空に輝く星や天体は、とてもきれいでロマンチックです。しかも、その中にはねこに関係する名前のついたものも、実はたくさんあります。また、地球から飛び出し、宇宙を眺めた「宇宙飛行士ねこ」も存在します。今回の記事では、ねこの名前がついた星座や天体、また宇宙に行ったねこ「フェリセット」をご紹介します。
星座は88個ありますが、そのうちねこ科の動物が描かれているのは「やまねこ座」、「しし座」、「こじし座」の3つです。また、現存していない星座として、そのものズバリの「ねこ座」もあります。ねこに関係するこれら4つの星座について解説します。
やまねこ座は冬の終わりから春の初めにかけて天頂付近で見られる星座です。星座の中では比較的歴史が浅く、17世紀にポーランドの天文学者であるヘベリウスによって作られました。一番明るい星でも3等星と決して明るくはなく、そこから北に向けて4~5等星を根気強くつないでやっと見つけられる星座です。そのため、生みの親であるヘベリウスさえも「見つけるには山猫のような(鋭い)目が必要だろう」と言ったと語られています。
しし座は星占いの星座のひとつで、春の星座の王者でもあります。4月頃、南の空に見られる「ししのおおがま」と呼ばれる?マークをひっくり返したような星の並びが、ししの頭と胸に当たります。胸の星は1等星で「レグルス(小さな王)」という名がつけられています。
しっぽの星は「デネボラ(ししのしっぽ)」という2等星で、春の大三角の星のひとつです。
星を線で結ぶと、西の空を向いて飛び跳ねていくようなリアルなライオンの姿が浮かび上がります。
ギリシャ神話においては、ネメアの森に住む人食いライオンが英雄ヘラクレスに倒されて星座になったと語られています。
しし座のすぐ上にある小さなひし形が目印になる星座です。一番明るい星でも4等星と非常に暗く、街中で探すのは困難です。なお、「子獅子座」ではなく、「小獅子座」です。その証拠に、星座絵は立派なたてがみが生えたライオンの姿になっています。
ライオンや山猫ではなく、本当にペットとして飼われている「ねこ」が星座になっていた時代もありました。それは18世紀のこと、フランスの天文学者ラランドによって「ねこ座」が作られたのです。ラランドは大のねこ好きで、自分の飼いねこを星座にしてしまったのです。
しかし、やはり自分勝手に作った星座だからか、ねこ座は廃れてしまい、現在の88星座の中に残ることはできませんでした。
続いて、ねこの名前のついた星や星団、銀河などをご紹介します。
明るい星の中には和名(日本固有の名前)を持つものも多く見られます。
冬になると空高い位置に上る「ふたご座」の1等星ポルックスと、2等星カストルは対になり「ねこの目星」と呼ばれます。ポルックスは金色、カストルは銀色のため、オッドアイのねこということになりますね。
また、「さそり座」にもねこの目星があります。さそり座は、ふたご座とは逆に真夏の空低い位置に見られる星座で、真っ赤な1等星アンタレスを中心としたS字カーブが目を引きます。
ねこの目星と呼ばれるのは、尾に近い場所にあるλ(ラムダ)星とυ(ウプシロン)星です。λ星は2等星、υ星は3等星で、ごく近い場所に寄り添うように並んでいます。この2つの星は、宮沢賢治の著作「ふたごの星」では、主人公のチュンセ童子とポウセ童子が住むお宮として登場します。作中で「すぎなの胞子」と形容されるかわいい並びの星は、本当に子ねこの目のようですね。
この素敵な名前の星雲は、北の空にある「りゅう座」の方角3600年先にある惑星状星雲です。惑星状星雲とは、一生の最後を迎えた星が吐き出したガスが、中心に残った星の残骸が放つ光に照らされて光っている天体です。惑星状星雲はそれぞれ形が異なっており非常に個性的ですが、キャッツアイ星雲はその中でも特に複雑な構造をしていることで有名です。目のような形をした内部を、多重のリングが取り巻いたような神秘的な形をしています。
一説には、中心の星が連星(複数の星が共通重心を回っている天体)であることから、互いの重力による影響を受けてこのような複雑な構造になったと考えられていますが、はっきりしたことは分かっていません。
まさにねこの目のように、美しくミステリアスな天体です。
ねこの手星雲は、夏の星座である「さそり座」の方向約5500光年先にある散光星雲です。散光星雲はガスやちりが濃く集まっており、大量の星が生まれる「星のゆりかご」とでもいうべき天体です。ねこの手星雲はその中でも特に星形成が活発で、星雲の中では太陽の10倍ほどの質量を持つ大きな星が数万個程度生まれていると考えられています。
丸い星雲がポツポツ並ぶその様子は本当にねこの肉球のよう。そしてそのかわいい肉球に包まれて、星の赤ちゃんたちが生まれているのです。
チェシャ猫銀河群は、春の星座「おおぐま座」の方向約46億年先にある銀河群(銀河のグループ)です。2つの楕円銀河が丸い光に囲まれており、「不思議の国のアリス」に登場するにやりと笑う猫「チェシャ猫」に様子が似ていることからつけられた愛称です。
この丸い光は、遠くにある銀河の像が宇宙の「重力レンズ効果」によって曲げられたものです。
地球からはるか遠い場所に、宇宙の神秘が作り出したねこの笑顔があると思うと、なんだか楽しくなりますね。
宇宙に行った動物として有名なのは、「ライカ」という白黒の犬です。しかし、宇宙に行ったねこがいることはあまり知られていません。
そのねこの名前はフェリセット。白黒ハチワレのメスねこで、1960年代のパリにて野良猫生活をしていました。しかし、当時フランスで行われた実験のため、研究所につれてこられたのです。
その実験とは、無重力の宇宙空間でねこの前庭装置(バランスを保つ器官)がどのように反応するかを調べるというものでした。フェリセットを含め14匹のねこが集められ、宇宙に行くための厳しいトレーニングが行われました。
最終的にフェリセットが選ばれたのは、体重が軽かったことに加え、落ち着いた性格であったためでした。
1963年10月18日、フェリセットはロケットに乗せられ、高度157kmの宇宙空間を体験。5分程度宇宙空間に滞在した後、無事地球に帰還しました。窓もない小さなカプセルの中で、フェリセットはとても落ち着いていたということです。
しかし、フェリセットを待ち受けていたのはあまりに過酷な運命でした。地球帰還から3ヶ月後、脳の解剖調査のためにフェリセットは安楽死させられてしまったのです。
しかし、この解剖からは有益な結果が得られず、同様の実験は行われませんでした。
フェリセットは宇宙に行った唯一のねこですが、その存在は時代の中に埋もれていきました。しかし、フェリセットの熱狂的なファンであるマシュー・セルズ・ガイがクラウドファンディングを行い、得られた資金で2019年にストラスブールにフェリセットの銅像が立てられました。
地球に腰を下ろし、宇宙を見上げるフェリセットの銅像は、彼女の功績をあますことなく後世に伝える存在になることでしょう。
ねこにまつわる星座や天体、宇宙に行ったねこについてご紹介しました。ねこは家の中でのんびりしているだけではなく、実は空や宇宙を元気よく駆け回っています。この広い宇宙にも、かわいいねこがたくさんいる…そう思うと、いつもの星空がより楽しく、親しみ深いものに思えてきます。空が晴れた晩には星を見上げて、「宇宙のねこ」を感じてみてください。