ねこはしっぽを「ピイーン」と立てたり、「クネクネ」と揺らしたり、「クルリ」と曲げてみたり、ねこのしっぽをまるで魔法の杖のように自在に操っています。
そんな、ねこのしっぽの動きを見ていると何だか不思議でなりません。
どうしてねこは、あんな風にしっぽを操ることができるのでしょうか。
答えは、ねこの気持ちとしっぽの仕組みにあります。
ねこにとって「しっぽ」とは、いったいどんな役割を担っているのでしょうか?
大きく挙げてみると、どうやら次の3つの役割があります。
ねこはどの動物よりも平衡感覚に優れています。
その平衡感覚が優れている理由がしっぽなのです。
たとえば、幅の狭いベランダの柵の上を歩いたり、ブロック塀の上や木の枝を足早に歩いたりするときの、安定した平衡感覚の役割を担っています。
しっぽを使って上手に感情を表す動物です。
しっぽの動きで、ねこが今どのような気持ちでいるのかが分かるなんて面白いですね。
ねこのしっぽと感情の関係については、あとでまた詳しく触れます。
ねこは暑さよりも寒さに弱い動物です。
寒い日に、窓際の日の当たる場所で丸まっている猫の姿はよく目にしますが、そんなときねこは顔をしっぽで覆って、まるでマフラー代わりに使ってように映ります。
猫のしっぽは、寒い日に暖を取るための防寒着のようなものなのですね。
しっぽの長さ太さは個体によりそれぞれ違いがありますが、ねこの種類によっても違いがあります。
それぞれ代表的なものを3種づつ紹介していきます。
・アビシニアン
まるで鞭のようなしなやかなしっぽを持ったねこです。
好奇心が強く甘えん坊で友好的なねこだと言われています。
・シャム
敏捷性があり、ねこの中でもトップクラスの運動量を誇ると言われています。
友好的なねこでもあり、飼いねことしての求めるフアンも多いそうです。
・ベンガル
山猫の血すじを引いていると言われています。ヒョウ柄で筋肉質の体型が特徴的です。凶暴な面もあります。
・アメリカン・カール
長毛種のねこです。好奇心が旺盛で、とても穏やかで賢いねこだと言われています。
人と一緒に暮らすことや多頭飼いもでも安心して育てられるため、はじめてねこを飼う人にも適した種類として人気が高いです。
・ヒマラヤン
ふわふわとした長毛猫でシャム猫の模様が美しいと言われています。
見た目にもしっぽは太くて長そうですが、性格はペルシア猫と一緒で、物静かでのんびりとしたねこです。
頭が大きくて丸く、鼻が短いのも特徴的の一つです。
・メインクーン
ふわふわとした長毛で太いしっぽの持ち主です。
猫の中でも最も大きな猫種です。成猫では体重が10kgを超えるものもいるそうです。
性格は温厚で人にも懐きやすく飼いたいと思うねこフアンも多いと言われています。
ねこのしっぽの構造は尾椎(しっぽを支える骨)と筋肉、神経から成り立っています。
しっぽの根元が太くしっぽの先に行くにしたがって細くなっていきます。
尾椎は、猫種や個体差により違いがありますが、通常18~23個の骨で成り立っています。
しっぽが短く、かぎ型になったねこのしっぽは3~6個しかありません。
しっぽの筋肉には、内背側仙尾筋(ないはいそくせんびきん)、内腹側仙尾筋肉(ないふくそくせんびきん)、尾横突間筋(びおうとつかんきん)、直腸尾筋(ちょくちょうびきん)など複数の筋肉から成り立っています。
ねこがしっぽを上下に動かしたり、くねくねと曲げられるのはこれらの筋肉を上手に使って動かしているからです。
ねこが尾椎や筋肉を動かすにはその命令を伝える神経が必要です。
それが尾骨神経と言われるものです。この尾骨神経はしっぽの全体に分布しています。
脳から指令を受けた尾骨神経によってその信号が筋肉や尾椎に伝わって、ねこはしっぽを自在に動いているのです。
しっぽを上手に使って感情を表していることは、前に述べましたが、ここではしつぽを動かしているときは、ねこがどのようなことを考え、感情をもって動かしているのか?
