2023.12.02
ねこの習性
ねこは働き者!?仕事をするねこたち

ねこは働き者!?仕事をするねこたち

マイペースにゴロゴロ・ダラダラ…。そんなねこが、いろいろな仕事をしているというのはご存知でしょうか。

有史以前から、ねこは人の生活に寄り添い、働き、助けてくれています。今回の記事では、「働くねこ」をテーマにお話をします。

 

目次

1.ねずみ獲りから神様まで!ねこの最初の仕事
∟1-1.9,500年前から人と暮らしていた?
∟1-2.古代中国・エジプトにおける「ねこ仕事」
∟1-3.日本に来たのは弥生時代?
2.まだまだある!ねこの大切な仕事
∟2-1.船のお守り
∟2-2.ウイスキーキャット
∟2-3.キャビア密輸の探知
3.ねこが公務員?国のトップと働くねこ
∟3-1.首相官邸ねずみ捕獲長(イギリス)
∟3-2.ファーストキャット(アメリカ)
4.癒しと笑顔を運ぶ!最近のねこ仕事
∟4-1.オフィスねこ
∟4-2.セラピストねこ
まとめ

 

1.ねずみ獲りから神様まで!ねこの最初の仕事

ねこがいつから人に飼われていたのか(家畜化した)のかははっきりしていません。

しかし、古代の遺跡に残された手がかりから、数千年以上前から人と暮らし、人の生活に役立っていたことが分かっています。古代の「ねこ仕事」には、いったいどのようなものがあったのでしょうか。ご紹介しましょう。


 

1-1.9,500年前から人と暮らしていた?

イエネコの祖先は、約13万年前に中東のアナトリアに生息していたリビアネコだといわれています。

アナトリアから南に位置するキプロス島のシルロカンボス遺跡では、人とともに埋葬されたネコ科動物の遺骨が発見されています。

アナトリアとキプロス島は地中海で隔たれているため、人為的に島に持ち込まれたと考えるのが自然です。また、ねこの遺骨の周りには遺品も散らばっており、意図的に人と一緒に埋葬された可能性が高いとされています。

シルロカンボス遺跡は9,500年前のもの。このことから、ねこは9,500万年前から人と生活をともにしていたと考えられています。

しかし、この時点ではなぜ人がねこを島に連れてきたのか、本当に飼っていた(世話をしていた)のかははっきりしません。


 

1-2.古代中国・エジプトにおける「ねこ仕事」

また、5,000年前の中国の遺跡からもねこの遺骨が見つかっています。研究の結果、そのねこは肉類のほかに穀物を食べていたことが分かりました。

これはねずみから間接的に摂取されたものであり、人が蓄えていた穀物をねずみから守る役割をしていたのではないかと推測されています。

さらに、4,000年前のエジプトでは、ねずみ駆除のためにねこを家畜化したことが判明しています。その後ねこは神の象徴となり、貴ばれるようにさえなりました。エジプトの女神「バステト」はねこ、もしくはねこの頭をした女性として描かれています。古代エジプトにおいて、ねこはねずみ捕りだけではなく、「神様」としての役割も担うことになったのです。


 

1-3.日本に来たのは弥生時代?

かつて、日本にねこが来たのは奈良~平安時代、書物をネズミから守るためであると考えられていました。しかし、長崎県壱岐市にある弥生時代の遺跡からイエネコと思われる骨が見つかったことから、弥生時代からねこが人と共に暮らしていたのではないかともいわれています。

