ねこの舌はなんだか不思議。
ザラザラしていて薄く、人間や犬の舌とはぜんぜん違います。
今回はそんな「ねこの舌」がテーマです。
ねこの舌に隠されたすばらしい機能や、舌をしまわないねこの謎など、楽しいねこ舌豆知識をご紹介します。
ねこの舌の特徴といえば、なんといっても「ザラザラしている」ことに尽きます。
愛情をこめてペロペロなめられるのは嬉しいですが、ちょっと痛いこともありますよね。
ねこの舌には、「糸状乳頭(しじょうにゅうとう)」という細かな突起がびっしりついています。
そのため、舌がザラザラしているのです。
では、なぜねこの舌には「糸状乳頭」があるのでしょうか。
その主な理由をご紹介します。
ねこは一日2時間以上をグルーミング(毛づくろい)に費やすといわれています。
ノミや汚れ、抜け毛を取り、毛と皮膚を清潔にするために大切な行動です。
ねこの舌のザラザラは、グルーミングをする際には、くしやブラシのような役割を果たします。
それに加え、ザラザラはタオル代わりにもなります。
舌のザラザラは唾液を良く含むため、まるで濡れタオルでこすったかのように毛や皮膚をきれいにことができるのです。
このザラザラが水を含みやすいという特徴は、体温調節にも役立ちます。
ねこの汗腺(汗を出すところ)は、足の裏にしかなく、人間のように汗をかいて体温を下げることができません。
同じく汗腺の少ない犬は舌を出して体内の熱を逃がしますが、ねこはグルーミングによって唾液を体につけ、体温を下げているのです。
ねこは肉食動物であり、野生下ではネズミや鳥を獲って生きています。
獲物の骨から肉をそぎ落とす際に、舌のザラザラを役立てているのです。
室内のねこでも、ウェットフードをほぐさずにあげると、フードの表面をペロペロなめてそぎ落とそうとする様子を見ることができます。
グルーミングが終わった後や眠いときなど、口から舌がちょろっと出ていることがあります。
とてもかわいいのですが、「もしかして病気かも?」と心配になるかもしれません。
ねこはなぜ舌をしまい忘れるのでしょうか。
その理由をご紹介します。
ねこが舌をしまい忘れる理由、そのほとんどは「うっかり忘れていた」です。
特にグルーミングをした後には舌が疲れているのもあり、出しっぱなしにしてしまっている場合が多いようです。
緊張している状態では、ねこは舌を出しません。
ねこが舌を出しっぱなしにしているところを見られたら、それはねこがあなたを信頼し、安心しきっている証です。
ねこの中にはまったくしまい忘れをしない子もいれば、よくしまい忘れる子もいます。
猫種でいうと、ヒマラヤン、チンチラ、ペルシャ、スコティッシュ・ホールドのような「鼻ぺちゃ」のねこは、あごの中に舌が収まりきらず、出てくることが多いようです。
また、加齢やけがなどで前歯や下あごの犬歯を失ったというのも、舌が出てきてしまう原因になります。
これまで舌をしまい忘れたことがなかったのに、急に舌を出すようになったのであれば、歯のチェックをしてみましょう。
ねこが舌を出しっぱなしにしているとき、穏やかな表情をしていたり、舌を触るとパッとしまったりする場合は「うっかりしまい忘れ」であり心配はいりません。
しかし、ねこの状態によっては病気が隠れている場合もあります。
ねこの舌の異常と、そこから分かる病気について、この後でご紹介します。
舌をずっと出しっぱなしにしている、舌の色や見た目がおかしいという場合は、なんらかの病気が疑われます。
ねこの舌の異常と、そこから疑われる病気について解説します。
舌を出しっぱなしで触ってもしまわなかったり、それ以外にも様子がおかしいところがあったりしたら、それは病気のサインかもしれません。
考えられる原因としては、以下のようなものがあります。
また、ねこが舌を出しっぱなしにしている時、以下のような異常があれば病気が潜んでいるおそれがあります。
すぐに獣医師に相談しましょう。
ねこの舌の色や形からも体の異常が分かります。
