2023.09.10
ねこの病気
ねこのバイタルサインの正しい測り方

ねこのバイタルサインとは?脈拍や呼吸数の正しい測り方を知ろう

言葉を話さないねこの健康状態を知るためには、ねこの体が発するサインを飼い主がしっかりと読み取ってあげなくてはなりません。その中でも「バイタルサイン」は数値で表すことができ、ねこの健康状態を把握するうえで非常に重要です。

また、バイタルサインに加え、ねこの行動や食事、排泄からも健康状態を把握することができます。

今回の記事では、バイタルサインの測り方や、健康状態をチェックする方法についてお話します。

 

目次

1.バイタルサインとは
2.バイタルサインの正常値と測り方
∟2-1.体温の測り方
∟2-2.呼吸数の測り方
∟2-3.心拍数の測り方
∟2-4.血圧の測り方
3.その他のチェックポイント
∟3-1.体重や体型
∟3-2.ごはんと水の量
∟3-3.うんちとおしっこ
∟3-4.意識レベル
まとめ

 

1.バイタルサインとは

バイタルサイン(vital signs)は日本語では「生命兆候」といい、生きていることを示す指標のことです。バイタルサインは「体温」、「呼吸」、「脈拍(心拍数)」、「血圧」の4つを基本的な項目とし、これらの数値を計測することで健康状態を知ることができます。

 

2.バイタルサインの正常値と測り方

バイタルサインをの正常値を把握し、正確に測ることができれば、愛猫の体調不良に気づきやすくなります。また、動物病院に行った際にも、バイタルサインの異常を伝えることでスムーズに状況説明ができるでしょう。

ねこのバイタルサインの測り方について、以下に詳しくご紹介します。


 

2-1.体温の測り方

大人のねこの平均体温は、37.2~39.2℃程度です。子ねこの体温は38℃後半程度、シニアねこは少し体温が低くなる傾向にあります。

体温を簡単に測りたい場合は、耳を触ります。人がおでこに手を当てて熱を計るのと同じです。普段から耳を触り、健康な時の体温を把握しておくと良いでしょう。健康でも眠い時は耳が熱くなりますので、起きている時に触ってください。

正確に測りたい場合は体温計を使います。

ねこ用の体温計は、直腸体温計と耳式体温計の2種類があります。直腸体温計は精密な計測ができますが、測るのがやや難しいです。また、体温計に塗るオリーブオイルやワセリン、人や他のねこと共有する場合に体温計にかぶせるカバー(プローブカバー)など、準備にも手間がかかります。家庭では耳式体温計の方が良いでしょう。


 

2-2.呼吸数の測り方

安静時の呼吸数は、大人のねこで1分に20~25回、子ねこはやや呼吸数が多く20~30回程度が平均値です。

ねこが安静にしている時(眠っているときでも構いません)に、おなかが上下する回数を数えることで呼吸数を計測できます。1分間数え続けなくても、15秒数えて4倍する、30秒数えて2倍するといった方法で構いません。

呼吸数だけではなく、呼吸に乱れはないかという点もチェックしましょう。


 

2-3.心拍数の測り方

ねこの心拍数は安静時で1分に100~160程度が正常といわれていますが、バラつきがあるため普段から愛猫の心拍数を数えておくと良いでしょう。

ねこの心拍数を測る時は、以下の箇所のいずれかに手を当てます。

  •  ・大腿動脈(後ろ足の付け根の内側中央部よりやや上)
  •  ・心臓(肘の後ろの胸部)
  •  ・首
  •  ・胸

聴診器を使うとより分かりやすく計測できます。

どのような方法で、どの箇所で測れば良いのか、こちらも普段から確認しておくと良いでしょう。


 

2-4.血圧の測り方

ねこの血圧の正常値は、収縮期血圧(上の血圧)で117~132mmhg、拡張期血圧(下の血圧)で78~96mmHgの範囲内といわれています。

正確に血圧を測る場合は、人と同じく血圧計を使います。巻きつける場所は前足、後ろ足、しっぽなどがあります。

血圧計がない場合は、簡易的な測定法を使います。ねこの歯ぐきや肉球を白くなるまで指で押した後、指を離して赤みが戻るまでの時間を計測します。2秒未満で戻れば正常ですが、それ以上かかるようでしたら低血圧や脱水が疑われます。

ただし、黒ねこは歯ぐきや肉球が黒いため、この方法を使うのは難しいかもしれません。

 

