大きな音を嫌うねこですが、それはねこの聴覚が優れているからです。
ねこは聴覚を発達させることにより、自然界を生き抜いてきたと言っても過言ではありません。
一体ねこは他の動物と比較してどれくらい優れているのか気になるところです。
そんな大切なねこの聴覚についてスポットを当て、ねこにとって音がどれほど重要かを理解しましょう。
動物によって優れた機能は異なります。
犬にとっては、警察犬としても活躍できるくらい。嗅覚に優れていますが、ねこにとって優れている能力は聴力なのです。
ねこは人間に背中を向けていても、耳だけはこちらを向いている姿が、見られるほど聴力頼りなのです。
まずはねこの聴力が、どれほどの能力を持っているのかをご紹介しますので、ぜひねことの接し方に活かしましょう。
人間に馴染みの深い犬と聴覚を比較すると、はるかにねこの耳が高機能であることがわかります。
聞き取れる音の音域を可聴域と言いますが、これを比較しています。
犬は65〜5万Hzであるのに対し、ねこは25〜7万8千Hzまで聞くことが可能です。
高音と低音、どちらに対しても犬が聞き取れない音をねこは聞き取ることができるのです。
ちなみに人間の可聴域は16〜2万Hzですので、低音は人間のほうが聞こえますが高音ははるかにねこが優位となります。
高音を聞き取ることが得意なねこが生み出す鳴き方が「サイレントニャー」です。
サイレントニャーとは、ねこが信頼した相手に甘える際、口は空いているけど鳴き声は聞こえない現象です。
残念なことに私たちが聞き取ることはできません。
サイレントニャーを見た際には信頼の証なのでしっかりとそのサインを受け止めましょう。
動物が自然界で生きていくために必要になるのは狩りの能力です。
私たちの想像する狩りは獲物の捕らえ方に注目が行きがちです。
しかし、獲物を探す能力も必要になります。
自然界では動物は、基本的に隠れて移動するため、この能力が欠如していてはいつまでも狩りを始めることができません。
動物によって獲物を探す能力は様々な五感を発達させることで武器としてきましたが、ねこの場合は聴力を武器にしたのです。
一緒に暮らすねこが、天井を見上げて何かを探している仕草を見たことがあるかも知れません。
あの姿は虫や小動物の音を追っているのです。
虫の歩く音や齧歯類の捕食する際に出る音などをいち早く察知し、狩場を見つけるのです。
暗闇の中でも獲物のおおよその位置を聴力で把握できるため、夏の夜に蚊が飛んでいると、暗闇でねこの狩りが始まるわけです。
新しい家族としてねこを迎えた際、なぜか女性にばかり擦り寄っていき、男性にはあまりよって来ない。
こんな場面を、よく見かけることがありませんか。
実はこれ、声によって好みが分かれているのです。
自然界ではポジティブな音は高い音、ネガティブな音は低い音として認識されることが多いです。
さらにねこは高音を聞き取ることに長けており、サイレントニャーに代表されるように高い声を出しているほうが敵意がないと思うのです。
とはいえ、男性がねこに好かれないというわけではありません。
できるだけ高い声でねこに接すると好かれる可能性はぐっと高くなります。
「猫撫で声」という言葉もあるくらい、古来よりねこに接するときは高い声で接した方が良いということもあります。
音に敏感なねこであるからこそ、接する際には声に気をつけましょう。
昔はねこは人間になつかない、犬は呼べばすぐ来ると言われていました。
さらに一説でねこは人間の声を聞き分けられないのではないかとも言われていたのです。
そこで、20匹のねこに実験を行い、一緒に暮らす人間を含む3人に名前を呼ばせました。
そのうち15匹は一緒に暮らしている人間からの声に、耳を動かしたりしっぽを動かすなどの反応を見せたという結果が出ました。
つまり、ねこは自分の名前を聞き分けて理解しているということが言えます。
ちなみに、この実験でねこは反応するかを調べましたが、人間の膝がお気に入りのねこなどは呼ぶと飛んできます。
どうやら、昔言われていたことは人間とねことの関係性が不十分であったと言えますね。
生まれたばかりの子猫の里親になったり、家で暮らすねこが出産した場合などを世話することがあります。
そこで、ねこの生活にとって重要な聴覚に、障害がないか気になるところではないでしょうか。
