小さくてかわいいねこですが、その牙や爪はかなり鋭いものです。
遊んでいたり、急に怒ったりして、ねこに引っかかれたり噛まれたりすることがたまにありますね。
じつはちょっとした小さな傷でも、細菌やウイルスが入り重い症状を引き起こすこともありますので、正しい処置をしなくてはなりません。
今回の記事では、ねこに噛まれたり、引っかかれたりした時の対処法についてご紹介します。
ねこに噛まれたり引っかかれたりしたら、小さな傷でも軽く見てはいけません。
細菌やウイルスが傷口から入り、恐ろしい病気を引き起こすことがあるからです。
ねこに噛まれたり、引っかかれたりすることでなる病気の中でも、特に要注意のものをご紹介します。
狂犬病は狂犬病ウイルスに感染することで発症する病気です。
狂犬病ウイルスという名前ですが、犬だけではなく稀にねこも感染源になります。
主に狂犬病ウイルスに感染した動物に噛まれることで感染しますが、傷口や粘膜を舐められることで感染することもあります。
人間が感染すると致死率はほぼ100%という恐ろしい病気です。
おおよそ1~3ヶ月の潜伏期間を経て発症し、以下のような症状を示します。
日本では1957年以降発生は見られませんが、2006年にフィリピンから帰国した人が狂犬病を発症したという事例があります。
海外に渡航する際にはねこだけではなく、動物全てに不用意に近づかないようにしましょう。
破傷風菌は土の中にいる常在菌で、傷口から侵入して破傷風を引き起こします。
野良ねこや外出している飼いねこの歯や爪で傷つけられ、破傷風になるケースもあります。
破傷風の症状としては以下のようなものが挙げられます。
ほぼ全てのねこの口の中には、「パスツレラ菌」という細菌が存在しています。
ねこに噛まれ、傷口から菌が入ると、パスツレラ症に感染します。
ねこに噛まれた後、以下のような症状が出た場合はパスツレラ症を疑いましょう。
ねこの口の中にいるカプノサイトファーガ属菌が、ねこに噛まれることにより傷口から進入して感染します。
主な症状としては以下のようなものが挙げられます。
猫ひっかき病は、バルトネラ・ヘンセレという菌が原因となって引き起こされる感染症です。
バルトネラ・ヘンセレはノミを介してねこからねこにうつる細菌で、ほぼすべてのねこが感染しています。
病名通り引っかかれた時はもちろん、噛まれることによっても感染します。
小さな傷でも症状が出るうえ、症状が出るまでに数日程度かかることもありますので注意が必要です。
感染すると、以下のような症状が出ます。
ねこに噛まれたり引っかかれたりした場合は、その傷の程度や出血の有無にかかわらず、すぐに手当てをしなくてはなりません。
出血がある時、ない時それぞれの応急処置について解説します。
傷が浅く出血がない、もしくは少しだけ出血している場合は、まず流水で傷口を良く洗います。
その後せっけんを泡立てて傷を洗います。
ゴシゴシこするのではなく、洗顔の時と同じように、泡でなでるようなイメージでそっと洗いましょう。
きれいに洗えたらたっぷりの流水で洗い流します。
処置の後も傷口をよく観察し、腫れたり痛みが強くなったりした場合にはすぐに診察を受けましょう。
傷が深く、出血がある場合でもすぐに絆創膏や包帯を当ててはいけません。
体の中に菌が残る恐れがあるからです。まずは流水で5分程度傷口を洗いましょう。
傷口が洗えたら、なるべく早く診察を受けてください。
出血が止まらないのであれば、清潔なガーゼやタオルで圧迫しながら病院に行くようにしましょう。
これまでお話してきたとおり、ねこに噛まれたり引っかかれたりすると、さまざまな感染症にかかるリスクがあります。
中には潜伏期間を経て発症するものもあるため、小さな傷でも念のために病院に行くようにしましょう。
特に以下のようなケースは極めて危険性が高いため、急いで病院に行きましょう。
状況によっては救急車を呼ぶことも検討しなくてはなりません。
判断に迷う時は、救急安心センター事業(♯7119)に相談してください。
ねこに噛まれた傷がズキズキと痛む場合は、皮膚科や形成外科を受診してください。
発熱やリンパ節炎などの症状が出ている場合は、体の内部で感染が起こっている恐れがありますので内科に行きましょう。
処置の方法は傷の状態や症状によって異なりますが、主に以下のようなものがあります。
・レントゲンの撮影
歯などの異物が傷口の中に入っていたり、骨折が疑われたりするときに行われます。
・切開
関節炎などが見られる場合、切開をしてウイルスを排除します。
・縫合
大きい傷や顔の傷は縫合を行います。
・ワクチン接種、抗菌薬の処方
感染症を防ぐために行います。処方された薬は症状が治まっても最後まできちんと飲むようにしましょう。
・外科手術
傷が骨や関節まで達している、神経や血管が傷ついている場合は外科手術になることもあります。
ねこに噛まれたり引っかかれたりすると恐ろしい病気にかかる恐れがあります。
もちろん、早い段階から病院に行って正しい処置を受ければ、それほど怖がる必要はありません。
とはいえ、普段からねこに引っかかれたり噛まれたりしないように気をつけ、病気の原因になる菌が体の中に入らないようにしなくてはなりません。
そのために特に注意したいポイントをいくつかご紹介します。
かわいい家族であるねこですが、その歯や爪には人間にはない細菌がたくさん存在しています。
ねことキスをしたり、手を使ってじゃれさせたりするような過剰なスキンシップは避けましょう。
ねこをなでたり一緒に遊んだりといったスキンシップを取った後は、自覚はなくても細かい傷跡や唾液がついている場合があります。
ねこを触った後は必ず手を洗いましょう。
飼いねこの爪を切ったり、歯磨きをしたりすることでねこの爪や歯の菌を減らし、感染症のリスクを抑えることができます。
特に歯石は細菌のかたまりなので、定期的に動物病院で除去して口腔内を清潔に保ちましょう。
また、感染症はノミやダニによって媒介されることが多いので、ノミ・ダニ駆除もきちんとしておくことが重要です。
そのようなケアはねこの健康にもつながりますので、定期的に行いましょう。
野良ねこは体のケアを受けていないこと、飼いねこが口にしない生ごみやネズミなども食べていることから、より多くの菌を爪や口内に持っている恐れがあります。
それに加えて、生粋の野良ねこは人に慣れていませんので、近づくと噛みついたり引っかいたりする恐れがあります。
野良ねこにはむやみに近づかないようにしましょう。
保護ねこ活動を行っている方は、野良ねこを捕獲する際には長い手袋を着け、肌の露出を避けた服装をするようにしましょう。
ねこに噛まれたり引っかかれたりすることでなる病気と、その対処法をご紹介しました。
ねこは大切な家族ですが、やはり動物であり、人間にはない菌やウイルスを持っています。
そうした菌やウイルスが、噛まれたり引っかかれたりすることで傷口から進入すると、重い感染症にかかることもあります。
ねことの過剰なスキンシップは避け、体のケアをきちんとして、感染防止に努めましょう。
また、万が一噛まれたりひっかかれたりしてしまった場合は、すぐに応急処置をして、医師の診察を受けることが重要です。