弥生時代といえば稲作が伝来した時期。大切な食料をねずみから守るため、高床式倉庫やねずみ返しが生まれた時代でもあります。

ねこも倉庫番として、稲作技術とともに大陸からもたらされたのかもしれません。

2.まだまだある!ねこの大切な仕事

2-1.船のお守り

ねずみ捕りが大得意なねこは、船上でも大活躍しました。

ねずみは船本体の木材や船に張られたロープをかじったり、船員に病気をうつしたりする困った存在。そのねずみを退治するために、船にねこが乗せられるようになったのです。

そうしてねこが船で暮らすうちに、ねこには「霊力がある」といわれるようになりました。

一度船出すると大海に包まれ、大自然に身をゆだねるしかない船員たちは、町で暮らす人たち以上にジンクスを大切にしていました。

ねこが近づいてくると良いことがある、ねこがくしゃみをすると雨、毛並みに逆らって毛づくろいをすると嵐……というように、ねこにまつわるさまざまな言い伝えが誕生したのです。

船乗りねことして有名なのは、第二次世界大戦時にドイツの艦船で飼われていた「不沈のサム」です。たったの半年間で乗船した艦船3隻が沈没したにも関わらず、サムは生き延び、余生を船員の宿舎で過ごしたそうです。

日本で有名な船乗りねこといえば、南極観測船宗谷の「たけし」です。たけしは非常に珍しいオスの三毛猫で、航海の無事を願って宗谷に贈られました。

たけしは南極大陸到着後、1年もの長期間南極の昭和基地で過ごし、隊員たちとともに帰国しました。

しかし、たけしは帰国後わずか1週間で、行方不明になってしまいます。

生後半年足らずで南極に渡ったたけしにとって、昭和基地こそが自分のテリトリー。たけしは自分のテリトリーへと戻ろうとしたのかもしれません。


 

2-2.ウイスキーキャット

イギリスのスコットランド地方では、ウイスキー造りが盛んで、100を超えるウイスキー蒸留所があります。そこで活躍するのが「ウイスキーキャット」。ウイスキーの原料となる大麦をねずみや鳥から守るために飼われていました。

中でも有名なのがグレンタレット蒸留所で飼われていたメスねこ「タウザー」。24年間の生涯でなんと28,899匹のねずみを捕まえ、ギネスブックにも記録されています。

現在は貯蔵技術が向上し、害獣駆除のために蒸留所でねこを飼うことは減りましたが、マスコットや宣伝役として、かわいいウイスキーキャットが活躍する蒸留所も少なくありません。


 

2-3.キャビア密輸の探知

ロシアのスタブロポリにある検問所では、主にカスピ海から密輸されるチョウザメやキャビアを見つけ出すための「密輸探査猫」が活躍していました。

そのねこの名前は「ルーシク」。検問所の係官が拾い、押収されたキャビアを食べて育ったルーシクは、いつしか荷物の中からチョウザメやキャビアを探し当てることができるようになったそうです。

しかし、ある日のこと、いつも通り仕事を終えたルーシクは、車にひかれて亡くなってしまいます。その車はルーシクが作業をしていたバスの後ろから急発進し、ルーシクをひいたあと逃げていきました。そのことから密輸発覚を恐れた密漁組織の犯行とも噂されていますが、はっきりしとしたことは分かりません。

たった2歳で殉職してしまったルーシク。検問所の係官たちはその死をとても悲しんだそうです。

 

3.ねこが公務員?国のトップと働くねこ

画像出典:wikimedia commons(アメリカの現ファーストキャット、ウィロー )

続いて、首相や大統領といった国のトップと共に暮らし、働くねこについて解説します。国政を背負うプレッシャーの多い生活の中で、ねこは癒しの存在となるだけではなく、イメージアップや広報活動にも貢献しています。


 

3-1.首相官邸ねずみ捕獲長(イギリス)

イギリス首相の官邸には、「首相官邸ねずみ捕獲長」という役職を持つねこが代々活躍しています。彼らは公務員と見なされ、年間100ポンドの生活費と、職員がくれるおやつを「給料」として、ねずみ捕り兼ペットという重要な任務をこなしています。

現在この任についているのは「ラリー」というオスのトラねこ。ラリーは2007年に生まれ、2011年2月15日に就任。これまでに5名の首相と共に官邸で過ごし、癒しの存在となっています。

