ねこと言えば特徴的な尻尾があり、その形や長さも様々です。
しかし、全く尻尾を持たないねこがいることをご存知でしょうか。
マンクス(Manx)というねこは、生まれつき尻尾がありません。
一体どのようにしてマンクスは生まれ、さらに世界へと広がっていったのでしょうか。
そんな不思議いっぱいのマンクスについてご紹介します。
マンクスの特徴は尻尾がないことです。
自然発生的に尻尾がないねことして生まれてきましたが、その背景にはマンクスが生まれ育った場所が関係しているのです。
人間は尻尾がなくても生活できますが、マンクスは生活するのに支障はないのでしょうか。
まず、マンクスについてどんなねこであるのかを知ることから始めましょう。
マンクスの出身地はグレートブリテン島とアイルランドの間に位置するマン島です。
現在はバイクレースのマン島TT開催地として知られていますが、海賊がアジトにしていたなど、様々な歴史を持っている島です。
マン島に海賊が住み始めたのが8世紀と言われているので、マンクスの先祖たちはこの船に乗って上陸したものと考えられます。
島という遮断された場所で生活していたマンクスの祖先たちは、近親での交配が行われました。
そこで遺伝子の異常が起こり、突然変異的に尻尾がないねこが生まれたのです。
早くから尻尾がなかったマンクスは、17世紀ごろに貿易商人によってマン島を出ることとなり、世界中に広まることとなります。
日本猫もしっぽが短く、外見も似ていますが、関連性はなくまったく別です。
マンクスの中でも種類があり、全く尻尾のないマンクスはランピーと呼ばれています。
そこから尻尾が長くなる順に、ランピライザー、スタンピー、ロンギーと呼ばれるようになります。
尻尾が全くないランピーが生まれる確率は全体の20%であり、ほとんどが短い尻尾を持って生まれてきます。
しかし、キャットショーで注目を集めるのはランピーであり、マンクスがいる過程を見てもランピーが圧倒的に多くを占めている現状があるのです。
マンクスの尻尾がなくなった伝説として、ノアの箱舟の話があります。
世界中が大洪水になった際に、各動物をつがいで船に乗せて生き残ったという旧約聖書の話がありますが、そこにマンクスの話があります。
全ての動物を乗せて扉を閉めようとした際に、ねこが乗り遅れてしまい慌てて部屋に入った際、尻尾が挟まって短くなってしまったという話です。
あくまでこれは伝説であり、ねこの尻尾が切れたり折れたりすると命に関わるためそんなことはありませんが、そんな伝説を持っているねこなのです。
また、尻尾が短いことと歩き方もウサギににていることから、ウサギの血が混ざっているのではないかという話も一部あり、ラビットキャットと呼ばれることもあります。
他のねことは違った外見の特徴がある猫種というと、スコティッシュフォールドやマンチカン、アメリカンカールのように最近になって世界に広まったケースを多く見ます。
しかし、マンクスは古くからいるねこですので、人間と一緒に暮らしているマンクスは多いです。
日本ではあまり見かけませんが、海外ではメジャーな猫種なのです。
そこで、マンクスと暮らすために注意したいことはどのようなことなのかを知りましょう。
マンクスの性格は大人しく、物静かに過ごすことの多いねこです。
警戒心も強いため、一緒に暮らしている人間以外には姿も見せないことがほとんどです。
もし一緒に暮らすことができた際には、慣れるまでしばらくそっとしておくことおすすめします。
慣れてくると近づいてきて甘えることもありますし、活発に遊びます。
自然発生的に生まれたねこということもあり、狩りが得意なのでたくさん遊んであげましょう。
信頼関係ができると、慣れない人には姿も見せないということからさらに可愛さも増すこと間違いなしです。
ねこは体を動かすことでストレスを解消する傾向にあるため、たくさん遊んであげるべきです。
その中で、運動量を増やすために上下運動を取り入れるとさらにねこの満足度が上がります。
上下運動はねこの全身を使い、さらには全力で上へ飛び上がるので運動量が確実に増えることから絶対に取り入れたい運動方法です。
とくにマンクスは木登りが得意なねこということもあり、キャットタワーで上下運動を行うことで遊ぶ楽しみも倍増すること間違いなし。
遊ぶ際の注意点は安全を確保することです。
狭い場所で遊んでいると壁に頭をぶつけてしまうなどの事故も多いため、遊ぶ場所には十分注意してください。
そこまで毛は長くないマンクスですが、ブラッシングはこまめに行なってください。
ダブルコートで覆われているマンクスは、特に換毛期になるとたくさん毛が抜けるため、ブラッシングは必須となります。
この時期には抜け毛が体に付着したままとなり不衛生となりやすいので、皮膚病の原因にもなります。
ブラッシングする際に注意したいのは、尻尾の付け根には注意しましょう。
特に尻尾のないランピーはとても敏感ですので、驚いてパニックになる可能性があります。
あまり尻尾がある場所は刺激しないようにしましょう。
自然発生的に生まれたマンクスですが、遺伝的な変異であることには変わりありません。
そのため、マンクスならではの病気があります。
尻尾がなかったり極端に短いという外見は可愛らしいですが、健康上はあまり歓迎できるものではないのです。
そこで、マンクスが特に気をつけたい病気と、マンクスが持っている尻尾が短くなる遺伝子についてご説明します。
ランピーの尻尾がなくなる遺伝子は、致死性がある劣性遺伝子なのです。
マンクスのうち20%が尻尾のない子どもが生まれるということも劣性遺伝を物語っているのですが、この遺伝子が父母の両方から遺伝して二つ揃ってしまうと致死に至ります。
そのため、ランピー同士の交配は禁じられていることなのです。
また、二つ揃わない状態であっても様々な病気の原因となることがあります。
もちろん100%発生するわけではありませんので、もし一緒に住んだ際にはどのような症状があるのかをこまめに確認する必要があります。
マンクスの遺伝子が原因で起こる病気をマンクス症候群と呼びます。
症状としては、脊髄破裂や椎間板に異常が起こります。
対処が遅れると命に関わることなので、すぐに動物病院を受診することとかかりつけの動物病院を見つけておくことがベストと言えます。
先天的な原因であり、決定的な治療方法もないため難しい病気ではありますが、外科治療などで処置することは可能です。
脊髄などに異常がないかを確認するとともに、定期検診などを行いマンクス症候群の兆候がないのか、発症している場合は進行具合はどうかなど、チェックすることが必要になります。
マンクス症候群の大きな問題になる例をご紹介しましたが、直腸や膀胱に機能障害を持ってしまうマンクスもいます。
これはマンクス症候群の一部の症状とされており、誕生時に確認できる場合もあれば生後半年ほどで症状が出始めるねこもいます。
排便、排尿に影響し、生活に影響が出る可能性が非常に高いため、トイレで様子がおかしかったりトイレの回数が少ない場合は動物病院をすぐに受診してください。
物静かで遊ぶのが大好きなマンクスを可愛がる方は多いです。
また、尻尾がないという特徴も他のねことは違い、愛情が増します。
しかし、病気が多いことも事実であり、特にランピーは病気になる確率が高い種類です。
ここで注意してほしいのは、病気になりやすい猫種というだけで、他の猫種であっても若いうちから病気になる可能性がゼロではないということです。
もちろん、ねこには健康であってほしいと考えるのは当然ですが、もし病気になった場合はそれなりの対処を行うことは人間の役目であり一緒に暮らす者の義務と言えます。
看病は大変かもしれませんが、マンクスに惚れ込んでしまった場合は例え体が弱いねこであっても、特別な時間を過ごせることは間違いありません。