うんちやおしっこなど排泄物は、人間からすると「汚い」と感じるものかもしれません。
しかし、ねこにとっては、たくさんのメッセージを伝えることができる、とても大切なものなのです。私たち人間も、ねこのうんちやおしっこの仕方を通じて、ねこの気持ちを読み取ることができます
今回の記事では、ねこのうんちやおしっこにこめられたメッセージについてお話します。
ねこのうんちのにおいは強烈です。「良くこんな小さな体から、こんな臭いうんちが出るな」と感心するほどです。
しかし、ねこのうんちの臭いや、うんちの仕方にはねこからのさまざまなメッセージがこめられています。詳しくお話しましょう。
ねこの習性の一つに、「自分のうんちに砂をかけて隠す」というものがあります。
悪いことを隠したり、拾ったものを自分のものにしてしまったりすることを「ネコババ」といいますが、この「ばば」とはうんちのこと。
ねこがうんちを隠す様子からきているといわれています。
しかし、中にはうんちをしてもほったらかしのねこもいます。このねこのうんちを隠す行動・隠さない行動にはどのようなメッセージがこめられているのでしょうか。
■1-1-1.うんちを隠す理由
ねこがうんちを隠す理由には諸説あります。その中でも有力なものをいくつかご紹介しましょう。
【1】自分の存在を知らせないようにするため
ねこのうんちの臭いはとても強いため、うんちをしたまま放っておくと「ここにねこがいます」というとても目立つ看板になってしまいます。
外敵や獲物に自分の存在を知られると都合が悪いため、うんちに砂をかけて臭いを消していると考えられています。
【2】病気が広がるのを防ぐため
うんちには病原菌やウイルス、寄生虫など病気の原因になるものが含まれています。
そのうんちを放置していると、病気が広がってしまいます。それを防ぐために、うんちを隠しているのだという説があります。
【3】強いねこに遠慮しているため
ねこの社会においては、強いねこはうんちを隠さず、弱いねこは隠す傾向にあることが知られています。
このことから、うんちを隠すのは強いねこに遠慮しているためとも考えられています。
先ほどご紹介したとおり、ねこのうんちの臭いは自分がここにいることを知らせる看板のようなものです。
他のねこからすると「ここは私のテリトリーだ!」と主張と思われるかもしれません。それを防ぐためにうんちを隠していると考えられています。
■1-1-2.ねこがうんちを隠さない理由
ねこがうんちを隠すのは、ごく一般的な習性です。では、逆にうんちを隠さないのにはどのような理由があるのでしょうか。考えられる理由を以下にご紹介します。
【1】自分が偉いと思っているから
先ほどご紹介したとおり、弱いねこは強いねこに目をつけられないようにするため、うんちを隠します。しかし、強いねこはうんちを隠しません。それどころか、うんちを堂々と見せて、「自分が一番偉いんだ!」と主張する行動に出ることがあります。
もし、ねこを一匹で飼っていてうんちを隠さない場合、「自分は飼い主よりも偉い」と考えているかもしれません。
【2】砂かけができない、もしくは嫌だから
体調が悪い、体が痛いといった理由で砂をかけられないねこもいます。
また、年を取ると砂をかけるのが面倒になり、放置してしまうこともあるようです。
他にもトイレが汚れているなど嫌なことがあり、早く離れたい、トイレの砂の臭いや感触が気に入らないといったことも考えられます。
岩手大学の研究によると、ねこはうんちの臭いから、そのうんちの主が誰なのかを嗅ぎ分けているようです。
ねこのうんちにはMMB(3−メルカプト−3−メチル−1−ブタノール)という硫黄含有化合物が含まれており、強烈な臭いの元になっています。
ねこはうんちを見つけるとまず臭いを嗅ぎ、MMBの臭いが含まれているかどうかによって、うんちの主がねこかそうではないかを判断します。
さらに、MMBの含有量から性別を、おなじくうんちの臭いのもとになっている短鎖脂肪酸から、誰のうんちかを読み取ることができるそうです。
あのねこのうんちの臭いは、ねこにとっては自分の存在を知らせ、仲間の存在を知る大切なものだったのですね。
ねこのおしっこもうんちに負けないくらい強烈な臭いがします。しかし、この臭いもまたねこにとっては大切なコミュニケーション手段です。
ねこがおしっこにこめたメッセージについてお話しましょう。
ねこはおしっこをした後も、うんちと同じく穴に埋めます。
しかし、しっぽを上げてシュッとおしっこをすることもあります。柱やカーテンなどにおしっこをされ、臭いがついて困ったという経験をした飼い主さんも多いのではないでしょうか。
これは「スプレー」と呼ばれるもので、マーキング(臭いつけ)の手段です。未去勢のオスねこがすることが多いですが、メスねこがすることもあります。
