ねこが口を開けてタラーッとよだれをたらしている…一見ユーモラスに見えますが、実はストレスや病気が原因になっている恐れもあります。
ねこは体の不調を隠す習性があります。よだれの色やにおい、他に異常はないかをチェックして、いち早く病気を見つけることで、愛猫の健康を守ってあげましょう。
今回の記事では、ねこがよだれをたらす理由や、要注意のよだれを見分ける方法をご紹介します。
ねこは犬とは異なり、よだれをあまりたらしません。そんなねこがよだれをたらしている時は何らかのストレスや病気を抱えていることがあるため、注意が必要です。
まずは、ねこがよだれをたらす主な理由を押さえておきましょう。
ねこはよだれをあまりたらしませんが、人間と同じように空腹の時や気が抜けている時によだれを出すことがあります。
このようなよだれは一過性のことが多いです。心配はいりませんが、ストレスを感じているようであればケアをしてあげましょう。
【1】おなかが空いている
ごはん時にねこがよだれをたらしているのは、おなかが空いているからかもしれません。
よだれ(唾液)は消化液の一種です。これからごはんを食べて消化をする準備として、唾液の量が増え、口からたれる場合があります。
また、好物を目にした際も唾液の分泌量が増え、よだれをたらすことがあります。
この場合のよだれは「ごはんを早く食べたい!」というねこからのかわいいメッセージです。病気ではありませんので、心配しなくても大丈夫です。
【2】リラックスしている
飼い主さんに甘えている時やのんびり寝そべっている時によだれをたらすこともあります。これは副交感神経が優位になり、唾液の分泌が活発化するためです。
リラックスしているときのよだれは粘り気がなくサラサラしていて、無色透明です。病気の心配はありません。
【3】興奮している
ねこは興奮している時や緊張している時もよだれをたらします。この場合は交感神経が優位になり、唾液内のたんぱく質が増えることからネバネバしたよだれになります。
健康なねこで、よだれがすぐ止まるのであれば心配はいりません。
しかし、過度なストレスが続くと膀胱炎や胃腸炎といった病気になってしまう場合があります。
ねこにとって大きなストレスになるのは環境の変化と五感への強い刺激(大きな音や強いにおいなど)です。ストレスの原因を取り除き、ねこが安心して過ごせるようにしてあげましょう。
【4】車酔い
車に酔った時によだれをたらすねこもいます。さらには口を開けて荒く呼吸したり、嘔吐したりする場合もあります。
車内の温度や換気、においに気をつけることで、車酔いの症状を和らげることができます。
振動の少ない安全運転を行い、こまめに休憩することも重要です。
ねこの車酔いの対策については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
【5】歯の生え変わり
歯の生え変わりの時期に、乳歯が抜けた際によだれをたらすことがあります。時には血が混じることもありますが、すぐに出血が止まり、元気で食欲もある場合は大きな心配はいりません。様子を見てあげましょう。
辛いものや苦いものを食べた際、よだれをたらすこともあります。口の中の刺激や不快感をやわらげるためによだれが増えているのです。苦い薬を飲んだ時によだれが増えるのも同じ理由です。
ねこの体に安全なものであれば、よだれが出ても心配ありません。水やフードをあげて、不快感を取りのぞいてあげましょう。
しかし、洗剤やタマネギ、ユリの葉や花など、ねこの体に有害なものを食べてしまった場合は、すぐに獣医師の診断を受けましょう。
口内のケガによりよだれが増える場合もあります。
ケガの原因は交通事故や落下事故などです。事故のため顎の骨が骨折したり、神経が傷ついたりすると痛みや顔面のまひが生じ、よだれをたらすことがあります。
また、電源ケーブルを噛んで感電し、口の中にやけどを負うケースもあります。見た目では分かりづらく、気づくのが遅れるケースもあるため注意が必要です。
また、歯や上あごに物が挟まっている時もよだれを垂らします。そのまま挟まっているものを飲み込み、窒息してしまう危険性があります。
健康なねこが急によだれをたらし、頭を振ったり口に手を入れるようなしぐさを見せたりしたら、すぐに口の中を調べましょう。