3.その他のチェックポイント

ねこの健康状態をチェックするためには、バイタルサインに加えて、ねこの体や行動をよく観察する必要があります。特に気をつけたいポイントを以下にご紹介します。


 

3-1.体重や体型

ねこの体重や体型は成長や老化とともに変化します。こまめに確認、計測を行い、大きな変化がないかを確かめましょう。

特に注意したいのが体重の減少です。ダイエットをさせていないのに、3ヵ月で体重が5%以上減少している場合、何らかの病気が隠れている恐れがあります。

体重減少と同様に、増加にも気をつけたいものです。肥りすぎると人間と同じく糖尿病や脂肪肝などになる場合があります。

また、むくみや腹水によって体重が増えることもありますので、体型もチェックして、体重が変化した要因を探りましょう。

健康的な体型のねこは、上から見ると腰に適度なくびれがあります。肋骨は浮き出して見えないものの、触れてみると薄い脂肪の下に肋骨の形が感じられる、という程度が理想です。

スキンシップをかねてねこの体を触り、脂肪のつき方もチェックしましょう。


 

3-2.ごはんと水の量

ごはんと水の摂取量も毎日確認しましょう。食べたり飲んだりする量が増えた、もしくは減った場合には、体に何らかの異常が隠れているかもしれません。

ただし、季節や成長、加齢が原因となっていることもありますので、バイタルサインや他のチェックポイントも併せて確認しましょう。


 

3-3.うんちとおしっこ

うんちやおしっこはねこの体内の状態を知る大切なバロメーターになります。回数や量、色、においなど、普段と違うところはないかをしっかりチェックしましょう。

 

・健康的なうんち

健康なねこの場合、1日1回はうんちをします。うんちがなかなか出ない場合は便秘かもしれません。色は暗褐色で細長くて形がしっかりしており、持ち上げても形が崩れないものが理想です。うんちに血や虫の卵が混じっていないか、目視でしっかり確認しましょう。

・健康的なおしっこ

健康なねこのおしっこは薄い黄色で、量は体重1kg当たり50ml以下というのが一般的です。

回数は1~3回程度と考えておくと良いでしょう。おしっこが少ない場合は膀胱炎や尿路結石、多い場合は腎不全や糖尿病などが疑われます。


 

3-4.意識レベル

人が救急車を呼ぶ目安のひとつに、意識障害があるかどうかという点があります。それと同様に、ねこの意識レベルを測ることで、危険な状態であるかどうかを判断することも可能です。

人間の意識障害は「ジャパン・コーマ・スケール」という尺度で評価できますが、ねこの場合は明確な基準がありません。

ただし、行動から意識レベルを主観的に評価することは可能です。いつもと比較して、行動や反応が鈍い場合は注意しなくてはなりません。

判断基準の例を以下に挙げます。

 

危険度 行動
呼んだ時にこちらに向かってくるなど、いつも通りの行動を取る
呼びかけに反応するが動こうとしない
呼びかけに反応するが、横になったまま立つことができない
呼びかけたり触ったりしても反応がない

 

また、意識レベルに関する用語も覚えておくと、獣医師への説明がスムーズになります。意識レベルを表す5つの用語をご紹介しましょう。下に行けば行くほど意識障害が強くなります。

危険度 用語 状態
意識清明 意識がはっきりしている状態。正常
傾眠 うとうとして眠りに落ちている

声かけやポンと叩くなど、軽い刺激で意識を取り戻す

嗜眠 放っておくと眠り続け、強い刺激を与えないと目を覚まさない

また、目を覚ましてもすぐに眠ってしまう

昏迷 反応がなく、かなり強い刺激で一時的に反応する
昏睡 完全に意識がない

※意識障害の程度にはいくつかの分類があり、他の用語が使用される場合もあります。

 

まとめ

ねこのバイタルサインや健康状態を知るためのチェックポイントをご紹介しました。ねこは苦痛を隠す動物であるため、飼い主が異常を見つけてあげなくてはなりません。

もちろん「何となくおかしい」という飼い主の勘も大切ですが、異常を数値や用語で説明できれば、記録や獣医師への相談がスムーズになるでしょう。

異常を見つけるためには、「正常な状態」を知っておくことが重要です。普段からねこを良く観察し、ねこと触れ合い、健康時の行動や反応、バイタルサインの数値を把握しておきましょう。

 

 

 

   
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