スプレーのおしっこは普段より濃くて臭いがきつく、ねこはこの臭いから性別や年齢、健康状態、発情しているかどうかを読み取ることができます。
ねこはスプレーをすることにより、「ここはオレの縄張りだ!」、「恋人募集中!」など、さまざまなメッセージをほかのねこに伝えているのです。
「おしっこの臭い」はオスねこのモテる条件にもなっています。
ねこのおしっこの強いにおいは、「フェリニン」という物質からきています。フェリニンを分泌するには、高品質のたんぱく質が必要です。
そのため、フェリニンの多い、臭いおしっこをするねこは、それだけたんぱく質をたくさん摂っている、すなわち、「狩りがうまく、栄養状態の良いねこ」ということになります。
メスねこにとっては強くてたくましいオスねこは最高のパートナー。だから、おしっこの臭いオスねこはモテるのです。
ねこは本来きれい好きな動物で、トイレを用意すればちゃんと使ってくれます。
しかし、愛猫がトイレ以外の場所でうんちやおしっこをしてしまう……と悩んでいる方も少なくありません。
また、ねこが何度もスプレーを繰り返して困る、というのも排泄関係の悩みとして良くあることです。
飼い主がねこの排泄行動に悩んでいる時、ねこも何らかの悩みを持っていることがあります。
ねこが不適切な排泄行動をする理由を以下にご紹介します。
トイレ以外の場所でうんちやおしっこをする時は、以下のような原因が考えられます。
【1】トイレに不満がある
ねこがトイレ以外の場所でうんちやおしっこをする場合、トイレに不満があるのかもしれません。
うんちに砂かけをしないのと同じく、トイレが嫌で近づきたくないと考えている可能性があります。
トイレが汚れていないか、ねこの嫌がる場所(寒い、人の行き来が多く落ち着かないなど)にトイレを置いていないか、改めて確認してみましょう。
また、多頭飼育をしている場合、強いねこがトイレをひとりじめしてしまったり、他のねこのにおいを嫌がってトイレを使わなかったりといったトラブルが起こります。
多頭飼育をする時には、ねこの数+1のトイレを準備しましょう。
【2】ストレスが溜まっている
ストレスが原因で、トイレ以外の場所で用を足してしまうねこもいます。
例えば、同居しているねこと仲が悪い、飼い主が構ってくれないといった不満や不安を抱えていったケースがあります。
ストレスの原因が分かっている場合は、できるだけ取り除いてあげると、お粗相が減るかもしれません。
【3】身体的な理由
砂をかけられない理由と同じく、病気やケガ、老化などのためにトイレで用を足せないのかもしれません。
ねこのトイレは砂が飛び散らないようにふちが高くなっていますが、体に不調のあるねこはふちを越えられず、トイレで用を足せないことがあります。
また、いつもいる部屋からトイレが遠いと、トイレまでたどり着けず、違う場所で排泄をしてしまうことも考えられます。
ねこが病気やケガをしたり、シニア期を迎えたりした場合は、トイレの形や場所を見直し、ねこが快適に使えるようにしましょう。
ねこ、特に去勢手術をしていないオスねこにとって、スプレーは大切な自己主張であり、ごく自然な行動です。しかし、去勢手術をしているのにスプレーをする、一日に何度もスプレーを繰り返すという場合は、何らかのストレスが隠れている場合があります。良くあるケースと対処法をいくつかご紹介しましょう。
【1】他のねこにストレスを感じている
同居している他のねこや、外から来る野良ねこや放し飼いのねこに対し、自分のテリトリーを示すためにスプレーをすることがあります。
同居しているねこに対するスプレーが見られる場合は、落ち着くまで生活空間を分けると良いでしょう。
また、飼い主を取られる不安からスプレーをしていることもありますので、しっかりかわいがってあげることも重要です。
また、外から来るねこに対してスプレーをする場合は、窓に目隠しをつけて外の様子が見えないようにすると落ち着く場合があります。
【2】部屋にストレスを感じている
引越しをして新しい部屋に移ってから急にスプレーをするようになった、という場合は、部屋にストレスを感じている可能性があります。
ねこからすると、住み慣れたテリトリーから離れ、自分の臭いのない場所に来たのですから不安でいっぱいです。その不安を和らげるために、部屋に自分のにおいをつける、つまりスプレー行為をしてしまうのです。
ねこが使い慣れている毛布やベッド、トイレなどを置き、ねこを安心させてあげましょう。
ねこのうんちやおしっこは、ねこ同士、またねこと飼い主の間の大切なコミュニケーション手段になってくれます。
強烈な臭いや、問題のある排泄行動に悩んでしまうこともあるかもしれませんが、そこにはねこからの秘密のメッセージがたくさん隠されています。注意深く観察し、ねこが快適に過ごせるよう気を配ってあげましょう。