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ねこの病気
ねこの腫瘍の80%はがん。猫のがんの症状や治療法を学ぼう

ねこの腫瘍の80%はがん。猫のがんの症状や治療法を学ぼう

ねこに腫瘍ができていたら、80%の確率でがんであるといわれています。愛猫をがんから守るためにはどうすれば良いのでしょうか。

また、もし愛猫ががんになってしまったらどのような治療の手段があるのでしょうか。

今回の記事はねこの腫瘍とがんがテーマです。ねこに多いがんの種類や、がんになった場合の治療やかかる費用、ねこをがんから守る方法をご紹介しましょう。

もくじ

1.腫瘍の種類と特徴
∟1-1.良性の腫瘍
∟1-2.悪性の腫瘍
2.ねこのがんの検査と治療
∟2-1.検査方法
∟2-2.治療方法
3.ねこをがんから守るために飼い主ができること
∟3-1.ねこの健康状態をチェックする
∟3-2.ワクチン接種や避妊手術を受けさせる
∟3-3.飼育環境を整える
∟3-4.治療法をしっかり考える
まとめ

1.腫瘍の種類と特徴

ねこの腫瘍には大きく分けて「良性腫瘍」と「悪性腫瘍」があります。良性腫瘍は悪性と比較すると成長が遅く、転移をしないのが特徴です。

一方、悪性腫瘍(がん)は成長が早く、周りの組織を巻き込むようにして広がり(浸潤)、原発部位から他の部位へ転移します。

ねこの場合良性の腫瘍は少なく、80%が悪性腫瘍だといわれています。ねこに良く見られる「良性腫瘍」と「悪性腫瘍」の種類と特徴について解説します。


1-1.良性の腫瘍

ねこの良性腫瘍として多いのは「脂肪腫」です。脂肪組織にできる腫瘍で、胸、お腹、足、脇を中心に、ほぼ全ての部位で発生します。触ると柔らかく、悪性の腫瘍と比較すると成長が遅いのが特徴です。基本的には経過観察のみで手術の必要はありませんが、脂肪腫があることで歩きにくくなっているなど生活に支障がある場合は切除手術を行う場合があります。

他にも、頻度は高くありませんが体にいぼのようなものができる「乳頭腫」や皮膚にできものやかゆみが生じる「肉芽腫」などもねこがかかる良性腫瘍として知られています。いずれも皮膚の表面や皮膚の直下にできることが多いために、発見しやすい病気です。


1-2.悪性の腫瘍

ねこの腫瘍な悪性腫瘍としては、

  • 【1】リンパ腫
  • 【2】扁平上皮がん
  • 【3】乳腺腫瘍(乳がん)

が挙げられます。それぞれの特徴を詳しくご紹介しましょう。

【1】リンパ腫

リンパ腫は、ねこのがんの中で最も多いといわれています。免疫を担当している細胞であるリンパ球ががん化して生じるもので、体のあらゆる部位で発生します。発生した部位により症状は異なり、消化管であれば食欲不振や下痢、嘔吐、肺であれば呼吸困難などが見られます。リンパ節が腫れることから、顎の下や胸の前、わきの下、鼠径部、ひざの裏などにコリッとしたできものができることがあります。

無治療の場合平均余命は1~2ヶ月、治療を行った場合は6~9ヶ月程度です。

リンパ腫は猫白血病ウイルス(FeLV)感染と関連があるといわれています。FeLVがリンパ腫の発生要因とも考えられており、また感染しているとリンパ腫の治療効果が薄い傾向にあります。

【2】扁平上皮がん

扁平上皮がんは鼻や耳先、口腔内を中心に、体全体に発生する皮膚がんの一種です。紫外線により発生率が上がると考えられており、特に白い毛のねこに起こりやすい病気です。特に口内にできたものは悪性度が高く、皮膚のただれや盛り上がりが見られます。時に破裂して出血したり、骨まで浸潤したりすることもあり、強い痛みを伴います。頻度は高くありませんが、リンパ節や肺に転移するケースもあるようです。部位によっては外科切除が可能ですが、切除が困難な場合は予後が悪く、平均余命は3ヶ月程度であるといわれています。

【3】乳腺腫瘍(乳がん)

乳腺腫瘍はねこの場合85%ががんであるといわれています(犬は50%)。乳首の近くに硬いしこりができ、進行すると大きくなって破れ、出血を伴うこともあります。リンパ管やリンパ節に浸潤する確率も高く、治療のために乳腺やその周囲のリンパ節を切除しなければならないケースも少なくありません。

平均余命は腫瘍の大きさや転移の有無によって異なりますが、重篤な場合は数ヶ月~半年程度で死に至る恐れもあります。

特に避妊手術をしていないメスねこに多く見られることから、ホルモンが関係していると考えられています。1歳未満で避妊手術を行った場合、約9割発生確率を下げることができます。


