2024.06.16
ねこの病気
FIP(猫伝染性腹膜炎)から愛猫を守ろう!予防法や治療法を解説

FIP(猫伝染性腹膜炎)から愛猫を守ろう!予防法や治療法を解説

FIP(猫伝染性腹膜炎)は致死率100%ともいわれる恐ろしい病気です。

しかし現在では、早期発見、早期治療により、寛解を望めることも多くなりました。

FIPはどのようにして発症し、どのような症状が出るのでしょうか。また、発症した場合はどのような治療法を行っていけば良いのでしょうか。FIPについて学び、愛猫をFIPから守りましょう。

もくじ

1.FIPとは
∟1-1.FIPの原因
∟1-2.FIPになりやすいねこの特徴
2.FIPのタイプと症状
∟2-1.ウェットタイプ
∟2-2.ドライタイプ
∟2-3.中間(混合)タイプ
3.FIPの予防法
∟3-1.完全室内飼育を徹底する
∟3-2.多頭飼いをする際には感染に気を付ける
∟3-3.飼育環境を整える
∟3-4.FIPのワクチンはある?
4.FIPの治療法
∟4-1.FIPの検査
∟4-2.FIPの治療法
∟4-3.治療薬を使えることも
まとめ

1.FIPとは

FIP(猫伝染性腹膜炎)はウイルス性の感染症で、いったん感染した場合、無治療時の致死率は100%という非常に難しい病気です。まずはFIPの原因となるウイルスや、感染しやすいねこの特徴について解説していきましょう。


1-1.FIPの原因

FIPの原因となるのは、「猫伝染性腹膜炎ウイルス」です。これはねこにだけ感染する「猫腸管コロナウイルス」が猫の体内で突然変異したものであると考えられています。

猫腸管コロナウイルスは感染したねこの糞便や唾液によってうつります。ごくありふれたウイルスで、多頭飼いはもちろんのこと、1匹で飼っている場合でも感染歴を持つねこも少なくありません。

しかし基本的には感染しても無症状、もしくは短期間の下痢にとどまります。なお、猫腸管コロナウイルスは新型コロナウイルスとは全く別物で、人に感染することはありません。

しかし、猫伝染性腹膜炎ウイルスに感染すると、重篤な症状が引き起こされることがあります。これがFIPです。

猫腸管コロナウイルスから猫伝染性腹膜炎ウイルスに突然変異する原因としては、ストレスや他のウイルス(猫白血病ウイルス、猫免疫不全ウイルス)が考えられています。

とはいえ、猫腸管コロナウイルスから猫伝染性腹膜炎ウイルスに突然変異する瞬間が確認されたわけではなく、本当に猫腸管コロナウイルスから変異しているかどうかすら、実ははっきりしていません。


1-2.FIPになりやすいねこの特徴

FIPは全てのねこで起こりうる病気ですが、特に2歳以下のねこに多く見られる傾向にあります。若いねこは免疫力が未熟であること、猫腸管コロナウイルスの分裂と増殖が活発に行われることが理由になっていると考えられます。

また、雑種よりも純血種、雌よりも雄(未去勢)が発症しやすいといわれています。

2.FIPのタイプと症状

猫伝染性腹膜炎ウイルスに感染すると、数週間~数年の潜伏期間を経た後発症し、発熱や貧血、活動力の低下、食欲不振、体重減少を引き起こします。また、症状によって「ウェットタイプ」、「ドライタイプ」に大別されます。それぞれの症状は以下の通りです。


2-1.ウェットタイプ

血管の中からたんぱく質が漏れ、周辺に体液が溜まります。それにより腹水、胸水、心嚢水、陰嚢水が溜まります。これらの体液は黄色くねばねばしていることが特徴です。

特に胸水が溜まると肺を圧迫し、呼吸困難を引き起こします。

また、症状として黄疸を示すこともあります。

心嚢:心臓の周りにある膜(心膜)で作られた空間。潤滑液が入っており心膜の動きをスムーズにするほか、感染症から心臓を守る働きがある。


2-2.ドライタイプ

体中の組織(腸間膜リンパ節、眼球、肝臓、脾臓、肺など)に感染細胞が蓄積し、肉芽腫を作ります。肉芽腫ができた箇所によって、肝機能の低下や腎腫大、脳の炎症による神経症状、ぶどう膜炎といった症状が現れます。ぶどう膜炎になると眼の色が変わるため、感染に気付くというケースもあるようです。


2-3.中間(混合)タイプ

ウェットタイプ、ドライタイプは明確に二分されるわけではなく、両方の症状が現れたり、初期はドライタイプ、症状が進むとウェットタイプになったりということも起こりえます。


3.FIPの予防法

FIPの間接的な原因となる猫腸管コロナウイルスはごく一般的なウイルスであるため、感染を完全に避けることは困難です。しかし、飼育方法によってある程度FIPのリスクを減らすことは可能です。主な予防法をいくつかご紹介しましょう。

