近年、ねこにも食物アレルギーがあることを知っているという飼い主さんが増えているようです。
一方で、ねこの食物アレルギーについての知識が周知されていないと感じることも多くなりました。
そこで今回は、ねこの食物アレルギーの原因や症状といった基礎知識から、検査方法や食事についてまで幅広く紹介していきます。
ねこの食物アレルギーはなぜおこるのか、なにが原因になるのか、発症するとどのような症状があらわれるのかといった基礎知識について解説します。
合わせて、食物アレルギーを発症する年齢や食物アレルギーを持っているねこがどれくらいいるのかも紹介していますので、参考にしてください。
ねこのアレルギーも人間と同じ仕組みでおこると言われています。
アレルギーとは、通常は体に害を及ぼさない特定の物質に対して免疫反応が過剰に引き起こされる病気の総称です。
ねこのアレルギーも食物が原因の場合は「食物アレルギー」、花粉が原因なら「花粉アレルギー」、ノミが原因なら「ノミアレルギー」というように原因となる物質によって細かく分類されています。
人間の食物アレルギーでは卵、乳製品、小麦が7割を占めていますが、ねこの場合は以下のようになります。
ねこのアレルギーの原因はタンパク質だと言われており、上の図からもわかるように、牛肉18%、魚17%、鶏肉5%と上位を占めています。次いで小麦・とうもろこし・乳製品、ラムとなっています。
このほかには、コーングルテン、うさぎ、卵、などもアレルギーの原因になると言われています。
余談ですが、「穀物はアレルギーの原因になるので、穀物入りのキャットフードはおすすめしない」という話を聞いたことのある飼い主さんもいらっしゃるかと思います。実は、穀物アレルギーの割合はそれほど多くはありません。
ねこの食物アレルギーのおもな症状は以下の2つです。
ねこの場合は、皮膚症状がメインで、皮膚が赤くなったり、発疹が見られたりもします。かゆみで酷くなると、掻きむしって皮膚を傷つけることで膿皮症の原因になることもあるため注意が必要です。
皮膚症状は耳や目の上などにあらわれることが多く、左右対称にあらわれるという特徴があります。
また、最近は若いねこの間で下痢や嘔吐、血便などのアレルギー性胃腸炎が疑われる症例が増えているという報告があるようです。
このほかには以下のような症状も見られます。
ねこの食物アレルギーは、生後6ヶ月〜2歳くらいの比較的若いうちに発症することが多いと言われています。
その一方で、長年アレルゲンとなる食材を食べつづけることによって、高齢になってから発症する場合もあるため油断できません。
残念ながら、今のところ食物アレルギーのねこがどれくらいいるかは分かっていません。
ある研究によれば、皮膚病のねこのうち1〜6%が食物アレルギーを持っていたという報告があります。
また、アレルギーの発症には猫種による差は見られないようです。
ねこが食物アレルギーの可能性があると診断された場合は、食物除去試験でアレルギーの原因となる食材の特定をし、排除した食事を与えることになります。
では、具体的にはどのようにおこなうのでしょうか?
食物アレルギーの診断と食物除去試験の方法について紹介します。
アレルギーが疑われる場合は、ほかの病気がないことを確認することからはじめます。
皮膚炎の場合は、ノミ、疥癬、真菌などに感染していないか検査をおこないます。胃腸炎の場合は、寄生虫の可能性やそのほか下痢や嘔吐を引き起こす病気がないかを確認します。
異常がない場合は症状や年齢などを考慮しアレルギーかどうかを診断します。食物アレルギーの場合はアレルギーの原因となる食材を特定するために食物除去試験などをおこないます。
ねこも血液検査でアレルギーがあるか調べることができます。しかし、血液検査は万能ではありません。あくまでも、アレルギー反応をおこす「可能性」のある食材を絞り込むための検査です。
食物アレルギーを引き起こしている原因となる食材を特定するためにおこなわれるのが食物除去試験です。
血液検査や食事履歴からアレルギーの原因と思われる原材料の目星を付けます。そして、その食材を除いた食事を4〜8週間ほど与えてアレルギー反応がないことを確認します。
その後、アレルギーの可能性のある原料をひとつずつ順番に与えてアレルギー反応が出るか確認します。そこで、アレルギー反応があれば、その食材がアレルゲンということになります。
食物除去試験の期間中は、決められた食事以外(おやつなど)の食べ物を与えてはいけません。指示されたご飯以外のものを与えてしまうと、アレルギーの原因となる食材かどうかを正しく判断することができなくなります。
家族が知らずに与えてしまうことのないように周知しておきましょう。
また、床に落としたものを食べたり、目を離した隙に盗み食いをされたりといったこともないように注意してください。
ねこが食物アレルギーと診断された場合は、食事の見直しが必要になるでしょう。
ここでは、どのようなご飯があるのか、どのような点に注意したらよいのかをまとめました。
ねこの食物アレルギーの原因はタンパク質ですから、タンパク源に注意すれば、アレルギーを抑えることができます。
おすすめは以下の3つです。
食物アレルギー用の療法食は、獣医師の指導のもとで与えることになります。アレルギーが起こりにくいように加工したタンパク質を使用することでアレルギー反応が出ないように工夫しているものもあります。
また、食物アレルギー用のご飯ということで、ほかの食材の混入対策なども徹底しているようです。
新奇タンパク食とは、今までに食べさせたことのない珍しい肉(タンパク源)を使用したご飯のことです。たとえば、カンガルーやベニソン、ターキーなどがあります。
ねこの食物アレルギーは、はじめて食べるものに対しては反応が出ないとされています。そのため、今までに食べたことがないタンパク質を使用したキャットフードを与えることが有功とされています。
また、使用している食材を限定しているキャットフードのLIDもおすすめです。ねこの食物アレルギーの原因はタンパク質ですから、特定のタンパク源だけ使用したご飯を選ぶことでアレルギーのリスクを避けることができます。
食物アレルギーでは、交差反応にも注意が必要です。交差反応とは、タンパク質の構造が似ているほかの食材でもアレルギー反応がおこることです。
たとえば、牛肉アレルギーの場合は、ベニソン、ラム、乳製品でアレルギー症状があらわれる可能性があります。鶏肉アレルギーの場合は、ダック、ターキーでもアレルギー反応が起こることがあります。
今回は、食物アレルギーの原因と症状、検査方法、食事についてなどの基礎知識を中心に紹介しました。
ねこの食物アレルギーは、できるだけ初期の段階で気づき、適切に対処することで、確実に愛猫の苦痛を和らげてあげることができます。
もし、「うちのねこ、食物アレルギーかしら?」と思うような症状があれば、なるべく早く獣医師に相談するようにしましょう。