ねこは単独で生きる動物ですが、やはりねこにはねこの社会があり、しっかりしたルールが存在します。
人間から見るとふしぎな行動に見えても、それはねこ社会では常識である場合も多いのです。今回の記事では、そんなねこ社会のルールについてお話します。
まずは、あいさつに関するルールをご紹介します。
ねこのあいさつの方法は、人間とは全く違っています。しかし、無駄なケンカを避けたり、相手の情報を短い時間で得たりと、非常に効率的です。
人の場合、相手の目を見て話すのがマナーですが、ねこは逆です。目を合わせるのは相手に敵意があることを示す行為で、エチケット違反とされています。
そのため、エリア内で知り合い同士のねこが出会った場合、お互いに目を合わせないようにしてゆっくりと通り過ぎます。こうすることでむだなケンカを避けているのです。
ねこにとって、目をじっと見られるのは決まりの悪いもの。愛猫がかわいいからといって、見つめ過ぎないようにしましょう。
あいさつをする場合は、まず鼻と鼻を突き合わせてお互いのにおいをかぎます。その後、口周り、首、わき腹と、においをかぐ範囲を少しずつ広めていきます。その時にしっぽを絡ませ合いながらぐるぐる回ることもあるようです。最後にお尻のにおいをかいであいさつ終了です。
ねこはこうして相手のにおいをかぐことで、そのねこが誰なのか、どういう状態なのか(何を食べたか、健康状態は良いか、発情しているか)といった情報を集めています。ねこにとってお互いのにおいをかぐのは、人間でいえばSNSの相互フォローをするようなものなのかもしれません。
次に、ねこの「なわばり」に関するルールをご紹介します。
ねこのなわばりは「プライベートエリア」と「ハンティングエリア」の2段階に分かれています。
人にとっての「家」に当たるごく狭いエリアで、他のねこの侵入は基本NGです。他のねこが入ってきた場合は、「フーッ!」と怒ったり、追いかけたりして追い払います。
狩りを行う(行動する)なわばりで、広さは半径500m~4㎞程度が一般的です。
ハンティングエリアは他のねこと重なっていることが多く、出会った場合は先ほどご紹介した通り、目を合わさずにゆっくりとすれ違うのがマナーです。
また、ハンティングエリア内での優先順位は時間帯で変わることがあります。
たとえば、AとBのねこがいたとします。すると午前中はAがBに道を譲り、午後は逆にBが遠慮する…ということもあるのです。ねこ社会におけるなわばりのルールは、ゆるいような、それでいて厳密なようなふしぎな決まりのもとに成り立っているのです。
あいさつやなわばりのルールを守り、不要なケンカを避けようとするねこですが、やはりよそ者が来たり、恋の季節でメスねこを取り合ったりしている時にはケンカをすることもあります。
しかし、そのケンカにもしっかりしたルールがあり、必要以上に相手を傷つけることはありません。
ねこの勝ち負けや順位に関するルールを以下に詳しくご紹介しましょう。
ねこのケンカは以下の【1】~【3】の順番で行われます。いずれの段階でもどちらかが逃げた時点で勝敗が決まりますが、決着がつかない場合は【1】→【2】→【3】と次の段階に進みます。
【1】にらみ合う
お互いにらみ合ったり、脅したりして相手を追い払おうとします。
【2】ねこの鳴き合い
近い距離で顔を突き合わせ、体の側面を相手に向けながら鳴き合う、「ねこの鳴き合い」という行動を取ります。
その声は赤ちゃんの泣き声に例えられる独特なもので、鳴きながら相手をにらみつけ、大きく見えるよう背伸びをし、しっぽを激しく左右に振ります。
【3】飛びかかる
鳴き合いで勝負がつかなかった場合、いよいよ実力行使です。相手の首を狙って飛びかかり、爪と牙をむき出しにして激しく戦います。
この段階まで来ると、相手が降参して逃げても追いうちをかけることがあります。しかし、致命傷を与えるまでにはいたらないようです。
【1】、【2】の段階でケンカが終われば、勝ったねこは負けたねこを静かに見送り、傷つけることはありません。このように、ねこのケンカは必要以上に相手を傷つけないよう、厳密な「作法」のもとで行われているのです。
一度ケンカをして優劣が決まると、それ以降は弱い方が道を譲るなどして、無駄ないさかいを避けるようになります。
しかし、この優劣は意外とあいまいです。先ほどご紹介した通り、ハンティングエリア内での優先順位は、時間帯によって変わることがあります。また、エリアの中心近くにいる時は強気なのに、端の方に行くと劣位のねこに脅される場合もあるのです。
牛や馬のような群れで暮らす動物は明確な順位があり、必ずその順位に従って行動します。その点、やはりねこは単独行動をする動物。順位付けも自由気ままなようです。
単独で生きるねこにも、実は「ご近所づきあい」というものがあるようです。しかし、そのつながりは、人間や群れで生きる動物とはまた違う特徴があります。
最後に、同じ地域に住むねこ同士のつながりに関するルールをご紹介します。
いぬやサルといった群れで暮らす動物にはボスがいて、仲間を導き、外敵から守る司令塔のような役割を果たしています。
しかし、ねこは単独行動をする動物であるため、司令塔としての「ボス」はいません。
一般的に人が考えるねこ社会の「ボス」は、そのエリア内で最も大きくて強く、常に優先順位が一番であるねこを指すことが多いようです。
ただし、先ほどご紹介した通り、ねこの順列はあいまいな部分も多いため、「ボス」と呼べるねこがいないエリアも少なくありません。
夜、公園や神社の境内などにねこが集まっていることがあります。これが「ねこ集会」です。
しかし、人間の集会とは違い、積極的にコミュニケーションを取ることはありません。お互い数メートル程度の距離を保ち、毛づくろいをしたり、ぼーっとしたりと自由気ままに過ごしています。
そして数時間後、バラバラにその場を立ち去って集会は終わります。
ねこがこのような集会をする理由としては、以下のような説が上げられています。
このように、ねこが集会をする理由には社会的なものとそうでないものがあります。もしかしたら集会には社会性はないのかもしれません。
しかし、ねこ同士が集まって、お互いの無事を喜びあったり、近況を報告し合ったりしているかもしれないと考えると、なんだか楽しいですね。
ねこ社会のルールをご紹介しました。自由気ままに生きているようなねこですが、実はさまざまなルールを守り、同じ地域に住むねことうまく付き合っています。
ねこにとって大切なのは、自分の命となわばり。それを守るために、相手の命となわばりも尊重し、余計ないさかいを避けているのかもしれません。
自分と相手の権利を守りつつ、必要以上の干渉はしない。ねこ社会のルールをじっくり考えてみると、人間が見習わなくてはならないところがたくさんあるかもしれませんね。