ねこが下痢をしていると、おなかの調子が悪いのかな?何か怖い病気になっているのでは…と心配になりますよね。
ねこは苦痛を表すことがあまりないため、出したものから健康状態をチェックしてあげる必要があります。
ねこが下痢をした場合には、どのような点に気をつければ良いのでしょうか。
今回の記事では、ねこの下痢の原因と対策についてお話します。
健康なねこのうんちは適度な硬さがあり、スコップですくうことができます。それに対し、下痢のうんちは水分が多く、柔らかいのが特徴です。まずは、ねこの下痢の種類と、それぞれの特徴について解説します。
正常なねこのうんちの水分量は70%程度ですが、下痢の水分量はそれ以上になります。正常なうんちと下痢の境目はあいまいですが、形があっても軟らかく、持ち上げると崩れてしまううんちは下痢といっていいでしょう。
軟らかいうんちよりさらに水分が多くなると、うんちは泥のようなドロドロのもの(泥状便)や、水のようなもの(水様便)になります。
形がしっかりしていても、血やゼリー状の粘液が付いている場合は「下痢」と見なされます。血便はさらに赤い血が混じっている「血便」と、体内でうんちに血が混じり、黒く変色した「黒色便」に分かれます。粘液が混じっている便は「粘液便」といい、大腸に何らかの異常がある時に見られるようです。
他にも、ねこの下痢には下記のような特徴が見られることがあります。
ねこのうんちをチェックし、いつもと違う点があれば記録しておきましょう。症状について調べる時や獣医師に説明する時に役立ちます。
人間がちょっと調子を崩すと下痢をするように、ねこの下痢も病気由来ではないものもあります。まずは、病気以外で考えられるねこの下痢の原因をご紹介します。
食事が原因の下痢は大きく分けてごはんが体に合わない、アレルギー、食べ過ぎの3点があります。以下に詳しくご紹介しましょう。
【1】ごはんが体に合わない
ごはんを替えた場合、体に合わず下痢になってしまうことがあります。
新しいごはんに切り替える時は、まず元のごはんに混ぜて与え、少しずつ新しいごはんの割合を増やしていき、新しいごはんに慣れてもらうようにしましょう。
また、人間と同じく、冷たいものも下痢の原因になります。冷蔵庫に入れていたごはんをそのまま与えるのはねこの体に良くありません。
【2】アレルギー
食物アレルギーも下痢の原因の一つです。下痢と合わせて皮膚に赤い発疹ができる、かゆがっているなど皮膚病のような症状が出る場合もあります。
【3】食べ過ぎ
食べ過ぎでおなかを壊してしまうこともあります。良くあるのが、保護した野良猫が食べ過ぎてしまうケースです。今食べなければ次がない、と考えて急いで食べてしまうのです。
また、多頭飼育でごはんを取り合ってしまう、おなかがいっぱいなのに好物のおやつを食べてしまうというようなケースも見られます。いずれも飼い主が注意することで予防可能です。
薬物や殺虫剤、小さなおもちゃやごみ、毛玉、洗剤、タバコといった異物の誤飲・誤食によって下痢を起こすことがあります。特に毒性の強いものは命にかかわりますので、必ず病院へ連れて行きましょう。
抗生物質のような一部の処方薬を飲むと、副作用として下痢が起こる場合があります。獣医師に相談し、薬を替えたり、下痢止めを処方してもらったりといった対処が必要です。
引越しや飼い主の結婚、出産、新しいねこを迎えたなど、何らかのストレスで下痢になってしまうことがあります。
ねこは環境の変化や大きな音、嫌な臭いに敏感な生き物です。人間にとってはどうということがなくても、ねこにとっては体調を崩す原因になりえますので注意しましょう。
ねこの下痢は病気由来でないものも多いのですが、だからといって安心してはいけません。下痢の陰に、重篤な病気が隠れている恐れがあるからです。ねこの下痢を引き起こす主な病気を以下にご紹介します。
ウイルスや細菌による感染症も下痢の原因のひとつです。特に子ねこやシニアねこ、体力が落ちているねこは免疫力が低く、健康なねこでは発症しないような感染症にかかることがあります。感染したねこや食べ物から感染することもありますので、注意が必要です。
病名 | 感染経路 | 下痢以外の主な症状 | |
ウイルス由来 | 猫白血病 | ねこ同士の感染
(唾液、尿、母乳、血液など) |
免疫力の低下による貧血や口内炎
病気やけがが治りにくいなど |
猫免疫不全ウイルス感染症
(猫エイズ) |
ねこ同士の感染
(唾液、尿、母乳、血液など) |
免疫力の低下による口内炎、発熱、慢性鼻炎、結膜炎など | |
猫腸コロナウイルス | ねこ同士の感染
(糞便、体毛など) |
軽い腸炎
※まれにFIPウイルスに変化、猫伝染性腹膜炎(FIP)が生じることがある |
|
猫パルボウイルス | ねこ同士の感染
(糞便、体毛など) |
高熱、食欲不振、嘔吐、脱水など | |
細菌由来 | サルモネラ症 | 感染した動物の糞便、菌に汚染された食品など | 腹痛、嘔吐、粘液便など |
カンピロバクター症 | 感染した動物の糞便、菌に汚染された食品など | 発熱、嘔吐、脱水症状など | |
