ねこと一緒に暮らしていると、ねこの豊かな感情の動きに驚かされることがあります。
飼い主にくっついて微笑むように寝ていたり、新聞を読んでいるとやきもちを焼いているかのように割り込んできたり…ねこには人間と同じような感情があるのではないか?と思わずにいられません。
しかし、ねこと人間は脳の発達具合が異なり、抱く感情にも違いがあります。
今回の記事では、ねこの感情をテーマに、人間とねこの脳の構造の違いやねこの感情の表現方法について解説します。
※ねこの感情については不明な点も多く、本記事とは異なる見解もあります。
喜んだり、悲しんだり、怒ったり…ねこにはそのような豊かな感情はあるのでしょうか。まずはねこの脳の構造から、ねこの感情を読み解いていきましょう。
ねこと人間では脳の発達度合いが異なります。
感情に関係するのは、大脳の「大脳新皮質」と「大脳辺縁系」です。
大脳辺縁系の中心には海馬と扁桃核があり、情動や本能行動を司っています。
大脳新皮質は運動の制御のほか、思考や想像、情操といった知的活動を司っています。
人間は大脳新皮質が非常に良く発達していますが、ねこの大脳新皮質はうっすらとしかありません。代わりに大脳辺縁系が良く発達しています。
つまり人間は知性重視、ねこは本能重視というわけです。
先述の通り、ねこの大脳は情動を司る「大脳辺縁系」が良く発達しています。
情動とは、感覚刺激に基づいた本能的で激しい感情のことです。
ねこが持っていると考えられる情動としては、以下のようなものがあります。
怒り、恐怖、不安、楽しい、期待、好奇心、関心、期待、イライラする、眠い、食べたい、獲物を捕まえたい、交尾をしたい、(子ねこの)世話をしたい、好きな相手と離れたくない |
しかし、ねこにあるのは上記の情動だけではありません。意識的な感情は、大脳新皮質の前頭前夜が司っていますが、ねこにもこの前頭前夜がわずかながらあります。
そのため、多少は人間に近い感情があるのではないかとも考えられています。
先ほどご紹介した通り、ねこには情動という、本能的かつ直線的な感情があります。
それでは、代表的な感情と呼ばれる「喜怒哀楽」に関して、ねこの感じ方を見ていきましょう。
ねこが喜怒哀楽を感じる状況や、感じた時の表情や態度をご紹介します。
ねこにとっての喜びとは、「快適で安心できる」、「本能的な欲求が満たされる」ことです。そのため、以下のような状況でねこは喜びを感じると考えられています。
このように、喜びには「アクティブな喜び」と「リラックスしている時の喜び」があります。
狩や遊びで興奮している時は、目が見開かれてキラキラ輝きます。ひげがピンと張ってマズルがふっくら膨らみ、笑っているような表情になります。
お腹がいっぱいで、大好きな飼い主のそばにいるというようなリラックスシーンでは、目を細めてゴロゴロ喉を鳴らし、体の力を抜きます。その表情はまるで優しく微笑んでいるようです。
ねこは単独行動をする動物のため警戒心が非常に強く、不快や危険を感じた時に自分の身を守るために怒ります。
なわばりに他のねこが入って来たり、子ねこが他のねこに襲われそうになったりした時、ねこは怒りの感情を見せます。
耳を大きく後ろにそらせ、目は吊り上がって大きく見開かれ、犬歯をむき出しにして見るからに「怒っている」表情になります。
体やしっぽの毛は逆立ち、「ウーッ」とうなったり、「シャーッ!」と声を出したりします。
ねこには「哀しい」という感情はあまりないと考えられています。哀しみは他者を思って心を痛める気持ちであり、情動というより意識的な感情に近いものだからです。
また、ねこは単独行動をする野生動物であり、哀しみを感じていては生きていけません。
そのため、哀しみの感情がほとんど、もしくはあまりないという説が有力です。
あえて「哀」の感情をねこにあてはめるのであれば、子ねこが親と、飼いねこが飼い主と離れて不安に思う気持ちが哀しみに近いといえるでしょう。
ねこは不安を感じると、耳が横に倒れます。また、緊張や不安を抑えるため、鼻をペロッと舐めることもあるようです。
