「ねこは地震が来るのが分かる」、「人の行動や病気を見抜いてしまう」というような話を聞いたことがありますか?
ねこの感覚は非常に素晴らしく、人間では察知できないさまざまなことを読み解くことができます。
その力は人間からすると、まるでエスパー!とびっくりしてしまうものばかり。
そんなねこの「不思議な力」についてご紹介します。
「地震の前にはナマズが暴れる」という話は有名ですが、他にも犬や牛、鳥などさまざまな動物において、地震を予知しているかのような行動が報告されています。
ねこももちろん例外ではなく、地震の前に逃げたり隠れたりといった行動が見られるようです。
ねこの地震予知能力について、その事例と理由をご紹介します。
動物が地震を予知したという最初の記録は、なんと約2400年前にまでさかのぼります。
紀元前373年、ギリシャのヘリケという都市から動物が逃げ出し、その数日後に地震が起こったそうです。
またその後の時代にも、地震の数日前に飼いねこたちが落ち着きをなくし、中にはいなくなってしまったねこもいたという記録が残されています。
また、動物の行動により自身の被害を減らすことができたケースもあります。
1975年、中国の海城市でねこや他の動物が奇妙な行動をしていたことから、役人が市民に避難指示を出しました。
その数日後にマグニチュード7.3の地震が発生しましたが、避難指示のおかげで被害を大幅に抑えられたそうです。
また、日本でも地震と動物の行動の関係について調査が実施されています。
2011年に発生した東日本大震災の後、犬とねこの飼い主に、震災前のペットの行動に関するアンケートが行われました。
その結果、ねこの飼い主の約16%、犬の飼い主の約18%に、地震前にペットがおかしな行動をしていたとの回答が得られました。
その行動の中には、
といったものがあったそうです。
それでは、ねこは何から地震を予知しているのでしょうか。
その答えはいまだはっきりしていませんが、「P波」を感知しているのではないかといわれています。
地震波にはさまざまな種類があります。
一番早いのはP波、その次に到達するのはS波です。
このS波が地面を大きく揺らし、いわゆる「地震」を起こします。
そのため、P波を察知できれば、地震の揺れに関する情報をいち早く伝えられます。それが「緊急地震速報」です。
ねこはこのP波を感知する能力があり、危険を察知して避難行動を取ると考えられています。
他にも地震前に発生する静電気の増加、地球の磁界の変化、地面や地下水に生じる変化を読み取っているなど、さまざまな説があります。
地震被害の多い日本や中国では、地震前の動物の異常行動についての研究が続けられています。
いつかねこが優秀な「緊急地震速報」として活躍する日が来るかもしれませんね。
ねこは地震のような自然現象だけではなく、なんと人間の行動すら予知することができます。
出かける準備をしていると、ねこがそわそわしたり「置いていくの?」と恨めしそうに見てきたりといった経験をした方も多いのではないでしょうか。
また、お出かけから帰ってくると玄関で待っていた…というのもよく聞かれる話です。
ねこはどうして飼い主の外出や帰宅を察知できるのでしょうか。その主な理由を以下にご紹介します。
ねこは正確な体内時計を持っています。
例えば自動給餌器で決まった時間にごはんをあげていると、ごはんが出てくる時間にちゃんと給餌器の前で待っています。
飼い主が寝る時間を把握していて、寝る時間になるといそいそと寝室に走って行ったり、「寝る時間だよ」飼い主を誘いに来たりといった行動を見せるねこもいます。
飼い主が仕事などで決まった時間に外出し、帰宅するという場合は、その時間と行動パターンを覚えます。
時にはねこの方がしっかりしていて、寝坊や遅刻を教えてくれるということもあるかもしれませんね。
歯を磨く、髪をとかす、荷物を準備するなど、外出前に決まった行動をしている場合は、「飼い主がこの行動を取る→いなくなる」とすぐに学習します。
ねこはマイペースなようでいて、意外と飼い主の行動を見ているのですね。
ねこは五感が非常に鋭い動物です。音やにおいで状況を素早く判断します。
例えば、スーツを着たり香水をつけたりするなど、飼い主の見た目やにおいが変わるとすぐに気がつきます。
そしてその変化と外出を結びつけて覚えるのです。
また、帰宅の際も飼い主の足音や車のエンジン音をいち早く聞き取り、飼い主の帰宅を予測することができます。
徒歩で帰る場合は玄関で、車で帰る場合はカーポートに接した裏口で待つなど、音によって飼い主がどこから帰ってくるかを理解しているねこもいるほどです。