 

2.ねこの腫瘍の検査と治療

ねこの腫瘍はかなり高い確率で悪性腫瘍ですが、もちろん中には良性の腫瘍もあります。悪性腫瘍と断定するためにはどのような検査をすれば良いでしょうか。また、がんだと分かった場合はどのような治療を行うのでしょうか。


2-1.検査方法

ねこの体に腫瘍が見つかった場合は、まず触診をします。悪性が疑われる場合は細胞を採取してがん細胞かどうかを調べる「細胞診」を行い、結果に応じてX線や超音波検査、CT、MRIによって腫瘍の大きさや転移の有無を把握します。


2-2.治療方法

検査の結果、悪性腫瘍と分かった場合は以下のような治療を行います。

  • 【1】外科手術:腫瘍や周囲の組織の切除
  • 【2】化学療法:抗がん剤の投与
  • 【3】放射線治療:がんの部分に放射線を当て、がん細胞にダメージを与える
  • 【4】免疫治療:血液を採取して細胞を培養し、再び体内に戻してがんを攻撃する細胞を増やす

3.ねこをがんから守るために飼い主ができること

ねこの腫瘍はほぼがんであり、予後が悪いものもあることから予防や早期発見、早期治療が非常に重要です。以下のような対策を行い、ねこを腫瘍やがんから守りましょう。


3-1.ねこの健康状態をチェックする

がんに限らず、さまざまな病気や体の不調からねこを守るためには、毎日のチェックが重要です。ねこの様子を良く観察し、以下のような症状があれば動物病院に相談しましょう。

  • ・咳や鼻水、鼻血が出ている
  • ・元気がなく、体重が減ってきた
  • ・嘔吐や下痢、便秘、血尿が見られる
  • ・ケガがなかなか治らない

それに加え、ブラッシングや歯磨きといった日常のケアをしながら、体や口の中をチェックしましょう。体にしこりや腫れがあったり、口内が荒れていたりする場合はがんの恐れがあります。


3-2.ワクチン接種や避妊手術を受けさせる

ねこのがんの中で最も多いといわれているリンパ腫は、猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスの感染によりリスクが大きくなります。これらのウイルスは一般的なワクチンで感染予防できますので、定期的にワクチン接種を受けさせましょう。

また、メスねこの乳腺腫瘍は、避妊手術をすることで発生する確率を大きく下げることができます。子宮蓄膿症や子宮内膜炎など、生殖器関連の病気に感染するリスクをなくすことにもつながります。繁殖を考えていない場合は、最初の発情前に避妊手術を受けさせましょう。


3-3.飼育環境を整える

がんに限らず、ねこの健康を保つためには飼育環境を整えることが重要です。ストレスにより免疫力が下がると、病気にかかりやすくなるためです。

また、特にがんの原因になると考えられているタバコ(受動喫煙)や肥満も、飼い主の努力次第で防ぐことができます。ねこのいる部屋でタバコを吸わない、おやつをあげ過ぎないようにするなど、ねこが健康に、快適に暮らせるよう気を配りましょう。


3-4.治療法をしっかり考える

もしも愛猫ががんになってしまったら、「飼い方が悪かったのではないか…」と自分を責めてしまうかもしれません。しかし、どれだけ気をつけていても病気のリスクを0にすることはできません。自分を責めたり落ち込んだりするよりも、愛猫のために何ができるか、前向きに考えることが重要です。

特にがんの治療は苦痛を伴うもの、治療費が高額になるものもあります。病気を治すために徹底的に治療をするのか、苦痛のみ取り除いて自然に任せるのか、治療方針を決める必要があります。判断が難しい場合は、獣医師や家族、信頼できる人に相談しながら、愛猫にとって、また飼い主にとって最も良い方法を見つけましょう。

まとめ

ねこの腫瘍のほとんどは悪性腫瘍です。そのため腫瘍が見つかった時点で、すでにがんになっており、重篤な状態に陥っている場合も少なくありません。ねこをがんから守るためには、食欲や元気の有無といった健康状態だけではなく、日常のお世話やスキンシップなどで、体にしこりやただれがないかをチェックしましょう。また、ワクチン接種や定期検診など、動物病院で専門的なケアをしてもらうことも重要です。

また、愛猫の体に腫瘍を発見した場合は、すぐに病院へ連れて行って診察を受けましょう。がんだと判明した場合でも、早期に治療を始めることができれば、生存率はぐんと上がります。

腫瘍やがんをただ怖がるのではなく、正しく知り、愛猫の健康や快適な生活を守ってあげましょう。


   
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