ねこの保険に加入する際、様々な猫種が書かれている欄に日本猫という項目を見かけたことがあるかもしれません。
しかし、いざ日本猫を探そうと思っても、なかなか日本猫のブリーダーはいません。
そもそも、日本猫とは何を指しているのでしょう。
私たちの祖先も親しんできた日本猫について注目してきます。
日本猫は他の猫種とは少し違った特徴を持っています。
アメリカン・ショートヘアやスコティッシュ・フォールドなどの猫種に関しては細かな定義があり、純血が厳格に守れています。
しかし、和猫とも呼ばれる日本猫の定義は、「昔から日本に住んでいる種類のねこ」です。
そのため、日本猫とは、猫種ではなく古来から日本で愛されてきた猫の総称なのです。
日本にねこがやってきたのは奈良時代まで遡ります。
大陸から仏教が持ち込まれた際、それと同時に日本にやってきたのが、その後日本猫と呼ばれるようになる祖先です。
日本には元々ヤマネコが自然界に生息していたものの、現在のねこのDNAを調べるとヤマネコの血は一切混じっていません。
現在家で暮らすねこの発祥はエジプトだと言われていますので、はるばるユーラシア大陸を渡って日本にやってきたということです。
大陸から渡ってきたねこは、長い年月をかけて日本の環境に適した体に進化していきます。
寒い地域で暮らしてきたロシアンブルーやサイベリアンがその姿を変えてきたように、日本猫も日本で暮らしやすい体に進化していったということですね。
現代において、奈良時代に渡ってきたねこ以外の血が入っていないねこはまずいません。
これは、古来から日本のねこは放し飼いにされていたことが原因です。
第二次世界大戦が終わってから、アメリカン・ショートヘアやシャム猫が大量に日本に渡ってきます。
ただし、戦後も放し飼いの文化は残っていたので、様々なねこがいる中で混血を繰り返してきました。
そのため、現在日本猫と呼ばれているねこは、「古来から日本に住んでいるねこの血が混ざっているねこ」を指します。
日本人は古来からねこを愛でてきました。
商売繁盛のために置かれるまねきねこや、浮世絵師として有名だった歌川国芳が擬人化したねこを描いていたほどです。
さらには、江戸時代にはねこに関するお触れ書きがあり「ねこを売買してはならない」「ねこは自由に外へ行けるようにすること」などというものもありました。
日光東照宮には国宝の眠り猫があるなど、平民から将軍まで幅広くねこは日本人に愛されてきたのです。
江戸時代や平安時代に残された美術品で出てくるねこは日本猫であり、現在日本猫と呼ばれる猫種の祖先にあたります。
日本猫は雑種であるとはいえ、日本独自の進化を遂げてきた日本猫です。
日本猫にとって厳密な定義はないとしながらも、多く見られる特徴はあります。
混血した猫種によっては遺伝的にこれらの特徴が出ないこともありますが、多くの日本猫が持つ特徴を見ていきましょう。
日本猫の大きな特徴は短いしっぽにあります。
海外発祥のねこと比較しても、その短さは一目瞭然です。
海外ではこの短いしっぽを「ジャパニーズボブテイル」と呼び、人気を集めるほど珍しいしっぽなのです。
1960年代にアメリカに渡った日本猫が火付け役となり、その後も多くの日本猫がアメリカに渡りました。
日本でしっぽの短いねこはどこにでもいましたが、アメリカでは珍しく人気となったのです。
その後、アメリカではブリーダーが日本猫を増やし、結果として猫種として認められるようになりました。
シンガプーラやサイベリアン同様に、世界に出たことをきっかけに人気を集め、猫種として認められるケースが多いようです。
短いしっぽの日本猫が人気を集めがちですが、そのほかにもかぎしっぽを持った日本猫もいます。
しっぽが長いねこと短いねこの遺伝子が混ざり合い、結果として曲がったしっぽのねこが生まれたのです。
