ねこのかわいい時期っていつだと思いますか?「子ねこ!」と答える方が多いかと思いますが、正解は「全部!」です。
大人ねこやお年寄りのねこには、子ねこにないかわいらしさや魅力があります。
今回の記事では、赤ちゃんねこ、子ねこ、大人ねこ、シニアねこ、それぞれのライフステージにおけるねこの魅力をご紹介します。
赤ちゃんはかわいい、ねこはかわいい、なので赤ちゃんねこがかわいいのは当たり前ですが、特に注目していただきたいポイントをご紹介します。
「離乳するまでが赤ちゃん」と考えると、ねこの赤ちゃん期はたったの2ヶ月しかありません。もしも赤ちゃんねこと暮らす機会があったら、そのかわいらしさを徹底的に堪能してください。
清少納言が枕草子にて「何も何も、小さきものは、みなうつくし(何もかも、小さいものはみな美しい)」という言葉がある通り、小さいものは生き物でも何でもとにかくかわいいものです。
小さいものをかわいいと思う心理は、大きいものより自分の脅威になる可能性が低いからという本能から来ているという説がありますが、そのような野暮な理由をつける必要もありません。
生まれたての赤ちゃんねこは体重100グラム、2ヶ月でも700グラム前後しかありません。その小さな姿は、理屈抜きで「とにかくかわいい!」ものなのです。
赤ちゃんねこは大人ねこのミニサイズではなく、パーツひとつひとつが赤ちゃんならではの形や色になっています。赤ちゃん期にしか見られない特徴と思うと、より愛しさが湧いてきます。
赤ちゃんねこならではの特徴が現れる体のパーツをご紹介しましょう。
【1】目
赤ちゃんねこの目は「キトンブルー」と呼ばれる青みがかった灰色です(青い目のねこをのぞく)。離乳を迎える生後2ヶ月頃から金色や赤銅色など、本来の色に変わっていきます。青灰色の目は赤ちゃん独特の色。どんな色になるか楽しみな反面、いつまでもそのままでいてほしいような気持ちになってしまいます。
【2】口
赤ちゃんねこは口の周りの毛が薄く、ほとんど肌が見えている状態になっています。ピンク色のかわいい口元で一生懸命お乳を飲んでいる姿を見ると、何があっても守ってあげたい!と思います。
【3】耳
大人ねこの耳は頭の上にピンと立っていますが、赤ちゃんねこの耳は丸みを帯びていて、頭の横についています。この理由としては「産道を通りやすくするため」、「誕生時は耳の形成が未発達であるため」などさまざまな説があります。
大人のねこと同じような立ち耳になるのは、ちょうど離乳する生後1ヶ月半~2ヶ月頃です。クマのぬいぐるみのような横向きの丸い耳は、赤ちゃんねこのシンボルなのです。
赤ちゃんねこは、ごはんはもちろんのこと、トイレも自分ではできません。お母さんねこは赤ちゃんねこを抱いてお乳を飲ませ、お尻をなめて排泄をうながします。
何らかの理由でお母さんねこがいない場合は、飼い主が赤ちゃんねこの世話をしなくてはなりません。数時間に1回ミルクを飲ませ、排泄をさせるのは骨が折れます。
また、赤ちゃんねこは病気への抵抗力が低く、体温の調節もまだ上手ではありません。体調を崩さないよう、しっかりケアをしてあげる必要があります。
赤ちゃんねこのお世話はとても大変ですが、自分に頼りきりの小さな命は本当に愛しいものです。育児の幸せを感じられるのも、赤ちゃんねこの魅力だといえるでしょう。
ミルクを飲み、ヨチヨチ歩いていた赤ちゃんねこも、2ヶ月もすれば離乳し、元気に走り回る子ねこになります。まだまだ小さいけれど、頼もしさも見えてくる、そんな子ねこ時代の魅力をご紹介します。
子ねこの魅力はなんといってもその生き生きした動きにあります。なんにでも飛びつき、転げまわるその様子はとてもおもしろく、子ねこがいるだけで部屋がぱっと明るくなります。
おもちゃに対するリアクションも抜群で、一緒に遊ぶのも楽しいです。遊びはねこにとってストレス解消や筋力アップにつながるだけではなく、飼い主と一緒に遊ぶことで絆も深まります。遊び大好きな子ねこのうちにたっぷり遊んであげて、体も心も健康なねこに育てましょう。
子ねこは成長が著しく、あっという間に大きくなります。昨日までは上れなかった高い場所に飛び乗るなど、「えっ、そんなことができるようになったの?」と驚くこともたくさんあります。
精神面も成長してしつけもできるようになり、無駄がみやいたずらも減っていくでしょう。
子ねこ時代におすすめなのが、ぬいぐるみなど決まったものと一緒に、定期的に写真を撮ることです。ぬいぐるみより小さかった子ねこが、いつの間にかぬいぐるみの背丈を越している…撮った写真を並べると、その成長度合いに感動してしまうかもしれません。
