元気いっぱいだったねこが突然亡くなる「突然死」。とても悲しく、悔いの大きい別れになってしまいます。
ねこの突然死を防ぐためには、突然死の原因となる病気や事故を知り、ねこの安全や健康を守ることが重要です。
今回の記事では、ねこの突然死の原因と対策をご紹介します。
「突然死」とは、直前まで健康に見えていたにもかかわらず、急速に死に至ることです。
交通事故のような外因死は含まれません。WTOの定義では、「瞬間死あるいは発症から24時間以内の内因死(病死)」となっています。
似た意味の言葉に「急死」があります。急死は体調が急変して亡くなることを指し、直前の健康状態は問いません。
つまり、突然死は急死の一種だといえます。
今回の記事では、「突然死(急死)」という形で両方をまとめてご説明します。
まずは、突然死の原因となる病気を以下にご紹介します。
肥大型心筋症とは、心臓の筋肉(心筋)が異常に厚くなり、血液の循環が悪くなる病気です。初期の段階では心臓が機能低下を補うように働くため、症状はほとんど見られません。
しかし、病状が進行すると心機能に障害が出始め、以下のような合併症を引き起こします。
合併症 | 病気が引き起こされる原因 | 主な症状 |
呼吸不全 | 血液の循環が悪くなることにより、肺の酸素交換が上手に行えなくなるため | ・苦しそうな呼吸
・チアノーゼ ・意識障害 ・呼吸停止 |
不整脈 | 心筋の中の血管が圧迫され、心臓を拍動させるための正常な働きを失うため | ・活動の低下
・虚脱、湿疹 ※血栓塞栓症の原因になることもある |
うっ血性心不全 | 血液が正常に循環せず、静脈にたまるため | ・息苦しさ
・むくみ ※肺水腫・胸水の原因になることもある |
肺水腫・胸水 | 血液中の液体が毛細血管から漏れ、肺や胸腔内にたまるため | ・呼吸数の増加
・血液の混じった液体を吐き出す ・歯茎や舌が白や紫に近い色になる |
動脈血栓塞栓症 | 血栓が動脈につまり、血液の流れが阻害されるため | ・強い痛み
・呼吸困難 ・低体温 ※致死率が高い(60~70%) |
腎機能障害 | 血圧のコントロールが難しくなるため | ・血尿
・嘔吐 ・意識障害 ・尿毒症 ※末期の場合は治療が難しい |
引き起こされる病気によっては、急激に体調が悪化し、突然死(急死)してしまう場合があります。
また、アメリカンショートヘアーやペルシャ、メインクーン、ラグドールは肥大型心筋症になりやすいといわれていますので、特に注意しましょう。
日本人の死因として多く見られる「脳梗塞」は、ねこもかかる病気です。脳の血流低下や脳血管からの出血により脳に血栓が形成され、歩行不全や嘔吐、けいれんを引き起こします。最悪のケースでは意識を失い、死亡してしまう場合もあります。
脳梗塞を引き起こす主な要因は以下の通りです。
腎臓病は腎機能低下が引き起こす諸症状を指します。
急性と慢性があり、突然死の原因となるのは急性腎臓病です。原因は腎臓自体の異常に加え、心不全や結石、腫瘍のような他の病気や、ユリや保冷剤に含まれる「エチレングリコール」などの中毒によって生じるケースもあります。
初期症状は食欲や元気の低下、飲水量や尿量の減少などです。さらに病状が進行すると、脱水症状や意識低下になり、尿毒症で死に至ることもあります。
ねこの腎臓病については、以下の記事でもご紹介しています。
フィラリア症とは、寄生虫である「フィラリア」が引き起こす感染症です。
犬の病気として知られていますが、ねこもフィラリアに感染することがあります。
体内で死滅したフィラリアが肺や心臓の血管を詰まらせると、血液の循環が悪くなり突然死を引き起こす危険性があります。
ねこの体内はフィラリアが増殖するのに適さない環境であるため、犬と比べると症状は弱いことが多いです。
しかし、だからこそ感染を見過ごされてしまう場合があるため注意が必要です。
子猫衰弱症候群とは、生まれて間もない赤ちゃんねこが亡くなることを指します。
特に生後1週未満の赤ちゃんねこに多く見られます。
少しずつ弱って亡くなることもありますが、直前まで元気だったのに急に亡くなってしまうこともあり、予防は困難です。
原因としては以下のようなものが挙げられます。
・先天的な問題
・母ねこの病気
・出産時のトラブル
・低体温や低血糖
・感染症
子ねこがかかりやすい病気については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
ンを読み取って早期対処!
