
ねこを飼うといずれはおとずれる別れの時。悲しみのあまり、ペットロスになってしまう人もいます。愛する存在を失ったのですから、悲しむのは当然のことですが、夜眠れない、外出ができないなど日常生活に支障が出てしまう場合もあります。
今回の記事では、ペットロスで起こる主な体や心の変化、ペットロスからの立ち直り方を、体験談を交えてご紹介します。

ペットロスとは、愛するペットを失ったことの苦痛や悲しみ、心身の不調や変化を指します。
ペットロスはあくまで「ペットを失なった悲嘆とそのプロセス」のことで「病気」ではありません。
愛情持ってペットを飼っている人であれば誰でもなる可能性があるものであり、特別なことではないのです。
「ねこに依存し過ぎではないか」、「他に打ち込めるものはないのか」といった批判をする人もいますが、愛する対象を失うことは何であれ悲しいものです。
むしろ、ペットロスになるのはそれだけ愛猫を大事にしていた証です。
今ペットロスになっている方は、自分を責めないようにしてください。
ペットロスで起こる反応(悲嘆)を大きく分けると、以下の5つです。
それぞれの具体例は以下の通りです。
| 身体的悲嘆
(体が不調になる) |
泣く、ショック、のどが詰まる、息切れ、胃痛や吐き気、胃が締め付けられる、不安感、倦怠感、疲労感、眠れない、食べられない、身体的苦痛 など |
| 知的悲嘆
(うまく考えることができない) |
拒否、混乱、集中できない、喪失のことが頭から離れない、ペットの後を追いたいと考える など |
| 感情的悲嘆
(心の痛み) |
悲しみ、怒り、ゆううつ、罪悪感、不安、孤独、喪失について他人を責める、恨み、困惑、自信喪失、絶望、無力感 など |
| 社会的悲嘆
(周りの人とうまくやれない) |
引きこもりや孤独感、疎外感、他人を拒絶する など |
| 精神的悲嘆
(なんとかしようと頭で考える) |
喪失を避けようと取り引きをする、愛するものとの別れに意義ある解釈を求める、愛するものに関する超常的な夢を見る、終わりの儀式(お葬式など)をしたがる など |
出典:人とペットの心理学 コンパニオンアニマルとの出会いと別れ 濱野佐代子編著 北大路書房
※一部出典元とは表現を変えています。

ペットロスは正常な反応ですが、場合によっては体調や日常生活に重大な影響を与えることもあります。
慢性的(6ヶ月以上)喪失感や抑うつの症状が続いており、日常生活に支障をきたすほど強いペットロスの反応を、「複雑性悲嘆(病理性悲嘆)」といいます。
複雑性悲嘆は大うつ病などの精神疾患を満たすほどの不調を引き起こすことがあり、医療機関の受診や服薬、カウンセリングが必要になることも少なくありません。
ペットロスの期間は人によってさまざまですが、数ヶ月~1年程度で緩和するともいわれています。
ペットロスが長引く人の特徴は以下の通りです。
※個人差があります。
【1】自責の念や後悔が強い
愛猫をなくしたことに強い責任を感じている人は、ペットロスが長引く傾向にあります。
交通事故でねこを亡くした、逃がしてしまい行方不明になったといった別れ方をした場合、「あの時こうしていれば」と自責の念にかられ、ペットロスの苦痛が強くなります。
また、「留守番ばかりで寂しい思いをさせた」、「もっと良い治療法があったのでは」など、普段の飼い方や治療法を悔いている場合もペットロスからなかなか立ち直れない場合があるようです。
【2】心の準備ができていなかった
事故や突然死で急にねこを亡くしてしまうと、現実を受け入れられずペットロスの苦痛が強くなってしまう場合があります。
逆に、老衰の場合や、治療や介護、看取りを十分にできたと感じている場合は、ペットロスからの回復が早い傾向にあります。
【3】話を聞いてくれる人がいない
愛猫を亡くした悲しみを分かち合える人がいない状況もペットロスを深刻化させる要因です。
ペットに対する人の気持ちはさまざまです。
ペットロスの気持ちを人に打ち明け、「ねこくらいで大げさな」などと言われてより孤独感が高まるケースも少なくありません。
また、「いつまでも悲しんでいたらねこも悲しむよ」、「新しいねこを飼えば気がまぎれるよ」といった励ましの言葉で傷つく場合もあります。
結果として他人の前では悲しみを忘れたようにふるまい、心の中に苦痛を抱え込んだままになってしまうのです。
| ※家族や知人がペットロスになったら…
家族や知人がペットロスで苦しんでいたら、まずはただそっとそばにいてあげましょう。 励ましの言葉は時に相手をより悲しませてしまう場合があります。 相手がペットの話をしたら、静かに聞いてあげましょう。思い出を人に話すことで感情を整理でき、ペットロスから立ち直るきっかけになるかもしれません。 |

