ねこがケガをしてしまった、おもちゃや薬を飲み込んでしまった…そうした急なトラブルに見舞われると、驚いてパニックになってしまうかもしれません。しかし、愛猫の命と健康を守れるのは飼い主だけです。冷静に処置を行い、ねこを命の危機から救い、苦痛を少しでも取り除いてあげなくてはなりません。いざという時に備えて、ねこのケガや事故、病気の応急処置を学んでおきましょう。
まずは、ねこがケガをした時の応急処置法をご紹介します。ねこは痛みを隠す動物で、ケガの様子や程度が分かりづらいこともありますが、しっかりチェックして正しい処置をしてあげましょう。
ねこがケガをして血を流している場合は、まずどこから出血しているかを確認します。毛をかき分けて傷を探しましょう。また、意識や呼吸はしっかりしているか、歩くことができるかも併せてチェックします。
出血箇所が分かったら、清潔なガーゼやハンカチ、タオルなどで圧迫して止血します。出血量が多く血が止まらない場合は上から包帯を巻いて圧迫します。それでも出血が止まらない場合は、傷口から2~5センチ程度心臓に近いところをひものようなもので縛ります。
他の箇所もけがをしていたり、後から化膿したりすることもありますので、傷や出血の程度に関わらず、応急処置後はすみやかに動物病院で診察を受けましょう。
軽い捻挫であれば様子を見ますが、骨折や脱臼が疑われる、もしくは痛みが激しい場合はすぐに診察を受けましょう。人間と同じく、添え木を当てるなどして患部を固定してなるべく動かさないようにするのが理想的ですが、難しければ無理に行う必要はありません。患部の下に折りたたんだタオルを敷くなどして保護したうえで、なるべく動かないようケージや箱に入れて動物病院へ連れて行きましょう。
ねこは家の中で放し飼いにしているため、おもちゃなどを飲み込んでしまう、プラグを咬んで感電してしまう、ストーブやガスコンロに近づき過ぎてやけどをしてしまうといった事故が起こることがあります。パニックになってしまうかもしれませんが、まずは落ち着いて対処することが重要です。
おもちゃやビニール紐、人間の食べ物、薬などを口にしてしまう「誤飲」は、ねこが病院へ行く理由のトップに上がるほど起こりやすい事故です。
異物を口にしてしまった時は、以下のような方法で取り出せる可能性があります。
しかし、難しい場合は無理をせず、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。
特に長い紐を飲んでしまい、口から紐の端が出ている時は、無理に引っ張ると消化器官を傷つけてしまう恐れがあるため注意が必要です。
薬物や洗剤などを飲んでしまった場合は、原料が分かるようパッケージなどを持っていくと治療がスムーズです。
ねこが感電した場合、慌ててねこの体に触れると人まで感電してしまいます。まずは落ち着いてプラグを抜きましょう。その後、ねこの様子を良く確認します。
まずは心臓の動きと呼吸をチェックします。心臓が動いていない、息をしていない、意識がないという場合は、人工呼吸と心臓マッサージを行いながら、すぐに病院へ連れて行きましょう。
また、感電すると口の中をやけどしてしまっている場合があります。口の中を見て赤い腫れや出血がないかも確認しましょう。
どちらにせよ、感電が疑われる場合は念のため診察を受けることをおすすめします。
※いずれも可能な限り動物病院への連絡を優先してください。
※心肺蘇生法は肺の損傷や肋骨の骨折といったリスクを伴います。自己責任のもと行ってください。
【1】ねこの舌を引き出し、吐しゃ物があれば指でつまんで取りのぞく
【2】あごを少しそらせるようにして気道を確保する
【3】ねこの鼻を口で覆い、1秒かけて息を吹き込む。吹き込んだ際にお腹が膨れていることを確認