腸管出血性大腸菌症 | 感染した動物の糞便、菌に汚染された食品など | 発熱、嘔吐、腹痛など |
寄生虫が原因で下痢になるケースも少なくありません。寄生虫は目に見える大きさのもの(蠕虫類:ぜんちゅうるい)だけではなく、顕微鏡を使わないと見えないもの(原虫類:げんちゅうるい)もあります。うんちの中に虫や卵がなくても寄生虫症に感染しているケースもありますので注意が必要です。特に新しくねこを迎えた時は、保護・ペットショップからの購入どちらの場合でも、必ず寄生虫検査を受けましょう。
下痢の症状が出ることがある寄生虫症として、主なものを以下にご紹介します。
分類 | 寄生虫名 | 感染経路 | 下痢以外の主な症状 |
蠕虫類 | 猫回虫症 | 寄生された母猫の母乳を飲む
寄生された鳥やネズミを食べる 猫回虫の幼虫を口にする |
嘔吐、食欲低下
(子ねこの場合)けいれん、お腹がふくれるなど |
瓜実条虫症 | 寄生されたノミを飲み込むなど | 大量感染により出血性腸炎を起こす場合がある | |
原虫類 | ジアルジア症 | 寄生されたねこの糞便など | 嘔吐、腹痛、脱水など |
コクジシウム症 | 寄生されたねこの糞便など | 血便、貧血、脱水など |
胃腸炎や大腸炎といった内蔵の病気や腫瘍などにより、下痢が見られる場合もあります。
中には命にかかわる病気もありますので、下痢が長引いていたり、他の症状も見られたりする場合は必ず獣医師に相談しましょう。
下痢を引き起こす原因となる主な病気を以下にご紹介します。
病名 | 下痢以外の主な症状 |
胃腸炎 | 嘔吐、食欲不振、腹痛
急性胃腸炎の場合はよだれが見られることもある |
大腸炎 | 嘔吐、食欲不振、脱水
排便異常(何度も少量の排便をする、排便姿勢を長くとるなど) 粘液便、血便 |
膵炎 | 嘔吐、食欲不振、腹痛、震えなど |
悪性腫瘍 | 嘔吐、食欲不振、リンパ節のはれ、しこり、多尿、血尿、鼻血、鼻水など
※部位によって異なる |
リンパ腫 | 嘔吐、食欲不振、リンパ節の腫れなど
部位によっては発熱、咳、肺に水が溜まるといった症状が見られる |
甲状腺機能亢進症 | 嘔吐、体重減少、攻撃性が増す、落ち着きがなくなる、毛づやが悪くなるなど |
炎症性腸疾患
(IBD) |
嘔吐、体重減少、脱水症状、腹水、むくみなど |
ねこが下痢をした時には、まずねこを良く確認し、下痢を起こしている原因は何かを考えることが重要です。ねこの下痢についてチェックすべき点や、主な対処法を以下に解説します。
下痢はねこの体内で何か悪いことが起こっている証拠といえます。
ねこやねこのうんちの様子を良く確認して、特に以下のような点が見られた場合は、獣医師に相談することも考えなくてはなりません。
食事を工夫することで下痢が改善される場合もあります。特にごはんを変えた後下痢になった場合は、いったん元のごはんに戻すことも検討しましょう。アレルギーが疑われる場合は獣医師に相談してください。
また、下痢をしているねこには、消化に良い柔らかめのごはんを少しずつあげるようにします。ドライフードであれば少しお湯でふやかすと良いでしょう。
下痢をしているからといってごはんをあげないと脱水症状を起こす危険性があります。
食欲がない場合でも、水やスープなどをあげて水分補給に努めましょう。
先ほどご紹介したとおり、ねこが下痢を起こす理由としてストレスや誤飲・誤食が挙げられます。それらの原因を取り除くためには、飼育環境を見直すことが重要です。
他頭飼育でストレスを感じているようであれば、部屋を分けたり、そのねこだけの隠れ場所を作ってあげたりすると良いでしょう。また、ねこが快適に過ごせるように、部屋の温度や湿度に気を配り、静かな環境に整えることでストレスを軽減できます。
それに加え、誤飲・誤食対策も重要です。おもちゃや小物を出しっぱなしにしない、洗剤やタバコのような危険なものはねこが触れられない場所にしまう、人間の食事や生ゴミを置きっぱなしにしないといった工夫で、ねこを誤飲・誤食から守りましょう。
下痢がひどい、長引いている、他の症状も見られるという場合は、獣医師に相談しましょう。診察を受ける際には、以下の点に答えられるよう記録をまとめておくとスムーズです。
・下痢をしている期間、回数
・便の状態
・他に見られる症状はないか
・ごはんを替えていないか
・誤食、誤飲の可能性はないか
・体重は減っていないか
ねこの下痢の症状や原因、対策について解説しました。人間と同じく、ねこも食べ過ぎたりストレスが溜まったりするとおなかを壊すことがあります。しかし、危険な異物の誤飲・誤食や深刻な病気が原因となっていることもありますので、ねこの様子を見守ることが重要です。
ねこを良く観察することで、下痢の原因や対策も分かってくるかもしれません。食事や飼育環境を見直すだけでも下痢が改善されることがありますので、いろいろ工夫してあげましょう。
また、対策をしても下痢が治らない、他の症状も出ていて心配という場合は、早めに獣医師に相談してください。