ねこがスリスリ、ゴロゴロ甘えてくれるのはとても嬉しいものです。
しかし、お風呂にもトイレにもついてきたり、飼い主がいないと鳴き続けたり、物を壊してしまったり…というような困った行動をしているようなら、それは「分離不安症」かもしれません。
今回の記事では、ねこの分離不安症の症状や原因、対処法についてご紹介します。
分離不安症とは、仲間(飼いねこは飼い主)と引き離されることで極度の不安を感じる状態を指します。
通常でも、飼いねこは飼い主を親のように思っていますので、いなくなると寂しさは感じます。しかし、健康なねこであれば、飼い主がいなければいないでマイペースに過ごせます。
一方、分離不安症のねこは飼い主と離れると強い不安と苦痛を感じます。それを和らげるために、問題行動を起こしてしまうため、飼い主を悩ませる原因になります。
分離不安症の症状としては、以下のようなものが見られます。
症状がひどくなると、抑うつや食欲不振、下痢、嘔吐、膀胱炎など、心身にまで症状が現れることもあります。
分離不安症になりやすいねこの特徴としては、以下のようなものが挙げられます。
【1】性格や品種
もともと甘えん坊のねこは分離不安症になりやすい傾向があります。また、バーミーズやシャムネコなど、オリエンタル種のねこは分離不安症と診断させるという報告もあるようです。
【2】年齢
多くの分離不安症は1歳くらいから発現し、5歳以下のねこに起こる傾向にあります。また、高齢のねこが老化による心身の不調により不安を感じ、分離不安症になることもあります。
【3】生育環境
赤ちゃんの時から人間に育てられている、一人暮らしの飼い主とべったり一緒に過ごしている、逆に常に周りに人や動物がいて孤独に慣れていないといった場合、分離不安症になりやすくなるようです。
ねこは単独行動をする動物であり、ひとりで過ごすのは得意です。そんなねこがなぜ分離不安症になるのでしょうか。考えられる要因をいくつかご紹介します。
ねこは変化を好まない動物です。引っ越しや飼い主の結婚、出産、新しいねこの迎え入れなど、生活に変化が生じるとねこは不安を感じ、飼い主のそばにいたがるようになります。
飼い主がいない時に雷や工事の騒音など怖いことがあった、同居しているほかのねこにいじめられているなど、留守番中にいやな経験をすると飼い主と離れるのを怖がるようになり、分離不安症になることがあるようです。
高齢や病気で心身が弱り、不安を覚えると飼い主のそばにいたがるようになります。特に高齢のねこは目や耳の感覚が鈍くなったり、体が傷んだりすることで心細くなるだけではなく、脳の老化による記憶障害や認知症で不安が強くなることもあるため注意が必要です。
飼い主の対応も分離不安の原因になります。例えば、ねこをかわいがり過ぎ、いつも一緒にいると、いざ離れた時にねこは強い不安を覚えるようになります。また、逆に飼い主がねこに対して無関心だったり、ねこが不快な思いをしているのにケアしなかったりした場合にも、分離不安症になることがあるようです。
ねこが分離不安症になると、おそそうや物を壊すなどの問題行動を起こすだけではなく、ねこの心身にも悪い影響を及ぼしてしまいます。ねこの分離不安症を和らげる、もしくは防止するためにはどのような点に気をつければ良いのでしょうか。主な対策を以下にご紹介します。
生活の変化によって不安を感じている場合は、なるべくその変化によるストレスを減らすようにしましょう。
などといった工夫をしてあげると良いでしょう。
分離不安症は留守番時の嫌な経験が引き起こしているケースも少なくありません。留守番へのネガティブなイメージをなくすためには、以下のような対策が有効です。
【1】外出時のルーチンを崩す
外出する際にカバンや鍵を用意する、ねこに「行ってきます」と声をかけるといったお決まりの行動があると、ねこは飼い主がいなくなることを察して不安になります。
出かけなくても鍵やカバンを持ってみせたり、ねこが気づいていないうちにそっと外出したりするなど、外出時のお決まりを崩すことで、飼い主がいなくなることへの不安を和らげることができます。
【2】留守番時の不安要素をなくす
ねこが楽しく穏やかに留守番の時間を過ごせるようにしてあげましょう。
ケージやベッドなど、安心できる隠れ場所を作ってあげる、ねこが好む場合はテレビやラジオをつけっぱなしにしておく、おもちゃやキャットタワーなど、ねこが遊べる環境を用意してあげるといった工夫が必要です。
ただし、ねこが物を落としたり、誤飲したりといった事故が起きないよう十分に気をつけましょう。
【3】上手に留守番ができたら褒める
留守番ができたらおやつやごはんをあげて褒めてあげましょう。褒めることで、ねこは「留守番をすると良いことがある」と学習し、留守番を楽しむようになります。
飼い主の構い過ぎや無関心により分離不安症になっているケースもありますので、ねことの関わり方を見直すことも必要です。
家にいる時もねことずっと一緒に過ごすのではなく、別々の部屋で過ごす時間を作りましょう。飼い主が長い時間を過ごすリビングや自室以外の場所に、爪とぎスポットや休憩場所など、ねこがリラックスできるコーナーを作るのも効果的です。
また、構わなさ過ぎも分離不安の原因になります。ねこにブラッシングをしたり、手からおやつをあげたりと、お世話を兼ねたスキンシップをしてあげましょう。ねこの不安を和らげるだけではなく、体調の変化もとらえやすくなります。
上記のような対策をしても改善されない、問題行動や心身の症状が大きく出ているという場合は、動物病院で治療を受けるのも一つの手段です。
病気や認知症が原因であればまずそちらに対処することで分離不安症が改善される可能性があります。また、分離不安症自体も獣医師の指導で治療を受けることが可能です。
分離不安症に対する治療や療法には、「行動療法」と「薬物療法」の2種類があります。
【1】行動療法
獣医師の指導を受けながら、お留守番トレーニングなどを行い、分離不安症を少しずつ和らげていく療法です。
【2】薬物療法
分離不安症の症状が強く、抑うつ状態になっているねこに対して、抗うつ剤やサプリメントを処方します。
いずれも効果が現れるまで数ヶ月単位の時間がかかります。不安点や疑問点は獣医師に相談しながら、根気よく治療を続けていきましょう。
ねこの分離不安症についてご紹介しました。
ねことの関わり方や飼育環境に気をつけることで分離不安症を軽減、防止することができます。
そうすることで、ねこは飼い主との時間も、ひとりの時間もご機嫌で過ごせるようになるでしょう。