【1】心臓の位置を確認する(前足のラインよりやや後ろ、左前足のひじを胸元に引きよせたときに当たる部分がおおよその位置)
【2】左右の指を絡めてひじを伸ばし、1分100回を目安に(『うさぎとかめ』や『アンパンマンマーチ』のリズムに合わせると良い)、ねこの胸が3~4センチ沈む強度で心臓マッサージを行う
少し赤くなっている程度の軽いやけどの場合は、まずは患部を冷水で冷やします。その後、水でぬらしたタオルをそっと当てて様子を見ましょう。
水ぶくれができているなど重度のやけどや、やけどの範囲が広い場合は、体全体に水をかけます。お風呂場で行うと良いでしょう。患部を冷やしたら冷水で冷やしたタオルや包帯をあてがい、すぐ病院に連れて行きましょう。
次に、ねこの病気に対する応急処置法をご紹介します。病気はケガや事故と異なり、何かトラブルがなくても急に起こることもありえますので、ねこの様子を普段から良く確認しておくことが重要です。
ねこがけいれんを始めたら、落ち着いて見守りましょう。舌をかまないように指を入れたくなるかもしれませんが、けいれんを起こしているねこは意識がないため、指をかまれてしまうことがあります。
ねこが高いところにいる場合は安全な場所にそっと移す、周囲に家具などがあり頭を打ちそうな場合はクッションを置くなど、ねこがけがをしないように気をつけてください。
また、けいれんをしているところを録画しておくと、診察の際に説明がしやすくなります。
けいれんは2~3分ほどで治まりますので、落ち着いたら動物病院へ連れて行きましょう。
熱中症になると、ねこの体温が上がり、ハアハアと苦しそうな呼吸をします。まずは安静にして、体を冷やしましょう。保冷剤や氷を袋に入れ、タオルで包んだものをねこの首や脇に当てたり、濡れタオルで全身を包んだりしてゆっくりと体を冷やします。飲めそうな場合は水をあげましょう。飲まない場合は水滴を口元に落とすと、飲んでくれることがあります。無理に飲ませると窒息の原因になりますので、様子を見ながらゆっくりあげましょう。
熱中症がひどくなると、震えやふらつき、嘔吐、下痢、けいれん、意識障害を起こすことがあります。重度の熱中症が疑われる場合は、すぐに病院へ連れて行きましょう。
大切なねこがケガや病気になると慌てたり、判断に迷ったりしてしまうこともあります。しかし、そのために間違った行動を取ると、ねこの症状をより悪くしてしまうこともあるため注意が必要です。
ねこの応急処置を行ううえで、特に注意したいNGポイントについて解説します。
飼い主がパニックになって泣いたり叫んだりすると、ねこも不安になります。特にケガをしたねこは興奮状態にあるので、飼い主の態度によってさらに興奮し、暴れたりかみついたりすることもあるかもしれません。まずは飼い主が心を落ち着け、優しく声をかけるなどしてねこを安心させてあげましょう。
首の骨を損傷していたり、大きな内出血をしたりしている場合は、体勢を無理に変えると急変してしまう場合があります。ケガをしている、もしくは非常に弱っているねこはなるべく体勢を変えないように注意しましょう。
ただし、意識がない場合は気道を確保する必要があります。舌を前に引っ張り出し、首をまっすぐにしてあげましょう。
ねこに人間の薬を使ってはいけません。人間の消毒薬はしみるため、ねこが驚いて暴れる心配があります。また、人の抗生物質や痛み止めなどの飲み薬を与えると、体質に合わず重大な副作用が出てしまうこともあります。
必ず動物病院で診察を受け、処方された薬を使いましょう。
ねこの応急処置法をご紹介しました。安全な家の中とはいえ、ケガや事故が起こる可能性は0ではありません。そのような時は飼い主もパニックになってしまうかもしれませんが、大切なのは落ち着いてねこの体調やケガの状態を確認することです。そのうえで適切な応急処置を行い、すぐに動物病院で診察を受けましょう。