ねこは、日がな一日ごろごろしている動物です。そのため、放っておけば運動不足になりがち。
運動不足はねこの健康だけではなく、ストレスの原因にもなります。
心身の健康のためには日々の運動が大切なのです。
とはいえ、ねこを運動させるのは一筋縄ではいきません。
そういうわけで、今回は決して運動好きとは言えないねこを上手に遊ばせるコツを紹介します。
ねこを遊ばせるには本能をうまく利用するのがいちばんです。
そのために、まずねこがどんな生き物なのかをおさらいしておきましょう。
ご存知のとおり、ねこは肉食動物で、もともとはネズミやトカゲといった小動物や昆虫を捕らえて食べていました。
しかし、獲物となる生き物も生きるために必死ですから、いつでも簡単に手に入るとはかぎりません。
そのため、ねこは狩りをするとき以外は、いざというときに備えて無駄にエネルギーを消費しないようにじっとしています。
ようは、ごろごろと寝転がってばかりいるのも本能なのです。
一方、狩りも本能に根ざした行動です。子ねこのうちに親から教わる部分もありますが、獲物となる生き物を見つけると、追い、捕らえ、食べる、という本能を持っています。
つまり、ちょこまかと動く小さなものを見ると、追いかけずにはいられないのがねこなのです。
自分で食べるものを探す野良猫と違って、室内で飼われているねこは狩りをしなくても十分な量の食べものをもらうことができます。
ですから、狩りをする本能は休みっぱなしで、ごろごろする本能だけが発揮されます。
つまり、縄張りの確認のための散歩やマーキングの意味合いも兼ねた爪とぎなどのほかは動かずに、ただひたすらに省エネに励んでいる状態なのです。
どう考えたって運動不足になってしまいますよね。
しかも、ごろごろしてばかりだと狩りをする本能を満たせずストレスが溜まります。
このストレスが溜まると、夜中に家中を走り回ったりするわけです。
いわゆる「夜の大運動会」ですね。
「夜の大運動会」だけならまだしも、狩りをしたいという衝動が身近な生き物に向けられることもあります。
普段はおとなしいねこが、唐突に飼い主さんに噛みついたり引っかいたりといった問題行動を起こすことにもなります。
そういった厄介ごとが起きないように、ねこをほどよく運動させてあげる必要があるのです。
とはいっても、これもまた一筋縄ではいきません。
さて、ねこにはごろごろしたい本能があるため、無駄な運動はしたがりません。
そんなねこに運動させる方法は、もうおわかりですね。
そう。狩りの本能を引き出してあげればよいのです。
と言うより、ねこに運動させるには、狩りの本能を刺激する以外に方法はないのです。
なんのためにねこは狩りをするのか?と言えば、もちろん食べるため。捕らえた獲物を食べるところまでが1セットです。
となれば、ねこと遊ぶタイミングは、ごはんやおやつをあげる前が適切ということになります。
ただし、ねこは瞬発力タイプで、持久力はあまりありません。
ですから、遊ぶ時間は短くてかまいません。
休み休みしながら5分とか10分とかで十分です。
遊んでいるうちに呼吸が荒くなった、ごろんと寝転がったなどしたら休憩してあげましょう。
気をつけないといけないのは、あくまで狩りとして遊んであげる必要があるというところです。
飛んだり走ったりするのが目的ではなくて、狩りの本能を満たすための遊びなのです。
獲物を追い、捕らえ、食べるというのが狩りの本能なわけですから、最後には獲物に見立てたおもちゃを捕まえさせて、食べるところまでワンセットです。
そうしなければ、狩の本能が満たされず、ストレス解消にならないからです。
もっとも、捕らえた獲物(おもちゃですが)を食べさせることはできませんので、代わりにごはんやおやつで締めくくります。
こんなふうに、本能に合わせて遊んであげれば、ねこは満足しますし、運動不足も解消できるというわけです。
野性時代のねこの獲物は小型のネズミやトカゲ、ヘビ、カエル、小鳥、昆虫など。ほかにはウサギやハトといった比較的サイズの大きな生き物も捕食していたと言われています。
そのため、ねこのおもちゃの多くは、ねこが好む獲物をイメージしているのです。