その代表的なものについて次に紹介しながら解説します。
嬉しいときやご飯がほしいとときには飼い主に向かってしっぽを立てながらサインを送ります。
しっぽを立ててすり寄ってきたときは飼い主に何かのお願いや催促をしたいときです。
しっぽをくねくねと動かしているときは、何かワクワクとした気持ちになっています。
また、くねくねとして飼い主に近づいてきたら遊んでほしいというサインです。
飼い主だけにみせるサインですので、思う存分遊んでください。
しっぽがボワッと膨らんでいるときは威嚇のサインです。
ねこは敵とみなした相手に遭遇したときは、自分をより大きく見せるために体中の毛を逆立てます。
このときはしっぽも大きく膨らんでいます。
新入りのねこが入ってきたときや、野良猫などの敵が窓の外からのぞいているときにも、威嚇するためにしっぽを膨らませるのです。
座りながら、前脚を隠すようにしっぽをくるりと巻き付けているときはリラックスしているときです。
前脚も後ろ脚も床にぴったりと付けて座っている姿勢(箱座り)のときも猫がゆったりとしているときも、しっぽを巻き付けています。
忙しくしっぽを左右にバタバタと動かしているときはストレスを感じて、イライラとして怒っているときです。
こういうときは、飼い主にたいしても凶暴になったりします。
うっかりと手を出したりすることは避けましょう。
また、ねこはよほど信用していないと抱かれることを嫌います。
抱っこしてしっぽをバタバタと振っているときは早く下ろしてほしいというサインです。
飼い主さんが抱っこしたい気持ちは分かりますが、しっこくやると嫌われてしまいます。
飼い主に叱られてしょんぼりしているときは、反省しているのかしっぽをだらりと下げているのをよく目にします。
また、病気などのサインを送っているときもしっぽをだらりと垂らしているときがあります。
もし、いつもと様子が違うと感じたら、かかりつけの病院へ行って診てもらいましょう。
しっぽをくるりと後ろ脚の間に巻き込んでいるときは怖いと言うサインです。
自分より体格が大きくて強そうなねこの前では、体を小さくして防御の姿勢に入っていることを表します。
多頭飼いをしている方は、よくこの場面に出くわすのではないでしょうか。
強いねこの前では、弱いねこはおとなしく小さくなっています。
何か考え事をしているときや、何かに集中しているときはこうしてしっぽの先をビクピクと動かしています。
せっかくねこが集中して考えているときですから、無闇に近づくのはやめてそっとしておきましょう。
寝ているときでも飼い主の声に反応して、しっぽを小さく振ってサインをだすときがあります。
飼い主から名前を呼ばれたけれども、寝たままでいたいときや起きるのが面倒だと考えているときはしっぽだけ振って応えているようです。
様々な動きをするねこのしっぽを見ていると、可愛らしくて「触ってみたい!」と思う人は多いでしょう。
しかし、ねこのしっぽは脊髄と直結しているために痛みを感じやすい部位で有り、平衡感覚などを担う繊細で大切なものです。
可愛いからと無理に引っ張ったり、知らないうちに踏んづけてしまったりすると内臓や後ろ脚に障害が出てしまうこともありますからくれぐれも注意してください。
ねこのしっぽは魔法のしっぽと言われるように、不思議な魅力を持っています。
体のバランスなど平衡感覚の役割を担うだけでなく、感情を表すためにしっぽがついいていると考えたら、ますますねこの魅力に引き込まれそうですよね。
飼い主さんだけではなく、ねこをこよなく愛している人もこれからはもっとねこのしっぽに関心を持って観察してみてください。