ねこの誤飲誤食を軽く考えてしまう飼い主さんもいらっしゃるようですが、実はとっても危険なことなのです。
飼い主さんが気づかないうちに食べてしまい、腸閉塞を起こし命を落とすケースも後を絶ちません。
そこで今回は、ねこが食べたら危険なもの、誤飲誤食したときにやってはいけないこと、誤飲誤食の症状や対処法など、いざというときのために知っておきたいことをまとめました。
まだ警戒心よりも好奇心が勝ってしまう子猫や若い猫は時として無謀で危険な行動に出ることがあります。それは、誤飲誤食に関しても例外ではありません。
誤飲誤食は子猫や若い猫に多く、年齢が高くなるにつれて減る傾向です。なかでも、植物の中毒に関しては、半数以上が1歳未満に起きているという報告もあります。
ねこは基本的に目新しい物は警戒をしますが、好奇心旺盛な子猫や若い猫は、近づいてチョイチョイをしてみたり、噛んだりして確認しないと気が済まないねこもいます。
ですから、ねこにとって危険な物は置かない、もしくは見えない場所に隠しておくようにしましょう。
誤飲誤食はメスよりもオスのほうが多いといわれています。
オス猫のほうが好奇心旺盛だから、体が大きくご飯をたくさん食べるから、噛む力が強いからという説があるようです。
ねこは、本来は食べ物ではない物(毛布、紐、ビニールなど)に執着し、噛む、舐める、食べるといった行動をすることがあります。これは一種の摂食障害で、異嗜症(いししょう)という病気です。
ねこの場合は、布や毛布を吸う、噛む、食べるという行動が多く見られ、「ウールサッキング」と呼ばれています。
ウールサッキングの原因は、離乳が早すぎた、幼いころに栄養不足だった、遊びの環境に問題があったということが考えられます。また、消化器障害が原因になることもあります。
いずれにしても健康上問題がありますし、異嗜症は命にかかわることもありますので獣医師に相談しましょう。
危険度最高ランクとも言えるのが細長い「紐状のもの」です。ねこの誤飲誤食のなかでも致死率が高く、非常に危険だとされています。
ねこが紐状のものを食べてしまった際に、腸内で引っかかってしまうと、腸がアコーディオン状になり壊死してしまうことがあります。
ねこの舌は紐状のものを飲み込みやすい構造になっていますから、紐状のおもちゃはかならず飼い主さんの目が届くところで遊ぶようにし、終わったら片づけるようにしましょう。
おもちゃ以外にも、ビニール紐、髪の毛、毛糸なども危険です。とくに、カサカサと音がするビニール紐は好むねこが多いので注意してください。
人間用の薬や薬品にはねこが中毒を起こす危険なものがあります。
とくに注意したいのは以下のものです。
これらはどれもねこにとっては猛毒で命にかかわるものです。この中でも、α-リポ酸やエッセンシャルオイル、ティーツリーオイルは扱いに注意が必要です。
α-リポ酸は美容やダイエット目的のサプリメントとして普及しました。匂いに惹かれるのか、α-リポ酸を自ら進んで食べてしまうねこもいます。袋を破って食べる場合もあるようですから、手の届かない場所に保管するようにしましょう。
またエッセンシャルオイルやティーツリーオイルはアロマディフューザーを使用することで被毛に付着し、毛づくろいの際に危険な成分を摂取してしまう可能性があり危険です。ねこのいるご家庭では使用を控えましょう。
なお、エチレグリーコールは固まらないタイプの保冷剤に使用されていましたが、最近では安全のため使用を控えるようになってるそうです。
ねこ用のおもちゃでも決して油断はできません。とくに、以下のようなおもちゃは誤飲誤食の危険性が高いとされています。
ねこのおもちゃを選ぶ際は、口に入らない大きさで細かい部品のないもの、壊れ難いものを選ぶようにしましょう。
また、天然の毛皮や羽を使用したもの、獲物に近い大きさのものは狩猟本能が刺激されて誤飲誤食の原因になりやすいですから、注意が必要です。ネズミ型のおもちゃで誤飲誤食が相次いでいる商品もあります。
おもちゃで遊ばせる際は飼い主さんの目の届く範囲で遊ばせるようにし、遊び終わったらねこの手の届かない場所に片づけるようにしましょう。
ねこは肉食動物のため植物の毒素を上手に解毒することができません。ですから、ねこは700種類以上もの植物に対して中毒症状などなんらかの反応を示すと言われています。
一例を挙げると、
といった植物があります。
この中でもユリは、ねこにとって猛毒です。とくに注意が必要なユリとして「オニユリ」「テッポウユリ」があります。ユリは花を生けている花瓶の水を飲んでしまった、被毛に付着した花粉を舐めてしまったというだけでも中毒症状を引き起こす可能性があり大変危険です。
ねこにとって危険な食品は多岐にわたります。とくに注意するべき食品としては、以下のものがあります。
玉ねぎをはじめとするねぎ類は、ゆで汁にも中毒成分が溶け出しますし、ハンバーグや唐揚げなどの料理に使われていることもあり、一見すると含まれていることが分かり難いものも多いです。