元気なときの状態をチェックしておき、異常があればすぐ気がつくようにしておきましょう。
ねこの舌の色と形、そこから疑われる病気を表にまとめると以下のようになります。
舌の色 | 原因 | 備考 |
黒 | 血腫(血豆)
悪性黒色腫(メラノーマ) |
舌の形が正常な場合は、生まれつきの模様や加齢などによる色素沈着が考えられます。病気ではないため治療の必要はありません。
黒い部分が盛り上がっている、よだれや口臭がひどいという場合は獣医師に相談しましょう。 |
赤 | 口内炎
血腫(血豆) 口腔内腫瘍 |
しこりがあるか、腫れやただれがあるか確認しましょう。 |
白 | 貧血
ショック状態 |
ショック状態を引き起こす要因には以下のようなものがあります。
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紫 | チアノーゼ | チアノーゼを引き起こす要因には以下のようなものがあります。
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ここまでは、ねこの舌の能力や、舌をしまわないなぞについて、紹介していきました。
ねこの舌には、まだまだ秘密がありますので、そのねこの舌にまつわるちょっとした豆知識を紹介します。
ねこが水を飲むとき、器に入れた水をぺろぺろと舌で舐めるようにのみます。
実はこのときの舌の動きには、驚くような秘密が隠されています。
ねこは舌を上(表側)に曲げるのではなく、下(裏側)に曲げているのです。
「J」の字のようになった舌を水面につけて素早く引き上げると、小さな水柱が立ちます。
その時にねこはすばやく口を閉じ、水柱の先端を口の中に入れて飲み込むのです。
このような飲み方をすることで、あごをぬらさずに水を飲むことができます。
水の表面にしか触れていないので飛び散ることもなく、とてもエレガントな飲み方ですね。
それに対し、犬は舌をスプーンのように上(表側)に折り曲げて水中深くに舌を沈め、すくうようにして飲みます。
その様子はダイナミックで気持ちが良いのですが、水が飛び散るので飼い主さんは困ってしまうかもしれません。
「猫舌」とは、熱いものが苦手な人を指します。
では、ねこ自身は「猫舌」なのでしょうか?
結論としては、人間以外の動物は、ねこもふくめ熱いものが苦手です。
自然界においては、人間が食べる料理のような熱い食べ物がないためです。
なので「犬舌」や「牛舌」といっても構わないのですが、なぜ「猫舌」になったのでしょうか。
猫舌という言葉が生まれたのは江戸時代といわれています。
この時代から、ねこは一般庶民にも飼われだしました。
江戸時代の浮世絵にも、首に鈴をつけたねこの姿が多く描かれています。
家の中で飼われていたため、人間と同じ食べ物を与えられることが多かったことから、人間はねこが熱い食べ物を苦手とすることを知ったのです。
「猫舌」ということばはそこから生まれたと考えられています。
「猫舌」ということばは、ねこが昔から私たち日本人に愛されていた証なのかもしれませんね。
サクサクした軽い食感がおいしいお菓子「ラング・ド・シャ」。
実はこれ「猫の舌」という意味です。
しかし、その形は正方形や丸で、ねこの舌とは全然似ていません。
実はラング・ド・シャは、もともとねこの舌のような薄く細長い楕円形をしていました。
誕生したのは17世紀~19世紀のフランスと考えられています。
その頃はラング・ド・シャだけを食べるのではなく、ウエハースのようにアイスクリームの口休めとして使われていたそうです。
形や表面のザラザラ感がねこの舌に似ていたため、「ねこの舌」、ラング・ド・シャという名前がつけられたといわれています。
ねこの舌のあれこれについてご紹介しました。
ねこの口の中に隠されているかわいい舌には、驚くべき秘密が隠されていたのですね。
知れば知るほど魅力的なねこの体のふしぎ、これからもこのブログでどんどんご紹介していきます。
ぜひ、またお読みください。