日本にはたくさんの小さな島々が点在します。
その中で、島の住民よりも多くの猫が住民と一緒に暮らしているような小島が、猫島と呼ばれて観光地になっています。
猫島が、島を訪れる観光客の注目を集めるようになったのは島で暮らすねこの存在でしょう。
そんなねこたちに、いつでも身近に触れ合うことができるのが、何と言っても猫島の魅力です。
ここでは、日本各地に見られる猫島の紹介と併せて、いま猫島の抱える問題点なども解説します。
猫島は、ねこの存在によって特徴づけられる島の通称です。
日本各地に猫島は点在していますが、決して無人島ではありません。
猫島の多くは、島で暮らす住民よりもねこの数のほうが、多い島としてよく知られています。
日本の島の中では、愛媛県の青島や宮城県の田代島などが「猫島」として有名です。
猫島のブームの火付け役となったのは、何と言っても宮城県の田代島でしょう。
周囲は11.5キロメートル、面積は2.92平方キロメートルという小さな島です。
島では、古くから漁業が盛んで、多くの釣り人フアンも訪れるような所でした。
それが、たくさんの野良猫が暮らす島として話題になり、観光客からもねこと触れ合うことのできる「癒し系の島」として近年、人気が出てくるようになりました。
島の人口の何十倍ものねこが暮らす島として有名なのは、瀬戸内海に浮かぶ愛媛県の青島です。
島の周囲は、4.2キロメートル、面積は0.42平方キロメートルと、猫島として有名な田代島よりもさらに小さい島です。
昔から漁業が中心の島でしたが、過疎化が進み2019年には、島民が3世帯6人まで急減しました。
しかし、この島には推定100匹以上のねこが暮らしており、田代島と同じように猫島としてメディアに取り上げられるようになってからは人気に拍車がかかりました。
猫島はもともとねこが多く住んでいたわけではありません。
野生のねことも違います。
猫島にねこが多く住むようになったのは、島にいたネズミやイタチなどの害獣やヘビなどを駆除するために島外から人間が持ち込んだと言う説が有力です。
そして、今では、持ち込まれたねこの生き残りが、自然に繁殖したために島に、ねこが多く住むようになったようです。
島にはねこの天敵となるような生き物が生息していなかったことも、ねこが増えてしまった大きな理由でしょう。
猫島がねこにとって楽園なのかについては疑問です。
猫島がねこの楽園と言われるようになったのは、メディアの影響が大きいのではないでしょうか。
人間のエゴによって、猫島がねこの楽園と呼ばれるようになってしまったような気がしてなりません。
猫島の魅力は、何と言っても島に住み着いたねことの触れ合いではないでしょうか。
カメラやスマホでねこの写真を撮影したり、ねこのからだに手でやさしく触れてその感触を確かめられるのはなかなかできるものではありません。
かわいいねこに対面したら、持ってきたフードやおやつを思わずあげたくなるのも頷けます。
こんな体験ができるのは、猫カフェなど特別な場所を除いて日常では滅多にないでしょう。
まさしく、猫島は観光客にとっては癒しの場なのです。
ねこの視線から猫島を見てみたらどうでしょう。
本当にねこにとってメディアが推奨するように楽園なのでしょうか。
確かに、観光客が訪れて、フードやおやつをもらえたらねこはうれしいでしょう。
しかし、栄養価を無視したフードやおやつの与え過ぎは、ねこにとっては必要以上のカロリーを摂取することにつながり、病気になるリスクも高まります。
ねこにとって一番の問題は、多くの観光客が島を訪れて、常に観察の対象になっていることへのストレスの高まりでしょう。
これでは、島でのんびりと暮らしたいねこにとっては、楽園とは言えません。
猫島では、これまでねこと住民による共存共栄が当たり前でした。
住民は島のねこをかわいがり、魚などの餌を与えてずっとねこを守り続けてきました。
そんな中、猫島がメディアで取り上げられるようになると、急に観光客が訪れるようになりこれまでにない賑わいを見せるようになったのです。
猫島のように小さな過疎の島に、観光客が増えて活性化するのはいいことだと思うかもしれませんが、ねこを見たさに島を訪れる観光客のすべてが、マナーを守っているわけではありません。
発見したねこの写真を撮影するために私有地へと不法侵入をしたり、ゴミのポイ捨て、ねこへの過剰なエサやりなど、観光客に不満を持っている島の住民も少なくないのです。
ねこと島の住民の静かな暮らしが、多くの観光客の訪問でかき乱されていることとなれば本末転倒でしょう。
私たちは現実に猫島を訪れる以外は、メディアの伝える報道でしか猫島について知ることはできません。
それも、猫島はねこ好きにとっては、まるで楽園という切り取られた情報でしかないのです。
猫島が本当にねこにとって、あるいは島の住民にとっても楽園といえるのか、その生のままの現状を知ることは癒し系の島であること以上に大切でしょう
猫島と言われる小さな島の中で、今、一番の深刻な問題は、野良猫などの予想をしないような増えすぎです。
これは、島の住民にとっても深刻な問題酢でしょう。
これといった外敵もいなくて、避妊手術や去勢手術を施していないねこは、まるでネズミ算のように次から次へと増えていきます。
病気やケガがもとで淘汰されていくねこも多くいますが、それでも、その増え方は尋常ではないでしょう。
また、悲しいことに近親交配による障害をもって産まれてくるねこも多いと聞いています。
さきほども紹介しましたように、愛媛県の青島では、島で暮らす住民が激減して、これ以上、島の住民だけではねこの面倒を見られなくなったところも出て来て社会問題になったこともあります。
その他の猫島でも、これから過疎化が急激に進めば同じような環境に陥ることでしょう。
愛媛県の青島のように住民の数が減りつづけ、ねこだけが増えすぎてしまったら島に残ったねこは、だれが面倒を見ることになるのでしょうか。
これは、もう、少ない島の住民だけではどうすることもできません。
現状では、行政に頼るしかないでしょう。
行政が指導して、これ以上、島のねこの数が増えないように避妊手術や去勢手術を推進させるのも一つの方法です。
民間でも、野良猫の保護や譲渡会を開催する支援団体が多く存在しています。
また、ねこの避妊手術や去勢手術の費用を捻出するために寄付金を募るなどの活動をしているところもあります。
行政だけでは、どうしょうもないこともあります。
民間をできるだけ活用し行政への負担や島の住民の負担を軽くするような、ねこを増やさない活動の輪を広げていくことは必要でしょう。
また、観光客の中にも本当の愛猫家も多いでしょう。きっと里親になっていいと思っている観光客もいるかもしれません。
猫島は、島を訪れる観光客にとっては、唯一、自然にねことの触れ合うことのできる癒し系の島かもしれません。
しかし、残念ながら日本の中にあるすべての猫島が、そうだとは言えないのです。。
僻地で過疎化の進んでいる猫島もあります。そういう島では猫が増えすぎて島の住民だけではとても面倒を見切れないと言うところもあるでしょう。
過疎化が進み、島から住民がいなくなった後、取り残されたねこたちはいったいどうなるのでしょう。
もっと、みんなで一緒になって、真剣に考えなければならない大切な問題です。