また、バラ科の果物の種や未熟な果実にはシアン化合物が含まれているため与えないように注意しましょう。
これらのほかにも、柑橘類の皮にはエッセンシャルオイルの成分が含まれていますし、青さかなも食べ過ぎると病気の原因になります。また、乳製品はアレルギーや乳糖不耐症を引き起こすこともあります。
ねこは総合栄養食のキャットフードを食べていれば栄養は足りていますから、あえて人間の食べ物を与える必要はありません。
ねこの誤飲誤食では、食べたところを目撃していないケースが多いと言われています。そのため、愛猫が誤飲誤食をしていることに気づいていない飼い主さんも多く、病気を疑って受診することが多いそうです。
愛猫の命を守るためにも、誤飲誤食の症状を知っておきましょう。
誤飲誤食の際に見られるおもな症状は以下のとおりです。
このような症状が見られたら早急に動物病院を受診してください。誤飲誤食は時間勝負でもあります。もし、判断に迷うようなときは、獣医師に相談し指示を仰ぎましょう。
塩やオキシドールを使用して吐かせる方法を紹介しているのを見かけますが危険ですので絶対にやめましょう。
塩を使った方法では、ねこが吐かない場合はナトリウムの過剰摂取で「高ナトリウム血症」の原因になります。重症化すると、けいれんや昏睡状態に陥り命を落とすこともあります。
また、オキシドールを使用した方法では、胃や食道の粘膜がただれてしまう危険性があります。
ねこが誤飲誤食をした場合は、吐かせずに動物病院を受診しましょう。
紐を誤飲誤食した場合に、お尻から紐が飛び出すことがあります。ついつい引っ張りたくなるかもしれませんが、絶対に引っ張ってはいけません。
腸内で紐がひっかかっている場合は、腸が引きつれアコーディオン状になり、腸壁が破れてしまうことがあります。
お尻から紐が飛び出しているのを発見した場合は、早急に動物病院を受診してください。もし、飛び出ている部分が長い、猫が気にしているといったときは、短く切ってあげるとよいでしょう。
ねこは誤飲誤食をすると食欲がなくなります。愛猫がご飯を食べないと心配で食べさせようとしてしまうかもしれませんが、絶対にやってはいけないことのひとつです。
胃の中に食べ物があるとレントゲンやエコーなどをおこなうことができません。場合によっては治療が遅れてしまうこともあります。誤飲誤食の際は一刻を争う場合もありますので、飲食をさせずに速やかに動物病院を受診しましょう。
愛猫が誤飲誤食をしてしまったら、飼い主さんがやるべきことは、何を差し置いても動物病院を受診することです。
受診の際の注意点は以下です。
もし、いつ食べたのかはっきりと分からなくても、「○時ごろは元気があった」「○時ごろから吐きはじめた」などヒントになることを伝えられるようにしてください。
食べたもののパッケージがあれば、かならず持参するようにしましょう。毒物を摂取した場合は、どのような成分が含まれているのか確認できるため、早期に適切な治療を開始することができます。
動物病院での治療は触診やレントゲン撮影、超音波検査をおこない、誤飲誤食をしていないか、異物がどこにあるかなどを確認します。
もし、異物が胃の中にあり、吐き出すことができるものであれば、催吐薬
を使用して吐き出させます。ただし、ねこは吐かないことも多く、そのような場合は全身麻酔のうえ内視鏡手術で取り出すことになるでしょう。
ただし、異物が尖っている、深く刺さっている、胃を通過してしまったというときは、開腹手術をおこないます。
毒物を食べてしまった場合は、体内への吸収を妨げ、中毒症状を軽減するようにします。胃の洗浄をする、吸着剤で毒物の吸収を阻害する、解毒薬を使用するのが一般的です。摂取した毒物によっては、下剤で排泄させることもあります。
ねこの誤飲誤食は、少しでも早く治療を開始することが重要です。
誤飲誤食をしてから、2時間程度であれば食べたものが胃の中に留まっているため、吐かせるだけで済むこともあります。時間が経ち食べ物が胃を通過してしまうと、開腹手術で取り出さなければいけなくなりますし、腸閉塞などの危険性が高まります。
開腹手術になると、ねこの負担も大きいですが、治療費が高額になってしまうため飼い主さんの負担も大きくなってしまうでしょう。
また、毒物を食べてしまった場合は、体内に吸収されてしまうと中毒を引き起こしますので、なるべく早く受診し吸収される毒物の量を減らす必要があります。
愛猫が誤飲誤食をしてしまったら、気づいた時点ですぐに動物病院を受診してください。食べたかはっきりしない場合も念のため、動物病院を受診しましょう。
ねこの誤飲誤食は、飼い主さんの対策次第で防ぐことのできる事故です。
危険なもの、飲み込んでしまいそうなものは出しっ放しにしない、ねこの手が届かない場所に片づけるということを徹底するだけで誤飲誤食事故のリスクを減らすことができるでしょう。