動物の知能や性格を図る上で、脳を調べることで多くのことを知ることができます。
ねこに関しても同様です。
脳の構造や大きさを調べていくと納得できることや新たな発見があります。
一緒に生活するにあたって、脳の構造から、ねこに対して行うべきことも見えてきます。
ねこの脳を知ることで、より良好な関係性を築きましょう。
脳の構造は性格に直結していることが多いです。
これはねこに対しても同様で、生活環境から身についた性格と脳の構造が原因の性格があります。
私たち人間も他の動物も、DNAによって脳の構造や働きはある程度決められています。
このことが、動物の基本的な性格を構成するのです。
人間で言えば、保健体育や倫理の授業で出てくる心理学や行動学は脳に由来するものが多いと言えます。
これと同様に、ねこに関しても「新しい場所を好まない」「突発的に行動する」などは脳に由来する部分が大きいのです。
では、ねこの脳は一体どんな特徴を持っているのかをご紹介します。
脳を知るにあたり、最初に注目されるのは脳の大きさです。
人間の脳の容量は他の動物とは大きく異なり、脳が大きく約1,320gほどあります。
体全体の2.1%を占めており、かなり大きいと言えるでしょう。
対してねこの脳は25gほどと言われており、体全体の0.7%ほどの重さです。
非常に軽く感じるかもしれませんが、ねこの頭の大きさを考えてみると意外に大きいのかもしれません。
というのも、ねこより知能が高いと言われている犬を見るとそう感じざるを得ません。
犬の脳は72gで、体全体の0.4%なのです。
ちなみにねずみの脳は体全体の20%もの割合を占めているので、動物によりますが体が小さいほど脳が占める割合が高くなる傾向にあります。
重さだけでは思考までわかることはできません。
そこで、脳の構造に注目してみます。
脳の大きさに関わらず、脳の各部位が占める割合を見ていくと見えてくるものがあります。
ねこの脳の構造は人間に似ている部分が多く、9割ほどが同じであると言えます。
つまり、人間に近い思考回路を持っているということです。
人間と比較すると、大脳皮質と言われる部分が大きいことは共通しています。
これは、感情を司る部位なので、ねこは感情豊かであるということが言えます。
しかしながら、大脳皮質を細かく見ていくと、ねこの大脳新皮質が小さいということがわかっています。
これは、思考や知識、判断能力を司る部位なので、これらは人間よりも能力が低いようです。
もしねこと話せたとしても、感情が大きく思考が低いということなので「今日何したい?」と聞いたときに「わかんない。あ、ごはん食べに行こ!」などと感情に任せた発言が多くなりそうですね。
ねこの脳は感情が占める割合が大きいです。
しかし、人間と大きく異なるのは「喜怒哀楽」ではなく「喜怒愛楽」であると言えるようです。
自然界の動物を見ても、悲しむという「哀の」感情はあまり見られません。
落ち込んでいては自然界で生きていけないという根本的な原因があります。
それと変わり、ねこは愛情という感情が強いです。
自分の子どもに対してもそうですし、一緒に暮らす私たちに対しても愛情が強いです。
愛情が強い故に、嫉妬も大きい生き物であることは忘れてはいけません。
多頭飼いの場合、片方をかまっていると嫉妬深く見てきたり、スマホばかりいじっていると邪魔をしてくることがあると思います。
「自分を見てほしい」という気持ちが強いために起こる行動です。
嫉妬はストレスにも変わるため、気をつけなければいけません。
ねこと暮らしていると、ねこと会話できたらどんなに楽しいかと一度は思ったことがあると思います。
残念ながらねこは私たちが話す言葉を全て理解し、さらに話すことはできませんが一部を理解することは可能です。
では、ねこはどれくらいの知能があるのかに注目してみましょう。
知能を理解することによって、より楽しくねこと生活できるようになること間違いなしです。
ねこの知能は人間で言う2歳程度と言われています。
犬は3歳程度ですので、比較してみると少し劣るようです。
しかし、人間の2歳児をイメージしてみると様々なことが見えてきます。
難しい内容を理解することはできませんが、ある程度こちらの言っている単語は理解できます。
ねこに話しかけている方も多くいらっしゃいます。