ねこは生まれた時には、高機能な聴力を発揮しておらず、成長と共に能力を発揮していきます。
人間の赤ちゃん同様に、成長段階を知っていると健康チェックなどもできますので覚えておきましょう。
ねこは生後2日〜3日の間に少しずつ聞こえ始めます。
ここから少しずつ可聴域が広がって、生後1週間経つあたりでは200〜6000Hzになります。
生後1週間あたりでは人間の可聴域よりもはるかに狭いため、ねこの能力を垣間見ることはできません。
しかし、声を掛けると聞くことは可能です。
人間のいる生活に慣れてもらうためにも、声をかけるなどして慣れてもらうことは大切です。
少しずつ優しく声をかけていきましょう。
生後2週間ごろから音の聞こえる方向に興味を示し始めます。
音への反応をチェックし始めるのはこの辺りから始めましょう。
音がする方向を察知する能力は生後17日くらいで完成し、さらに生後1ヶ月ほどになると聴覚が完成します。
ねこによって成長のスピードも異なりますが、1ヶ月を過ぎてもあまり音が聞こえないようであれば、動物病院に相談にいくことをお勧めします。
ねこは聴力の他にも、ひげで空気の流れを察知するなど素晴らしい能力を兼ね備えているのです。
力に障害があったとしても元気に暮らしていくことは可能ですが、生活における注意点などを知るためにも、一度動物病院を受診しましょう。
高機能であるねこの聴覚ですが、耳に関する病気から聞こえにくくなるケースもたくさんあります。
生まれた頃から聴覚を頼ってきたねこにとって、聞こえにくい状態はストレスを抱えてしまうこともあります。
耳に関する病気から聴力に影響してしまうこともあるため、耳の異変を感じた際にはすぐに動物病院を受診しましょう。
実はねこのみみはデリケートなので、一緒に暮らす私たちもできる限りのケアをしてあげることを心がけましょう。
ねこの耳は外耳炎になりやすいことは覚えておきましょう。
外耳とは、私たちが耳と呼ぶ部分です。
炎症を起こしたりウイルスが入り込むなどのケースもありますので、被れていたり毛が禿げている部分があった際には早期に動物病院へ行きましょう。
また、ヘンリーポケットと呼ばれる耳の根本にあるポケットの形状をした部分には、外部寄生虫が入りやすい危険があります。
ヘンリーポケットは注意して見なければ見落としてしまうこともあるため、撫でているときなどにこっそり異常がないか確認するようにしましょう。
音に対する反応が悪い時や、しきりに耳の後ろを掻いている場合は耳掃除が必要なことがあります。
この場合、環境によって耳の垢が溜まってしまったり毛が入り込んでしまい耳の穴を塞いでいる可能性があります。
耳が詰まっていると痒くなるのでねこは掻きますが、耳の外からなのでなかなか原因を解決できないのです。
そこで耳掃除を行うのですが、ねこの耳はデリケートなので、人間用を使うのではなく、必ずねこ用綿棒で掃除を行いましょう。
入り口部分を掃除して改善しなければ、中耳炎なども疑われるので動物病院へ行きましょう。
また、スコティッシュフォールドなどの耳が折れているねこは耳垢が溜まりやすい特徴があります。
こまめに耳掃除を行わなければ中耳炎などの病気にもつながるため、気を付けてください。
江戸時代に出版された和漢三才図会という本に、「猫、鳥貝の腸を食へば、則ち、耳欠落す、往々之を試むるに然り」とう文章が残されています。
ねこに鳥貝の腸を食べさせると耳が落ちてしまうのであげてはいけませんよという文章です。
昔の話ではないかと疑ってかかるかも知れませんが、実は本当なのです。
貝の腸の中にクロロフィルという物質が含まれており、これを食べてしまったねこは日光皮膚炎を起こしてしまい、耳が落ちることもあるという恐ろしい話です。
カラス貝や鮑などにも含まれている成分なので、貝類を食べる際には、ねこが間違って食べないように注意してください。
もし誤って食べてしまった際にはすぐに動物病院へ行き処置してもらいましょう。
ねこにとって聴力は、先祖代々生きるためになくてはならない大切な機能だったのです。
一緒に暮らしているねこを見てみると、確かに耳がアンテナのように様々な方向を向いて状況把握をしていることがわかります。
音に対して敏感であるねこです。あまり神経質になる必要はありませんが、できるだけ大きな音を出さないように注意して、ねこにとってストレスのない環境づくりを心がけましょう。