家に帰ってきた時、愛猫がしっぽをピーンと立ててスリスリしてくることがあります。
「おかえり、会いたかったよ」と言ってくれているかのようで一日の疲れも吹き飛びますね。
しかし、このねこの「スリスリ」には、挨拶や愛情表現以外にもいろいろな理由があるのです。
ねこのスリスリの理由を知り、隠されたメッセージを読み解いていきましょう。
ねこが飼い主さんにスリスリしてくる理由として主なものは以下の4つです。
それぞれ詳しく紹介します。
ねこの体の各所には、「臭腺」と呼ばれる化学物質(フェロモン)を出す分泌腺があります。
臭腺はあご、頬、唇の両側、乳腺、尻尾のつけね、肛門などにあり、そこから出るフェロモンをこすりつけることで、テリトリーや所有物を示していると考えられています。
帰ってきた飼い主さんにスリスリするのは、外から持ち込まれた謎のにおいが不安なため、自分のにおいをつけて安心しているのです。
来客や新しく買った家具や家電などに、スリスリするのも同じ理由です。
ねこのスリスリには仲間へのあいさつの意味合いもあります。
相手にスリスリすることで自分のにおいをつけつつ、相手のにおいも確認します。
スリスリの時間が長ければ長いほど、友好的な関係にあると考えられています。
スリスリの対象は飼い主や同居ねこだけではなく、犬などほかの動物にもするそうです。
飼い主に対する甘えやおねだりの気持ちを示すためにスリスリをすることもあります。
前にスリスリした時にかわいがってもらったり、ご飯をもらったりした経験があると、「スリスリする=良いことをしてもらえる」と学習し、また同じ行動を繰り返すようになるのです。
ねこはマイペースなようでいて、意外と人の行動を見ています。
そして自分の持っているコミュニケーションの手段を発展させて、人に気持ちを伝えることができるのです。
先ほどご紹介した臭腺の出る場所は、ねこにとっては敏感でかゆくなりやすい場所です。
その部分を人や物にこすりつけて気持ち良くなりたいのでスリスリするという一面もあります。
むしろ、スリスリさせてにおいつけをする動機を高めるために、臭腺はかゆくなりやすくなっているともいえます。
スリスリと一口にいっても、こすりつけてくる箇所やスリスリと一緒に取る行動など、シチュエーションによってスリスリの意味合いは違ってきます。
スリスリのシチュエーションごとのねこの心理をご紹介します。
ねこの顔周りにある臭腺から分泌されるフェロモンは「フェイシャルフェロモン」と呼ばれています。
フェイシャルフェロモンはねこの気持ちを落ち着かせ、安心させる効果があるといわれています。
ねこが顔をこすりつけてくるときは、大好きな飼い主に自分のにおいをつけて安心したいという心理が隠れているのです。
しかし、若いねこや気持ちが高ぶっているねこは、スリスリが激しくなり過ぎて「頭突き」になってしまうことがあります。
眼鏡や携帯を頭突きによって壊されてしまった人もいるようで、ちょっと困ってしまいますね。
すれ違いざましっぽでタッチしてくるねこもいます。
これもしっぽにある臭腺を使ってマーキングをしていると考えられます。
ベタベタスリスリするのが苦手な、ちょっぴりツンデレのねこがすることが多いようです。
優しく声をかけたり、触れたりして安心させてあげると良いでしょう。
ねこが物に対してスリスリする時は、マーキングをしていると考えられます。
先ほどご紹介した通り、新しい物を買ってくると、それに対して盛んにスリスリしてにおいをつけます。
そうすることで自分のテリトリーを主張するとともに、周りを自分のにおいでいっぱいにして安心していると考えられます。
また、飼い主が持っている本や携帯などにスリスリする時は、「そんなもの見ないで、私を見て」というアピールかもしれません。
壁や床にスリスリする時は、単純に「体がかゆい」ことが多いようです。
他にも体の抜け毛を落としてきれいにする、興奮しているなどの理由が考えられます。
また、メスねこで急にスリスリが増えた場合は、発情期を迎えている可能性があります。
スリスリした後ペロッとなめてくるねこもいます。
これは仲間へのグルーミングと同じで、親愛を示していると考えられます。
やわらかい体でのスリスリと、ザラザラした舌でのペロペロ、そんな合わせ技を受けるともうたまりませんね。
スリスリしたあとかんでくることもあります。
何が気に入らないの?とびっくりするかもしれません。
表情が明るく、しっぽをピンと立てたり、ゴロゴロ喉を鳴らしたりといった愛情表現が見られる場合は、遊びたい、甘えたい気分になっていると考えて良いでしょう。
明らかに不快そうにしている場合は、痛いところが触れた、飼い主の反応が気に入らない(しつこくなでるなど)可能性があります。
ねこの反応を良く見るようにしましょう。
同じ場所ばかり、特に上記でご紹介した臭腺の出るところ以外の場所を何度もスリスリしている場合は注意が必要です。
皮膚病やケガなどでかゆみや痛みを感じているのかもしれません。
スリスリの頻度やこすりつける箇所がいつもと違うと感じたら、ねこの体をチェックして、異常があれば病院に連れて行くなど対処をしましょう。
全てのねこがスリスリをするわけではなく、良くするねことしないねこがいます。
スリスリを良くするねこの特徴としては以下のようなものがあります。
どちらかというと老猫より好奇心旺盛で活発な若いねこの方が、またメスよりもテリトリーを守る意識が強いオスの方がスリスリをする傾向にあります。
甘えん坊のねこやアピール意識の強いねこは良くスリスリをしてきます。
それに対し、ツンデレ気味のねこはあまりスリスリをしてきません。
そんなねこがたまにスリスリをしてくるととても嬉しくなってしまいますね。
多頭飼いだとほかのねこのにおいが多いため、スリスリして自分のにおいをつけようとする行動が増えます。
また引っ越しなどで生活環境が変わった場合も、一時的にスリスリの回数が増えます。
いくらにおいをつけるためとはいっても、ねこは嫌いな人、苦手な人には近づきません。
スリスリを良くされるのは、ねこに好かれている証でもあります。
大きな声を出す人やねこが嫌がることをする人はもちろんのこと、ねこがかわいいからといってしつこく構う人もねこは苦手とします。
ねこにスリスリされたいのであれば、ねこの気持ちを尊重し、必要以上に構い過ぎないことです。
するといつの間にかそっとねこが近づいてきて、スリスリしてくれるはずです。
ねこにスリスリされたら、そっとなでたり声をかけたりして構ってあげましょう。
しかし、しつこくし過ぎると「甘えモード終了」になり、急に怒り出したり逃げたりしてしまうことがあります。
また、スリスリしてきて可愛いからといっておやつをあげていると、「スリスリ=おやつ」と学習し、しつこくスリスリしてくるようになってしまうので、ほどほどにしておきましょう。
ねこのスリスリは、「あやしいにおい!心配だから自分のにおいをつけよう」というねこの本能から来る行動です。
しかし、もちろんそれだけではなく、飼い主へのあいさつや「会いたかった!」という愛情表現も含まれています。
柔らかく温かい体でスリスリされると、こちらの心もフワフワ、ポカポカしてきますね。
そんな時はねこに「私も会いたかった!大好きだよ!」という気持ちを込めて、優しくなでてあげまししょう。