たとえば、小型のぬいぐるみは大のお気に入りであるネズミに相当します。
このタイプのおもちゃで遊ぶときは、爪で引っかけて捕らえ、押さえ込んで噛みつくといった行動が見られます。
鳥の羽根を使ったものやチョウやハチなどの昆虫をモチーフにしたおもちゃも一般的です。
こちらはゆらゆら・ひらひらする動きに惹かれるねこにおすすめです。
また、ボール系のおもちゃは逃げる獲物を追いかけてねこパンチを繰り返したり、噛みついたりして遊びますし、蹴りぐるみは捕らえた獲物を弱らせる行動を引き出します。
ただし、どんなタイプのおもちゃを好むのかはねこ自身の個性にもよります。
そのため、いろいろなおもちゃを試して、愛猫にあったおもちゃを見つけてあげましょう。
もちろん、おもちゃの動かし方も獲物の動きを意識しなくてはなりません。
ただ単に「振ればいいんでしょ」というものではないのです。
一定の速さで動かすのではなく、動いては止まり、止まっては動く、というのを不規則に繰り返します。
頻繁に方向転換をするのもいいでしょう。
獲物の立場で天敵(=ねこ)につかまらない動きを考えて試してみてください。
おもちゃを動かしているときは、ねこが興味を持っているかどうかに着目します。
おもちゃの動きに目を向けているかどうか、見ていなくても耳を向けているなら関心はあるといえるでしょう。
獲物を襲うと決めたねこは低い姿勢を取って飛びかかる準備をします。
これはおもちゃ選びが成功だったということです。
ねこの反応がよくない場合は、そのおもちゃが好きではない、またはおもちゃの振り方がよくないのどちらかです。
したがって、別のおもちゃを試してみる、あるいは動かし方を大きく変えてみるといいかもしれません。
そのあたりを意識しておもちゃを選ぶ、遊び方を変えるなどすると、ねこが遊んでくれなくてさびしい、なんてことも減るはずです。
なお、遊ぶときはできるだけ飼い主が遊ばせていることを意識させないように注意します。
飼い主の手を獲物の一部、つまり襲うべき対象として認識する場合があるからです。
忘れないでほしいのは、狩りは食べるための行動であり、おもちゃは決して安全なものではないということです。
狩りの目的は食べることですから、おもちゃも食べる可能性があります。
丸ごとは無理でも、折れた羽根やちぎれたパーツは十分に飲み込めてしまいます。
ですから、遊ばせる前にぬいぐるみの手足や尻尾、目などのパーツが取れかけていないかどうか確認しておくといいでしょう。
もちろん、遊んでいる最中や遊び終わったときにも再確認をおすすめします。
棒の部分もよくかじられます。木の棒は割れて尖ったかけらになる危険性もあるので要注意。
ひび割れやささくれを見つけたらテープで覆う、ナイフなどで削り落とすなどの対策をしておきます。
おもちゃの「獲物」部分と棒をつなぐヒモやリボンも噛みちぎりやすく、誤食の心配があります。
そのため、いっしょに遊ぶとき以外は片付けておくのが安全でしょう。
とくに、お気に入りのおもちゃは誤食の危険性が高まりますので注意してください。
また、おもちゃのための安全基準は食べものに比べて格段に低く、健康に害をおよぼすかもしれない塗料や染料が使われているものも少なからず存在しています。
海外からの輸送中に虫やカビから守るために有毒な薬剤を使っている場合もあります。
可能であれば、遊ばせる前に丸洗いする、水拭きをすると、多少は不安を減らせます。
ねこを上手に遊ばせるのに必要なのは狩りの本能を刺激すること。
なにを獲物にしてどんなふうに狩りをするのかを知れば、おもちゃも選びやすくなりますし、ねこが興味を示す動かし方もわかるでしょう。
また、遊ぶタイミングをごはんやおやつの前にすると、獲物を捕まえて食べるという実際の狩りのパターンに近づけられます。
こうした工夫をすることで、狩りをしたいという本能をより深いレベルで満たしてあげることができるのです。
上手に遊ばせられればねこのストレスも減らせますし、問題行動も起こさなくなるかもしれません。
もちろん、運動不足解消にもなるのですから、ぜひ挑戦してみてくださいね。