しかし、肝心のねずみ捕りの腕前はイマイチのようで、ついたあだなは「ものぐさラリー」。アンティーク家具の昼寝の質をテストする才能には秀でているようです。

また、ラリーはTwitterのアカウントを持っており、こまめに投稿をしています。ものぐさどころかとても勤勉なラリーは、首都官邸で大きな影響力を持つスーパーキャットなのです。


 

3-2.ファーストキャット(アメリカ)

ファーストキャットとは、アメリカ大統領公邸「ホワイトハウス」で飼われるねこのことです。イギリスの首都官邸ねずみ捕獲長とは異なり、こちらは大統領の飼いねこです。

はじめてホワイトハウスでねこを飼った大統領はリンカーン(第16代大統領)といわれており、その後ヘイズ(第19代大統領)、ルーズベルト(第26代大統領)、ケネディ(第35代大統領)なども愛猫家として知られています。

ファーストキャットとして有名なのがクリントン(第42代大統領)の飼い猫、ソックスです。名前通り靴下を履いたような白い足を持つキュートな黒白ねこで、ホワイトハウスの子供向けサイトのキャラクターになるなど、広報活動に貢献しました。

現在のファーストキャットは、バイデン(第46代大統領)の飼いねこ、ウィロー。ファーストレディであるジル氏の演説中、演壇に飛び乗ったことがきっかけでホワイトハウスに迎え入れられることになりました。上品なグレーの毛並みと、薄緑色のアーモンドアイが美しいウィロー。ファーストキャットとしての活躍も楽しみです。

 

4.癒しと笑顔を運ぶ!最近のねこ仕事

ねこはかつてねずみ捕りとして大活躍していましたが、衛生状態が良くなった現在では、あまり出番がなくなってしまいました。

しかし、ねこの才能はねずみ捕りだけに留まりません。その愛らしい姿と行動で、人の心を癒し、笑顔にするのも大得意です。

最後に、現代日本における「ねこ仕事」をご紹介します。


 

4-1.オフィスねこ

テレワークやフレックスなど、働き方の改革が進む現在、オフィスでねこを飼う会社も増えています。

東京都杉並区にある株式会社qnoteには、通称「ネコビル」と呼ばれる自社オフィスに通う9匹の「ねこ社員」がいます。

オフィスエリアの頭上にはキャットウォークが張り巡らされ、床にはベッドやホットカーペット。

ねこは堂々と「ヒト社員」の頭上を歩き、床に寝転びます。トイレやごはんなどのお世話はヒト社員が交代で行います。

ねこ社員がいるおかげで、社員同士のコミュニケーションが活発になるだけではなく、新規社員の獲得も有利になっているそう。ねこ社員は幸せも人も招いてくれる「招きねこ」なのです。


 

4-2.セラピストねこ

セラピーアニマルといえば犬や馬、イルカなどが有名ですが、ねこもセラピストとして活躍しています。ねこは軽くて柔らかく、人の体にぴったりとフィットするために体が不自由な方でも抱っこがしやすいこと、動きがゆっくりでおとなしいことから人を驚かせないことなど、セラピーに向いた性質を持っているのです。

犬や馬のような活発さやフレンドリーさはありませんが、人にくったりと体を預けるその温もりや、心地よいゴロゴロ音が、傷ついた人の心を癒してくれます。

 

まとめ

ねこは古代からねずみを退治し、人の食料や健康を守るために重要な役割を果たしてきました。

そのことから、古代エジプトの人々や船乗りたちにとっては神様にも等しい存在になり、貴ばれてもきたのです。

また、現代においては広報活動やオフィス勤務まで行っているねこもいます。

でも、ねこの一番の仕事は人を幸せにすること。一緒にいるだけで、ほっと心が温まり、元気が沸いてきます。

のんびりダラダラ寝ているようなねこですが、実は休みもなく仕事をしている「働き者」なのかもしれませんね。

 

 

 

   
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