浸潤:がんが進行し、原発部位の周囲にがん細胞が広がることを指す。


【3】歯周病

歯周病も鼻血の原因のひとつです。歯周病が進行すると歯の根元や周囲に炎症が起き、ついには顎の骨が溶けてしまいます。上あごが溶けると目の下に膿が溜まり、くしゃみや鼻水、鼻血を引き起こします。


【4】血液凝固異常

病気や遺伝子的要因により、血液を固める成分である血小板が少ない、もしくは機能不全を起こしている状態です。原因となる病気としては、血友病や骨髄疾患、感染症などのほか、殺鼠剤を誤飲したことによる中毒などが挙げられます。

血液凝固異常になると出血しやすくなり、鼻血が出ることがあります。


【5】高血圧

血圧が高くなると、血管が痛んでもろくなります。血圧が上がることにより鼻の中の細い血管に負担がかかると、切れて鼻血の原因になります。

ねこの高血圧は、腎不全や甲状腺機能更新症が原因となっている場合が多いです。定期的に検診を受けてこれらの病気を予防することで、高血圧になるリスクを減らすことができます。

3.陰部出血

ねこには生理がありません。

人間の生理は受精卵が着床しなかった際、子宮内の内膜がはがれおちることで生じます。しかし、ねこは交尾の刺激で排卵し、ほぼ100%の確率で受精、妊娠するため、生理はありません。メスねこの陰部出血はほぼ子宮の病気が原因です。避妊手術を行い、子宮を摘出することで子宮の病気は100%予防できますので、繁殖の計画がないのであれば、避妊手術を検討しましょう。

陰部出血の原因となる子宮の病気としては、以下の3つが挙げられます。


【1】子宮内膜炎

細菌感染により、子宮の内部を覆っている子宮内膜に炎症が発生する病気です。陰部からのおりものや不正出血が見られるほか、微熱や下腹部の傷みが症状として現れます。子宮内膜炎を放置していると子宮内部に膿が溜まり、子宮蓄膿症になります。


【2】子宮蓄膿症

子宮内膜炎が悪化し、子宮に膿が溜まってしまった状態です。陰部から血膿が出るほか、食欲不振や元気喪失、嘔吐、下痢、お腹の張り、水を良く飲むといった症状が出ることがあります。

放っておくと死に至ることもある重大な病気で、処置としては外科手術による子宮摘出が必要になります。


【3】子宮がん

ねこの子宮がんは確率的には多くありませんが、避妊手術をしていないメスねこであればかかる可能性は十分にあります。

子宮がんになると、外陰部からおりものが見られるようになり、血や膿が混じることもあります。他に見られる症状は、嘔吐や下痢、便秘、食欲不振、お腹のふくらみ、しこりなどです。

ねこの子宮がんの中で最も多い子宮腺がんは、他の器官に転移することも多く、発見した時点ですでに転移している恐れがあります。治療法としては、外科手術による子宮摘出が一般的です。

まとめ

ねこの出血について解説しました。

ねこが口や鼻から血を出すと驚いてしまいますが、病気を見つけ出す重要な手掛かりになります。どのような血がどのように出ているか、他に症状は見られないかを冷静にチェックして、必要があればすぐに動物病院へ連れていきましょう。


   
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