※FIPの原因となっている猫伝染性腹膜炎ウイルスには未だ不明点が多く、完全な予防法はありません。以下の予防法を全て行っていてもFIPになることもあるため、FIPになったからといって飼い方に問題があるというわけではありません。


3-1.完全室内飼育を徹底する

FIPに限らず、あらゆる感染症から愛猫を守るためには完全室内飼育をすることが第一条件です。外に出ると他のねこ、特に野良猫やその糞尿と接触する機会が増えるため、感染リスクが高まってしまいます。


3-2.多頭飼いをする際には感染に気を付ける

先ほどご紹介した通り、猫腸管ウイルスはねこ同士で感染します。そのため、多頭飼いをするとそれだけ感染リスクが上がります。

特に注意したいのは、野良猫を保護した時です。それまでずっと外にいた野良猫は、さまざまなウイルスに感染している恐れがあります。また、保護猫施設やブリーダーから新しくねこを迎え入れる時も注意が必要です。そのような場所では多頭飼いをしていることがあり、すでに感染しているかもしれません。

まずは病院で検査を受けるとともに、しばらくは他のねこと別室で飼育し、ベッドやトイレ、食器などを共有しないようにしましょう。


3-3.飼育環境を整える

FIPの原因となる猫伝染性腹膜炎ウイルスはストレスによる突然変異で出現するといわれています。また、ストレスがたまると免疫力が下がるため、感染リスクが高まるという問題もあります。

特に以下のような要素はねこにとって大きなストレスになります。

  • 生活の大きな変化(引っ越し、来客、飼い主の結婚や出産など)
  • 大きな音が鳴る、嫌な臭い(香水や芳香剤など)がする
  • 相性の悪い他のねこや動物がいる
  • 部屋が暑過ぎる、もしくは寒過ぎる
  • くつろげる場所がない
  • トイレや爪とぎなどが快適にできない

ストレスの原因を取り除いたり、遊びやおやつでストレスを和らげたりするなどして、ねこが心身ともに健康に過ごせるようにしましょう。


3-4.FIPのワクチンはある?

FIPを予防するワクチンはありません。ただし、免疫力を低下させる「ねこ白血病ウイルス感染症」はワクチンにより予防できます。FIPになる確率を下げるためにも、ワクチンは定期的に接種させるようにしましょう。

4.FIPの治療法

最後に、FIPが疑われるねこには、どのような検査が行われるのか、また、FIPになってしまった場合はどのような治療法があるのかをご紹介します。


4-1.FIPの検査

FIPは1つの検査で診断することは非常に難しいため、複数の検査を組み合わせたり、何度か検査を繰り返したりする必要があります。

検査としては体温の測定など通常の検診に加え、血液検査やエコー写真の撮影、貯留液(腹水や胸水)の検査、PCR法などが行われることがあります。

検査結果が出るまでに数日~2週間程度かかることもあるため、FIPが疑われたらすぐに病院で検査を受け、早期治療に当たることが重要です。


4-2.FIPの治療法

FIPの治療法は確立されておらず、対症療法がメインになります。投薬や点滴を行って症状を抑える、胸水・腹水を抜くといった治療を行います。

しかし、このような治療はある程度ねこの苦痛を軽減させることはできますが、病気の根治はできないため、ねこの命を救うことはできません。


4-3.治療薬を使えることも

先ほど触れた通り、ねこのFIPは治療法がなく、一度罹患するとほぼ確実に死亡するという恐ろしい病気でした。

しかし現在では、抗ウイルス薬を使った治療が可能になっています。

中でも注目されているのが「MUTIAN(ムティアン)」(現在は「Xraphconn(ラプコン)」とう薬名で流通)という治療薬です。

日本における治療報告では、FIPに罹患したねこ141匹にMUTIANを投与したところ116匹(82.2%)が生存、再発したのは3匹(2.5%)と、非常に良好な結果が出ています。

MUTIANは飲み薬として処方されることが多く、1日に1回、原則として12週間に渡って投与します。

未承認薬のため個人輸入をするか、動物病院に取り寄せてもらう必要があり、非常に高額の費用がかかります。体重や症状によっても異なりますが、ウェットタイプであれば60万円、ドライタイプであれば90万円程度が目安です。

未承認薬であるためペット保険の対象外となり、薬代は飼い主の全額負担になるケースが多いようです。

まとめ

ねこのFIPはかつて致死率ほぼ100%という恐ろしい病気でした。しかし現在では有効な治療薬の投与が可能になっており、決して治療不可能な病気ではありません。

もしもFIPが疑われたら、すぐに検診を行うこと、FIPの治療が可能な動物病院を探すことが重要です。それに加えて、十分な治療ができるようにお金を準備するのも飼い主の大切な役目です。

FIPをただ怖がるのではなく、症状や治療法を正しく知り、愛猫を守ってあげましょう。


   
TOP