姿勢としては前足を前に出して座る、いわゆる「スフィンクス座り」や、しっぽを体に巻き付けて座る時は不安を感じているといわれています。
ねこにとっての「楽」は情動の「期待」や「好奇心」に近いものです。狩や遊びをする時、ごはんがもらえそうな時、ねこは「楽」の感情を持つと考えられています。
期待や好奇心を抱いている時のねこは、瞳孔が大きく開かれて黒目がちになります。
耳はおもちゃやごはんの音を聞こうとしてぴくぴく動きます。
また、鼻が赤くなることもありますが、これは心拍数が上がって血流が良くなっているためです。
ねこは基本的に本能による単純な情動で生きています。
しかし、一緒に暮らしていると人間のように複雑な感情があるのでは?と感じることがあります。
失敗して恥ずかしそうにグルーミングしたり、飼い主が泣いていると心配そうに寄り添ったり…果たして、ねこに人間のような複雑な感情はあるのでしょうか。
ジャンプに失敗して落ちてしまったねこが、慌てて体を舐めるところを見たことはあるでしょうか。その様子を見ていると、「恥ずかしがっているのだな」と思うかもしれません。
失敗や怖いことがあった後にねこが毛づくろいをするのは、「転移行動」と呼ばれるもので、ストレス発散のために行っています。
恥ずかしさを感じているというよりは、動揺した心をいったん落ち着けようとする行動であると考えられています。
いたずらをしたねこを叱ると逃げ出し、しばらく近づいてこなかったりします。
しかし、これは反省しているわけではありません。飼い主に怒られて怖い思いをしたので、様子を伺っているだけです。
また、ねこを捕まえてお説教をするとねこは目をそらします。これも反省しているわけではなく、目をそらすことで敵意がないことを表しているだけなのです。
ねこは「悪いことをすると叱られる(嫌なことがある)」ということは理解できますが、反省や後悔の感情はありません。
ねこをしつける時は「ダメ」と声を出したり軽く水をかけたりして、短く分かりやすく、してはダメなことを教えましょう。
そして、しつけが終わったら仲直りしましょう。いつまでも怒っているとねこを不安にさせてしまいます。
ねこにはやきもちの感情があるといわれています。
他のねこや動物をかわいがっていると、愛猫が大きな声で鳴いたり、遠くからじっと見つめてきたりするという経験をしたことがある方もいるのではないでしょうか。
これはやきもちを焼いており、飼い主に自分の存在をアピールしていると考えられています。
ねこのやきもちの対象は同居しているねこや動物、新入りの家族(飼い主の配偶者や赤ちゃん)のほか、新聞やスマホなども挙げられます。
新聞を読んでいると視界を遮るように間に入ってくるのはやきもちを焼いているからかもしれません。
しかし、シンプルに「自分に注目してほしい」という欲求の表れだという説もあり、人間のような嫉妬心を抱いているかどうかは意見が分かれるところです。
飼い主が泣いていると、ねこがそっと近づいてきて、涙をなめてくれる…「心配してくれているんだな」と思うかもしれませんが、実は違うようです。
ねこは変化に敏感な動物です。飼い主が泣いていると近づいてくるのは、様子がいつもと違うため、調べようとしているのです。また、涙をなめるのは興味を持ったため、もしくは水分補給のようです。
ねこは飼い主の様子が普段通りではないことには気づきますが、「悲しんでいる」ということまでは分かりません。
しかし、たとえねこが本当に慰めてくれているのではなくても、そっと寄り添ってくれるだけで心が癒やされますね。
ねこの感情について解説しました。ねこは人間よりも感情を司る脳の部分が発達していないため、高度な感情の機微はないと考えられています。ねこにあるのは本能による「情動」であり、ごく一過性の感情です。
しかし、ねこの情動は非常に豊かです。期待にキラキラ目を輝かせたり、耳を伏せて不安そうな顔をしたり、はっきりとした気持ちを表情に表します。
ねこは気持ちを言葉にできません。ねこの表情や態度を良く見て、ねこが今どんな情動を持っているか読み取り、ねこが安心して快適に過ごせるように気を配ってあげましょう。