ねこと一緒に暮らしていない人からすると不思議に思われてしまい、話しかけることが恥ずかしくなる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、ねこに話しかけることでコミュニケーションは取れるのです。
積極的にねこには話しかけましょう。
ねこも具体的な話まで理解できませんが、「自分に注目してくれている」「何か話してくれている」「この言葉を聞いたときは遊んでくれるときだ!」ななど、理解することは可能です。
ねこはある程度の単語を覚えることができます。
家のどこかに隠れていても、「ごはんだよ!」と声をかけると飛んでくるのはこのためです。
ねこの聴覚は音の違い、聞き分けができるため、その音を脳に止めておくことで反応できるのです。
中でもねこが最も覚えている単語は自分の名前です。
これは実験結果でも明らかになっており、自分が呼ばれたことには最も強く反応します。
名前を呼ぶことは注目しているサインなので良いのですが、呼ぶ際にはポジティブなことで呼びましょう。
ねこは音の特徴で単語を覚えるため、ネガティブな場面で名前を呼んでしまうと嫌なイメージがついてしまいます。
多くのねこは、環境の変化を嫌います。
これは、ねこの前頭葉が小さいことから起こる自然発生的なことなのです。
前頭葉は計画を立てるなどの思考を行う際に強く働きます。
脳の前方にある器官ですが、小さい面積を「猫の額」と表現されるほど、ねこの頭の前方は小さいです。
前頭葉も小さいため、物事の順序立て、計画立てが苦手なのです。
環境が変わると、1日の生活ルーティーンに新しいことが入るため、計画が必要になり疲れてしまいます。
また、警戒心の強さも先を考えるよりも常に警戒しながら生きていた方が楽であるという選択から生まれたものです。
常に同じ生活パターンであれば新たに考えることもないので、ストレスフリーで生活できるということですね。
ねこの記憶力についてはどれくらいあるのでしょうか。
先ほどご紹介した大脳新皮質は記憶力も司っています。
ここから言えることは、どちらかと言えばねこは覚えることが苦手であると言えます。
しかし、人間よりも優れた能力を発揮する面もあるのです。
人が「覚える」という行為を指すものは長期記憶と言われるものです。
脳は起きている現象を全て覚えていると数秒で容量オーバーになってしまうので、必要がないと判断したものを次々と忘れていきます。
そのなかで、必要であると判断されたものは大脳新皮質で長期記憶として格納されます。
ねこは長期記憶には弱いですが、短期記憶だけなら人間の20倍の能力を発揮するのです。
短期記憶とは、電話をかける際などに使用します。
電話番号を見てダイヤルを押しますが、押した側から番号を忘れてしまっているのは、短期記憶に格納された後、長期記憶にしなくて良いと判断されて忘れてしまうのです。
人間の場合、長くても30秒程度しか短期記憶は持ちませんが、ねこは10分程度短期記憶が持ちます。
もしねこが驚いて逃げてしまった場合なども、落ち着くまでに最低でも10分程度はそっとしておく必要があります。
鮮明に恐怖を覚えているので、すぐに出てこなくても自分を落ち着かせている時間だと思いましょう。
どの動物にも言えることですが、生きるためのことは長期記憶として覚えており忘れません。
例えば、ある道を通ると天敵がいるということをうっかり忘れて通ってしまっては食べられてしまうからです。
このため、恐怖心を覚えたことは忘れないということも覚えておかなくてはいけません。
ねこが悪いことをした際に、大きな声で叱ると怖いイメージを持たれてしまい、いつまでもそれが抜けない可能性があります。
恐怖心だけではなく、ねこの身の回りの世話を行うということも生きるために必要なことなのでねこは覚えています。
怖いイメージで覚えられるのではなく、優しいイメージでねこに覚えてもらうことで良好な関係を築けるのです。
私たち人間に関する脳のことでも、まだまだ新たな発見はたくさんあります。
ねこに関することであれば、まだわからないことがたくさんあるため謎の多い事柄ではあります。
しかし、現在わかっていることを理解した上でねこに接することで、より良好な関係が築けることは間違いないことです。
ねこの脳を理解し、幸せなねことの暮らしを手に入れましょう。