続いて、病気以外の突然死(急死)の原因をご紹介します。飼育環境を整えることで防止できるものもありますので、しっかり把握しておきましょう。
事故もねこの急死の原因になります。特に交通事故は非常に深刻な問題です。ねこは小さく素早いため車に気づかれにくく、また車を見て驚くと硬直してしまうため、交通事故に遭うことが多いです。
完全室内飼いをすることで、交通事故のリスクを下げられます。
また、室内でも以下のような事故が起こる場合があります。
ねこは好奇心旺盛で、あちこち歩き回り、さまざまなものにじゃれつきます。不幸な事故を起こさないよう、飼い主がしっかり対策することが重要です。
誤飲や誤食もねこにとって重大な事故になりえます。
飲み込んでしまった異物は体内で引っ掛かり、腸閉塞や粘膜の壊死を引き起こし、死に至ることもあります。
目の前でねこが異物を食べてしまったら、すぐに病院へ連れていきましょう。
ねこの誤飲・誤食とその対策については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
食べてしまった異物により引き起こされる中毒症状も、ねこの突然死(急死)の要因になります。
ねこが中毒を起こす原因としては、以下のような物が挙げられます。
人間の食べ物 | タマネギ、ネギ、ニンニク、ラッキョウ、ニラ、チョコレート、アルコール、ブドウ、アボカドなど |
薬物 | 害虫駆除剤、殺鼠剤、ノミ取り首輪、人用の薬やサプリメント、消毒剤、農薬など |
化学製品 | 塩素系洗剤、研磨剤、化粧品、不凍液、保冷剤など |
植物 | ユリ、スズラン、アジサイ、アサガオなど |
一般的な家にあるものの中にも、ねこが中毒症状を起こすものがあります。ねこが触れないよう注意しましょう。
ねこの中毒については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。
ねこはストレスに弱く、大きなストレスを感じると突然死してしまう場合があります。
また、重大な病状を引き起こす猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)や猫伝染性腹膜炎(FIP)はストレスが引き金になって発症するともいわれています。
特に大きなストレスになるのは自然災害や環境の変化(引越しや新たなねこのお迎えなど)です。
ねこは強いストレスを感じると口を開けてハァハァと早い呼吸になります。かなり危険な状態であるため、静かな場所に連れていき、落ち着かせてあげましょう。
突然死は予測が難しいこともありますが、飼育環境を整え、こまめに健康チェックをすることで、ある程度リスクを下げることができます。
突然死を防ぐ方法を以下にご紹介します。
完全室内飼いにすることで、突然死のリスクを下げられます。
交通事故や屋外にあるものを食べることによる中毒、他のねこと接触することによる感染症を避けられるためです。
ねこが体調を崩した時にすぐ気付ける点も室内飼いのメリットです。
ねこの健康と安全を守るため、室内飼いを徹底しましょう。
病院で健康診断や予防注射を受けることも、突然死を防ぐために有効です。
突然死の原因となるフィラリアは、予防注射や投薬で予防できます。
血液検査やエコー検査、X線検査といった専門的な検査を受けることで、隠れている異常にいち早く気づくことも可能です。
健康診断の頻度は若いねこで年1回、7歳以上のシニアねこで年2回以上が理想です。また、不安な点があればすぐに診察を受けましょう。
ねこの健康を毎日チェックすることも突然死対策になります。ねこが普段とは違う様子を見せていないか、体形や行動に変化はないかこまめに確認しましょう。
特に以下のような症状が出ている場合は獣医師に相談しましょう。
健康的で快適な生活ができるよう、環境を整えることも重要です。
家の中で落下事故や誤飲、中毒にならないよう、危険箇所をチェックしましょう。
また、太り過ぎるとさまざまな病気にかかりやすくなり、突然死のリスクが上がってしまいます。
食事の内容やおやつの頻度に気をつけて、愛猫の体重管理をしましょう。
ストレスも突然死の原因になります。大きな音や嫌な臭い、来客といった不快な感覚や環境の変化はねこにとって大きなストレスになりますので、なるべく取り除くようにしましょう。
ねこの突然死(急死)の要因と対策をご紹介しました。出会った以上、必ず愛猫とのお別れは訪れますが、突然死(急死)は突然であること、飼い主さんが自身を責めることが多いため、特に悲しいお別れになってしまいます。
ねこの突然死を防ぐためには、突然死の要因を知り、適切な対策を行うことが重要です。
飼い主さんが毎日行うべきことは、飼育環境を整えること、そして健康チェックです。
また、特に異常がなくても定期的な健康診断により、専門的な検査を受けることも重要です。
ねこの突然死(急死)を100%防ぐことはできませんが、それでもしっかり対策することでリスクを下げることはできます。かわいいねこと長く一緒に過ごすため、できる限りのことをしてあげましょう。