赤ちゃんねこの毛は柔らかくて少なく、綿毛のようにパヤパヤしています。しかし、成長するごとに毛の量が増え、しっかりしてきます。コロコロしていた体も、運動量が増えて引き締まってきます。
特に生後4~6ヶ月頃の若いねこは、大人と同じ体型ながらやや小さくて細く、子供から大人へ変わっていこうとする力強さと危うさにあふれています。人間でいえば思春期時代といったところで、あどけない子ねこ時代にはない魅力です。
ねこは1歳を超えると成猫(大人のねこ)になります。体はすっかり大きくなり、性格も落ち着きます。しかし、子ねこの時に負けず大人のねこもかわいいもの。しかもお世話が楽になり、どっしりとした安心感があります。大人ねこの魅力ポイントをご紹介しましょう。
ねこの性格は9ヶ月頃にはほぼ決まります。クール、甘えん坊、活発、怖がり…性格はそのねこだけの個性であり、個性があるからこそ、より愛しい存在です。
また、大人になると、起きる時間やお気に入りの場所、好きな食べ物なども決まります。決まった行動を取るので安心感がありますし、起きる時間が遅い、いつもと違う場所にいるといった異常に気付きやすく、病気の早期発見にもつながります。
大人ねこになるとお世話が楽になります。
性格的にも落ち着いていたずらをしなくなったり、長時間の留守番ができるようになったりといった嬉しい変化があります。知能面も成長し、人とコミュニケーションを取るのも上手になっているため、しつけやトレーニングがやりやすくなるのもお世話が楽になる理由です。
落ち着きが出る反面、まだまだ甘えん坊な面があるところも大人ねこの魅力です。
野良猫は3~6ヶ月で親離れし、単独行動をするようになりますが、飼いねこはいつまでもお世話をしてくれる飼い主と一緒に暮らします。そのため、飼い主をお母さんと思って甘え、一緒にいたがるのです。
体はすっかり大きくなったのに、子ねこの時のように飼い主の指を吸ったり、ひざに乗って来たりするねこも少なくありません。子ねこの時と変わらないかわいらしさに、とろけそうになってしまう飼い主も多いでしょう。
かわいいねこもいずれ年を取ります。若い頃のような元気は失われますが、シニアねこにはシニアねこのかわいいポイントがたくさんあります。一緒に長い時間を過ごしたからこそ出会える、究極の姿といえます。
シニアねこの魅力を以下にご紹介しましょう。
シニアになると、若い時代とは体の感触が変わってきます。若いねこは筋肉で張り詰めたしっかりした体つきをしていますが、老いるとともに筋肉量が減り、皮膚がたるんで体が柔らかく、薄くなっていきます。
そのくたくたの感触はまるで「人をダメにするクッション」のよう。抱っこすると体にぴったりなじみ、癒されます。
シニアになると、体形以外にも以下のような衰えが見られるようになってきます。
老いは悲しいことのように思えますが、こうして見ると悪くない変化もありますね。
どちらにせよ、長い時間を一緒にいてくれたからこそ見られる新しい愛猫の姿と思うと、愛しく思えてきます。
ねこでも他の動物でも、長生きすると目つきが変わります。時折人のような表情になって、ドキッとすることもあるほどです。
さらに年を重ねると、何もかも悟ったかのような神秘的な表情を見せるようになります。
子ねこのあどけない表情もかわいいですが、シニアねこの達観したまなざしを見ると、思わず手を合わせたくなるような神々しさを感じます。
「きみのバラをかけがえのないものにしたのは、きみが、バラのために費やした時間だったんだ」
サン=テグジュペリの名作「星の王子さま」の一節です。
シニアになるまでの長い時間を一緒に過ごしたねこは、もはや単なるねこではありません。
たくさんの愛情をそそぎ、思い出を積み重ねてきた時間を内に宿した存在なのです。
そして、それはねこも同じこと。ずっと一緒にいてくれた飼い主のことを、心から愛し、信頼しています。時の積み重ねだけが作りえる、深く強い絆です。
でも、年老いた愛猫と一緒にいられる時間は短いもの。そう遠くない未来に、別れの時がやってきます。
考えるだけで耐えられないほど寂しいことですが、その寂しさがあるからこそ、一緒にいる時間が輝きます。
ライフステージごとのねこの魅力をご紹介しました。結局のところ、小さい頃からお年寄りになるまで、ねこはとにかくかわいいのです。しかも、成長とともにそのかわいらしさは形を変え、愛しさは増していきます。
人よりも寿命の短いねこと一緒にいられる時間は長くありません。その時々の愛猫の魅力をたっぷり味わい、楽しくて貴い時間を過ごしてください。
※参考文献:星の王子さま サン=テグジュペリ著 河野万里子訳 新潮社