爪とぎやねこ用おもちゃに付属している謎の粉末を見たことはありますか?実は、あれが「またたび」なのです。
飼い主さんの中には「爪とぎに振りかけて使っているよ」という人もいらっしゃるでしょう。
今回は、知っているようで知らないまたたびの使い方や注意点を紹介します。
またたびの効果や使い方を説明する前に、まずは「またたび」という植物について簡単にですが説明しておきたいと思います。
またたびは、日本全土の山間部で自生しているマタタビ科マタタビ属のつる性落葉木の植物です。日本のほかには、中国と朝鮮半島の山間部でのみ自生しています。
またたびは、6〜7月に白い花を咲かせ、秋口に実ができます。
その中でも、またたびに使用される実は「虫えい果」(ちゅうえいか)と呼ばれている特別なものです。
虫えい果とは、花が咲く前に「マタタビミタマバエ」や「マタタビアブラムシ」が卵を産みつけた実で、でこぼこした虫こぶ状になっている実です。虫えい果は、正常な実と比べて多幸感を引き起こす成分が多いとされています。
キャットニップとまたたびは同じマタタビ科マタタビ属に属していますが、異なる植物です。
キャットニップの葉の形状や香りがミントに似ていることもあり、欧米では料理のスパイスやサラダなどに使われている人気のハーブだそうです。
日本では「イヌハッカ」や「西洋またたび」とも呼ばれ、ねこ用のおもちゃに使われることも多いです。
キャットニップには「ネペタラクトン」と呼ばれる成分が含まれており、ねこに与えるとまたたびと同様の効果があります。ただし、またたびよりも効果が弱いため、反応しないねこも少なからずいるようです。
ねこはまたたびに含まれている以下の成分に反応していると考えられています。
マタタビラクトンとアクチニジンは普通の実よりも虫えい果に多く含まれています。
また、2021年に発表された岩手大学農学部の研究で「ネペタラクトール」という物質があることが判明しました。しかも、これまでねこが強く反応していると考えられていたマタタビラクトンよりも強い反応を示すことがわかりました。
またたびを与えたときの反応はねこによって異なります。一般的には陶酔状態になりますが、まったく反応しないねこもいます。
それぞれの反応について詳しく見ていきましょう。
ねこは「またたびに酔う」と言われているように、ねこにまたたびを与えるとお酒に酔ったような行動をします。
ねこがまたたびに反応している姿をはじめて見ると驚いてしまう飼い主さんもいるかもしれませんが、決して中毒を起こしているわけではありませんので安心してくださいね。
また、またたびの作用時間はねこによって異なりますが、15〜30分程度とされています。効果は一時的で依存性はありません。
またたびに対する反応はねこによってさまざまで、ご機嫌になるねこもいれば、興奮しすぎるねこもいますし、まったく反応をしないねこもいます。
ねこは、またたびの成分を鼻と喉の奥にあるヤコブソン器官と呼ばれているフェロモンの粒子を感じ取る器官で感知して反応していると考えられています。感受性の強さや反応はねこによって異なります。
一般的に、オス猫よりもメス猫のほうがまたたびへの反応が弱いとされています。また、去勢していないオス猫よりも去勢しているオス猫のほうが反応が弱いとも言われています。
逆に興奮しすぎて、凶暴化したり、呼吸不全を起こしたりするねこもいます。
そのようなねこには、与え方に注意が必要です。場合によっては与えないほうが良いでしょう。
またたびがどんな植物で、ねこがどんなふうに反応するのかご紹介してきました。
では、どんなときに使うのが良いのでしょうか?またたびを使うおすすめのシーンをいくつか紹介します。
食欲が落ちているときにキャットフードにまたたびを振りかけることで食欲増進が期待できます。
また、飲水量の少ないねこには、水に混ぜるのもおすすめです。
ただし、元気がない、嘔吐や下痢をしているといった場合は病気の可能性がありますので動物病院を受診してください。
ねこにとって嫌な出来事のあとにまたたびを与えると、気持ちが落ち着く、嫌な気持ちが薄れるといった効果が期待できるようです。
たとえば、
などのお手入れのあとです。お手入れが苦手なねこが多いですからまたたびを与えるタイミングとしては効果的です。
また、動物病院を受診し帰宅したときに頑張ったご褒美として与えるのもおすすめです。上手に使えば、病院嫌いが少しは薄れるかもしれませんね。
爪を研いでほしくない場所で爪とぎをされて困っている、という場合はまたたびの出番です。
大抵の爪とぎにはまたたびの粉末が付属していますので、少量を爪とぎの上に振りかけます。最初は爪とぎに近づいて匂いを嗅いだり、舐めたりして陶酔状態になると思いますが、しばらくすると爪とぎだと認識して爪を研ぐようになるでしょう。
新しい爪とぎに気持ちを向けたいときにもおすすめです。
またたびにはリラックス効果があり、ストレス解消にも役立つといわれています。
また、またたびを与えることで活発に動き回るようになるため、運動不足の解消にも効果的です。
またたびは、正しく使用すれば安全性が高いと言えますが、与え方には注意が必要です。
またたびは、脳の中枢神経に作用しますから、感覚機能や脳神経系の発達が未熟な低月齢の子猫にあたえてはいけません。
ねこにまたたびを与えるのは、早くても生後半年以降(猫種によっては1歳以降)にしましょう。
そもそも、未発達の子猫にまたたびをあたえても反応しないのが一般的です。まれに、反応を示すねこもいますが、パニックを起こす可能性がありますのでおすすめしません。
子猫にまたたびを与えるのは、体が十分に発達してからにしましょう。
またたびは、大量に与えたりしなければ大きな危険はないと考えられますが、以下のようなねこには与えないほうが良いでしょう。
またたびは、直接心臓に作用するようなことはないとされていますが、興奮状態になることで心臓に負担をかける可能性があります。
老猫や心臓疾患のあるねこは興奮しすぎると危険な場合があるため使用を控えるのが無難です。使う場合は獣医師に相談しましょう。
てんかんについては、キャットニップでラットを用いた実験の結果てんかん発作を起こしやすくなるという報告があるようです。そのため、てんかん発作を起こすねこには、キャットニップの使用に関して注意喚起がなされています。
またたびとキャットニップでは、ねこに影響を及ぼす成分が異なりますが、同様の効果があるため、またたびの使用も控えるように言われています。
また、上にも書きましたが、興奮しすぎるねこも場合によっては使用を控えたほうが良いでしょう。
ねこに与えてもよいまたたびの量や上限、頻度はよくわかっていません。
一般的に与える量は、舐める、食べるといった場合は耳かき1杯程度にとどめるのが良いとされています。頻度は多くても週に1〜2回程度と言う意見が多いようです。
またたびは中毒性や常習性はないと言われていますが、まだまだわかっていないことも多いのが現実です。脳の中枢神経に作用するわけですし、今後どのような報告があるかもわかりません。
またたびは、あくまでも嗜好品ですから「たまに、少量を与える」程度にするのが無難です。
またたびは、ねこにとって必ずしも必要なものではありません。
しかし、毎日の生活の中に取り入れることでさまざまな良い効果を期待できます。
与え方に注意しつつ、上手に付き合っていくのが良いでしょう。