白ねこは一生白ねこ、トラねこは一生とらねこ、そんなふうに考えていませんか?実はねこの毛の色は、さまざまな条件で変わることがあります。中には要注意のサインとなる変化もありますので注意しなくてはなりません。今回の記事では、ねこの毛の色が変わる条件や理由について解説します。
※キトゥンキャップのある子ねこ
ねこの毛色が変わるシチュエーションとして最も多いのが、「赤ちゃんの時から成長すると色が変わった」というものです。では、成長とともに毛の色が変わるのにはどのような理由があるのでしょうか。主な理由をいくつかご紹介します。
フィーバーコートとは、赤ちゃんねこが本来の毛色とは異なる、白や銀の毛色で生まれる現象のことです。母ねこが妊娠中に発熱していたり、強いストレスを感じていたりすると発生すると考えられています。
フィーバーコートで生まれた赤ちゃんねこたちは、成長して毛が生え変わると、本来の毛色になります。
ゴーストマーク(ゴーストマーキングともいいます)は子ねこの時にだけ見られる模様です。例えば白、黒、グレーなどの単色のねこの場合、赤ちゃんの時だけ縞模様があり、成長すると縞模様が消えていくことがあります。
キトゥンキャップはゴーストマークの一種で、白い子ねこの頭に現れる黒い模様です。成長するにしたがって黒い毛はなくなっていき、真っ白になります。
ゴーストマークやキトゥンキャップが現れるのは、ねこの毛色を伝える遺伝子の一部が、子ねこの時だけ強く出現するためであると考えられていますが、はっきりしたことは分かっていません。
ゴーストマーク、キトゥンキャップとは逆に、毛色や柄の遺伝子が、成長するにしたがって発現することもあります。
白かった子ねこがクリーム色や茶色になったり、灰色の子ねこが黒になったりといった変化が良く見られます。また、成長とともに縞模様の遺伝子が強く現れ、縞模様がはっきり見えるようになるケースもあるようです。
※ブラックスモークのねこ
遺伝子とは関係なく、成長すると毛が増えて厚みを増し、毛色の印象が変わるケースもあります。
例えば、黒い毛の下に白い毛や縞模様がある「ブラックスモーク」という毛色のねこは、子ねこの時は真っ黒に近く、成長すると白や縞模様が見えてくることもあります。
このように、成長によって毛色が変わる(変わって見える)ことは珍しくありません。子ねこの時からたくさん写真を撮って、見比べてみると意外な発見があるかもしれませんね。
ねこの中には、温度で色が変わる不思議な毛を持つものもいます。その代表例がシャムです。シャムは鼻や足、しっぽの先などが濃い色になっています。これを「ポインテッド」といいます。
このポインテッドは、温度が低いと濃く、高いと薄くなります。体の末端の部分が濃い色をしているのは、そこが体温の低いところだからです。
また、同じねこでも条件によってポインテッドの色が変わります。例えば、冬と夏で毛色が変わって見えたり、シニアになって体温が下がると色が濃くなったりするというようにです。
ポインテッドの色はシャムに良く見られるこげ茶色だけではなく、チョコレート色やグレーといった別の色や、縞模様もあります。
シャムだけではなく、シャムとの交配種であるトンキニーズ、ヒマラヤン、ペルシャ、エキゾチックショートヘアといった猫種にもポインテッドが見られます。
季節や年齢によって色が変わるというとても神秘的なポインテッド。ポインテッドのねこを飼っている方は、その毛色の変化を楽しむのも素敵ですね。
遺伝子や猫種とは関係なく、外的要因や病気により毛色が変わることもあります。毛色が変わるだけではなく、健康状態も悪くなっていることがありますので注意が必要です。
紫外線を浴びることで毛の色が薄くなってしまうケースもあります。中でも黒ねこは分かりやすく、赤っぽい毛色になることがあるようです。
なお、紫外線を浴びすぎると日光皮膚炎という皮膚の病気になってしまいます。特に白ねこは紫外線の影響を受けやすく、皮膚の薄い耳が皮膚炎になってしまうことがあります。
UVカットカーテンや、窓に貼るUVカットシートを使い、ねこを紫外線から守ることで、日光皮膚炎にかかるリスクを減らせます。
黒ねこの毛が赤茶色になってしまった場合は、栄養不足に陥っている恐れがあります。毛の色を黒くする「メラニン」を生合成するためには「チロシナーゼ」という酵素群が必要ですが、このチロシナーゼを活性化させるためには銅が重要です。
そのため銅が不足していると、黒い色素を十分に作れず、毛が赤茶色になってしまいます。
また、ねこの皮膚や毛を健康に保つためには、たんぱく質や必須脂肪酸、ビタミン、ミネラル(銅、亜鉛)が必要です。栄養不足になったり、栄養バランスが崩れたりすると毛づやが失われたり、毛が抜けたりして色が変わったように見えるかもしれません。
病気によって毛の色が変わる(変わって見える)ケースもあります。主な原因としては以下のようなものが考えられます。
【1】皮膚病
皮膚病によって毛色が変わることはありませんが、フケが出て毛が白っぽく見える、毛が抜けて薄くなることにより模様が分かりにくくなることがあるかもしれません。「前と毛色が違う」と感じたら、ねこの様子をよく観察してください。
しょっちゅう体を掻いている、毛が抜けている、発疹が出ている、毛が脂っぽくなっているといった異常があった場合は動物病院で診察を受けましょう。
【2】尋常性白斑
尋常性白斑とは、被毛や皮膚に含まれるメラニン細胞が機能不全に陥り、色素が正常に形成されなくなる病気です。ねこの尋常性白斑は非常にまれですが、黒猫が年を取るにつれて白黒のまだらになってしまったというケースがあります。基本的には毛色が白くなるだけで健康上の問題はないものの、色素が落ちた箇所は紫外線に弱くなってしまうという問題があります。
尋常性白斑の原因ははっきりしていませんが、遺伝、ストレス、メラニン細胞と角質細胞の統合性喪失、細菌叢※1の乱れ、ケブネル現象※2などが挙げられます。
人も加齢によって白髪が生えるのと同じように、ねこもシニアになると毛色が少し変わることがあります。黒い毛がだんだんグレーになったり、白い毛が混じったりするようになります。特に口や目、耳の周りに白い毛が出やすい傾向にあるようです。
また、シニアになるとグルーミングの頻度が下がるため毛づやが失われたり、毛がゴワゴワになったりして印象が変わることがあります。シニアになったらより丁寧にブラッシングをしてあげましょう。
ねこの毛の色が変わる理由についてお話しました。同じねこでも年齢や状態によって、色が変わることがあります。また、シャムやヒマラヤンのようなポインテッドのねこは、季節によって変わる色の違いを楽しむこともできます。そうした変化を見るのも、ねこ飼いのおもしろいところかもしれません。
しかし、中には病気や体調不良、グルーミング不足による変化もありますので、ねこの健康状態を確認し、必要なケアをしてあげましょう。