日本猫のなんと8割がかぎしっぽであるということから、昔からメジャーなしっぽだったと言えます。
かぎしっぽは昔から、「幸運を引っ掛けてくる」と言われるほど縁起が良いとされているのです。
ねこは縁起の良い存在とされてきましたが、さらにかぎしっぽを持っているねこは幸せの塊とも言えますね。
日本猫の特徴はしっぽだけではありません。
短毛で四肢が太いことが特徴であり、この体を活かして昔から外で生活してきたのです。
ブリティッシュ・ショートヘアがその身体能力を評価されてアメリカ行きの船にネズミ駆除のために乗せられたように、日本猫も家のネズミを駆除することは非常に高く評価されていました。
毛色も様々であり、白猫や黒猫、ブチ猫や三毛猫、さらにはトラ猫など、多くの種類がいます。
トラ猫に関しては、キジトラやサバトラ、サビトラや茶トラなどの色が様々です。
古い美術品などに残るねこの姿を見てみると、これらの柄に当てはまることから昔から日本に数多く生息していたことも伺えます。
巡り合った猫種が日本猫であった場合、一緒に暮らすとなるとどのような注意点が必要なのかをご紹介します。
日本に馴染みのあるねこだけあって、日本人が持つねこのイメージそのままを考えてみると性格の理解ができるかもしれません。
育ってきた環境や混血した猫種によっては性格のばらつきが見られますが、しっかりと日本猫の血を受け継いでいるため、似ている部分が多々あります。
ねこと言えば気まぐれであるというイメージを持たれているかもしれませんが、日本猫はまさにその通りの性格をしています。
自由奔放であり、用心深いため初めての人の前に姿を表すこともまずありません。
しかし、古くから縁側でねことのんびり日向ぼっこをしている姿が描写されるように、慣れた人、特に身の回りの世話をしてくれる人には甘えてきます。
まさにツンデレといった様子ですね。
古来からネズミやスズメを捕ってきた経緯もあり、運動能力は高い部類に属します。
四肢の筋肉は伊達ではないということが伺えますね。
元々放し飼いにされていた日本猫は、運動が大好きです。
外を歩き回ったり狩りをするなどして、1日の運動量が多かったために本能的に体を動かすのが好きである日本猫が多いのです。
現在は外に出さずに家の中で暮らすことが推奨されていますが、これによって運動不足になってしまうことに注意しなければなりません。
毎日少しでも遊んだり、家の中にキャットタワーを置くなどすることによって運動不足を解消することができます。
運動不足になると肥満になることも心配ですが、ストレス解消の場所がなくなってしまい、病気を併発してしまうこともあります。
気まぐれなため遊ぶことが難しいように感じられますが、おもちゃを出すと嬉しそうに近づいてきます。
遊ぶことで信頼関係も構築されるので、どんどん遊びましょう。
日本猫は様々なねこの遺伝子が混ざっているということもあり、特に発症率の高い遺伝性の病気は少ないです。
しかし、ねこが全体的にかかりやすい病気には注意して暮らしましょう。
ねこ風邪や尿路結石など、注意しなければいけない病気がいくつかあります。
また、肥満になりやすい傾向もありますので運動やご飯の量には注意しましょう。
早期発見、早期対策がねこの寿命を大きく変えます。
一緒に暮らしている私たちが日頃から気をつけることで、ねことの暮らしも大きく変わるのです。
以前までは日本でねこと言えば日本猫を指していました。
かの有名な夏目漱石もねこに注目し、ねこの視点から小説を書いた吾輩は猫であるを残すほど、ねこが何を考えてどう生活しているか想像をしていたのでしょう。
ツンデレな面があるために、初めてねこと暮らす方にとっては、どう接して良いのかわからないこともあるかもしれません。
しかし、関係性が構築できれば、ねこと一緒に暮らしているというよりもは人間と暮らしている気分になれるほど、魅力を持ったねこです。