病気によってよだれをたらしているケースもあります。多くの場合口腔内トラブルが原因ですが、中毒や熱中症、脳腫瘍など重篤な病気が隠れている危険性があります。
よだれの原因となる病気は、大きく分けて以下の5種類です。
それぞれの病気について以下に詳しくご紹介します。
ねこのよだれの多くは口腔内のトラブルが原因となっています。特に頻発するのが歯周病、歯肉炎、口内炎です。また、深刻なケースとして口内の悪性腫瘍が挙げられます。
ねこの口腔内のがんとして良く見られるものが「扁平上皮がん」、「線維肉腫」です。いずれも10歳以上のシニアねこに多く見られ、全身に転移するケースもある恐ろしい病気です。
口腔内にトラブルがある場合、よだれが異常に臭くなり、血が混じることもあります。口の中が痛いため食事をしなくなる場合もあります。
ねこの口腔内トラブルについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。
農薬や洗剤などの有毒な物質を誤飲してしまうと、中毒症状を引き起こし、よだれやけいれん、呼吸困難を起こします。
また、ネギ類やチョコレート、ユリなどもねこにとっては毒性があります。ねこにとって危険な化学製品や食べ物について知り、ねこの手の届く場所に置かないようにすることで、ねこを中毒から守れます。
ねこは汗をかかないため、熱中症になりやすい動物です。重度の熱中症になると脱水症状が起こり、ぐったりしてよだれをたらすことがあります。すぐに
ねこにとって有毒なものについて知りたい方は、以下の記事も併せてお読みください。
消化器に異常があることでよだれの分泌が増えている場合もあります。具体的な疾患としては以下のようなものが挙げられます。
【1】食道炎
嘔吐を繰り返すことで逆流した胃酸により食道がただれる病気です。ねこの場合は、頻繁な毛玉の吐き戻しが原因で食道炎になることもあります。嘔吐やげっぷを繰り返している場合は、食道炎を疑いましょう。
【2】腎臓病・腎不全
ねこは腎臓の病気になりやすい動物です。腎臓病が進行すると尿毒症を引き起こし、神経症状や嘔吐、大量のよだれといった症状が見られることがあります。この場合のよだれはすっぱい臭いやアンモニア臭のような独特の臭いがするのが特徴です。
神経系の疾患がよだれの原因になっているケースもあります。特に多いのがてんかんや脳障害です。
てんかんは脳の機能に異常が生じる病気です。よだれのほかには体が硬直し、足をバタバタさせたり、顎をかみしめたりする症状が見られます。
また、脳障害により脳の神経に異常が起こると、顔面が麻痺してものを飲み込めなくなり、よだれをたらす場合があります。
ねこがよだれをたらしていると、「病気かな?」と心配になります。しかし、先ほどお話したとおり、心配のないよだれもあります。
ねこのよだれが生理的なものか、体の不調によるものなのかを判断するポイントを以下にご紹介します。
まずはよだれの状態を確認しましょう。無色透明でサラサラしており、強いにおいがないのであれば、病気である可能性は低いといえます。
しかし、以下のようなよだれの場合は注意が必要です。
よだれの特徴 | 考えられる病気・体の異常 |
ねばねばしている | 興奮、緊張、ストレス |
泡が混じっている | 中毒 |
血が混じっている | 口内の傷や腫瘍からの出血 |
緑や黄色などの色がついている
(膿が混じっている) |
歯の破損
口内炎 |
悪臭がする
(生臭い臭い) |
歯周病
口内炎 口腔内腫瘍 |
悪臭がする
(アンモニア臭) |
腎不全
尿毒症 |
大量のよだれが出続ける | 口腔内のケガや中毒、慢性的な病気 |
よだれと併せて、以下のような症状がある時も注意が必要です。
ねこのよだれの原因や、よだれをたらしたときにチェックすべきポイントについて解説しました。
お腹がすいた時や甘えたい時のよだれは問題ありませんが、けがや病気、ストレスによりよだれをたらしている時は要注意です。よだれの状態や他に異常はないかをチェックし、症状が深刻な場合は獣医師に相談しましょう。
苦痛を隠す習性のあるねこにとって、よだれは体内からの大切なメッセージです。ねこのよだれをよく観察して、愛猫の健康と快適な生活を守ってあげましょう。