寄生虫の一種「線虫」を使ったがん検査がCMで紹介されているのを見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。
この検査は、嗅覚の鋭い線虫ががん患者の尿に近づく習性を利用しています。
ねこも同様に、その素晴らしい感覚を用いて人の病気を察知する能力があると考えられています。
その事例をいくつかご紹介しましょう。
イギリスの男性、バリー・ガーダムさんは、白黒ハチワレねこの「ウイスキー」を飼っています。
ウイスキーは凶暴な性格でしたが、ある時から急にグラハムさんにすり寄ったり、前足で鼻に触ってきたりするようになったそうです。
ウイスキーの変化を見て、ガーダムさんはペットが人間の病気を察知する力があるという話を思い出し、検査を受けました。
するとなんと前立腺ガンであったことが分かったのです。
グラハムさんは前立腺摘出の手術を受け、放射線治療が必要なものの予後は良好のようです。
なお、手術後、ウイスキーの態度は元に戻ったとのことでした。
カナダに住む茶とらのねこ「モンティ」は寝ている飼い主の指にかみついて起こし、追い払おうとしてもやめませんでした。
めまいがすることに気がついた飼い主がふらつきながらキッチンに行くと、モンティは素早く飼い主がいつも使っている血糖値検査キットの横に座りました。
飼い主が血糖値を測ったところ、非常に血糖値が低くなっていたことが分かったのです。
低血糖が重症化すると意識消失や昏睡といった危険な状態に陥ることもあります。
モンティは飼い主の命を救ったことから、勇敢なペットをたたえるイベント「ピュリナ・ホール・オブ・フェイム」の殿堂入りを果たしたとのことです。
ねこがなぜ人の病気を察知できるのか、その理由ははっきりしていませんが、ねこはその優れた五感により、以下のような変化を読み取っているからであるといわれています。
犬も同様の能力を持っており、特殊な訓練を受けることで「がん探知犬」として活躍するケースもあります。しかしねこの場合は訓練が難しいため、がん探知の対象は飼い主に限られます。そういうところもなんだかねこらしい感じがしますね。
病気だけではなく、死を察知できるねこもいます。
アメリカ東海岸のロードアイランド州プロヴィデンスのロードアイランド病院ステア―・ハウス看護リハビリテーション・センターに暮らすねこの「オスカー」は、死が近い患者さんがいると、そのベッドに乗って、亡くなるまでじっとそばに寄り添うという行動を見せていました。
オスカーは患者さんの死をほぼ100%の精度で予測でき、時には医師の判断よりも正確だったようです。
また、同時期に危篤を迎えた患者さんが2人いた場合、より苦しそうな人の方に寄り添ったという話も残されています。
オスカーの存在は、愛する人の旅立ちを見守る家族にとって強い心の支えになっていました。
オスカーをなでたり、話しかけたりすることで安らぎを得た人も多いようです。
オスカーは決して愛想の良いねこではありませんでしたが、そのような時は家族の望むままに身を任せていたそうです。
オスカーが人の死を察知できたのは、亡くなる前に人が発する特別なにおいをかぎ分けられたためであると考えられています。
細胞が死ぬ際には、炭水化物が分解されて「ケトン体」という化合物が生じます。
ケトン体は甘いにおいがするため、オスカーは死が近い患者さんの体から、そのにおいを感じ取っていたのかもしれません。
しかし、それだけではオスカーが死に近い患者さんのそばにいた理由は解明されません。
死を予知できたらおやつがもらえる、というような「見返り」がないからです。
ステア―・ハウスに勤務するドーサ医師は「オスカーは思いやりと仲間づきあいを体言(ママ)しているのだと、ぼくとしては考えたい」と述べています。
オスカーは、2022年2月22日の「ねこの日」に17歳で亡くなりました。
100人を超える患者を見送り、その家族の悲しみに寄り添い、温もりを与え続けた一生でした。
ねこの持つ不思議な力についてご紹介しました。
なぜねこが地震や人の変化を察知できるのか、その理由はいまだ完璧には分かっていません。
分かっているのは、ねこが人知を超えた力を持っていることだけです。
それは五感の鋭さであり、驚くべき学習能力であり、そして人に寄り添い、人を理解しようとするねこの愛情なのかもしれません。
のんきそうにまどろんでいるねこの中には、ミステリアスな力が眠っています。
もしかしたらその力こそが、私たちの心を惹きつけているのかもしれませんね。