愛猫を亡くしてペットロスになり、立ち直った人の体験談をご紹介します。
育児と仕事の両立に奮闘していた頃、当時小学校5年生だった子供が子ねこを拾ってきました。「忙しいのにねこなんて…」とは思ったのですが、子供の情操教育にも良いと思い、飼うことにしました。
飼ってみると、一番癒されたのは私でした。家族が寝静まった夜、一人でソファに座っている時、愛猫はいつもぽんとひざに飛び乗ってきました。のんびり眠るねこを見ると、「まあ、そうあくせくしなくていいかな」となんとなくほっとしたのを覚えています。
子供たちの進学や独立、家庭を持つようになるまで、ささやかな家族の歴史に寄り添ってくれた愛猫でしたが、急に食欲がなくなり…。
病院へ行ったところ、甲状腺の働きが悪くなっているとのこと。4キロを超えていた体重は1.4キロになり、脱水症状を起こしながらも自分でトイレに行っていました。
最後は子供たちも家に集まり、家族全員の「ありがとう」の声を聞きながら、愛猫は17年間の生涯を閉じました。
いて当たり前の存在がいなくなり、お骨を見ては泣く毎日でした。ソファに座るのも嫌になり、夜はさっさと布団に入りますが、息苦しい感じがしてなかなか眠れません。
そんな私を見て、子供たちは毎週、遊びに来てくれました。子供と一緒にねこの思い出話をして、「長生きしてくれたよね」、「みんなで見送れて良かったね」と言い合うことで、少しずつ悲しみが癒されたようです。
最近、子供がマイホームを建ててねこを飼い始めました。あの子と同じようにひざに乗るのが大好きな甘えん坊で、たまに会うのが楽しみです。
愛猫を突然亡くしました。まだ4歳、元気盛りでした。
保護猫センターから兄弟で迎え入れたねこで、いつも兄弟一緒に遊び、ごはんもたくさん食べて元気いっぱいだったので、急に体調が悪くなった時は驚きました。
まずごはんを食べなくなり、吐くようになって、けいれんも出始め…。急いで救急病院へ行き、点滴をしてもらいましたが症状は変わらず。
しっかりケアをしてもらった方が良いと思い、病院に預けましたが、数時間後に亡くなったという連絡が来て呆然としました。
たった4歳で…。これまで元気だったのに…。なんで?
混乱と悲しみで立っていられなくなり、号泣することしかできませんでした。
兄弟のねこも元気がなくなり、もしかしたらこの子も…とパニックになって仕事にも行けなくなりました。
「もっと早く気づいていれば」、「あの病院で良かったのか」、「助からないのなら家で看取ってあげたかった」、「信用して譲渡してくれたセンターにも申し訳ない」と自分を責めて泣き続ける毎日でした。
そんな私を癒してくれたのは、残された兄弟ねこでした。
兄弟ねこはだんだん食欲も戻ってきて遊ぶようになりました。時々私の顔を心配そうに見上げて、「元気出して」と言ってくれているように感じました。
また、保護センターのスタッフに愛猫が亡くなったことを伝えたところ、「ねこの突然死は避けられないこともある。救急病院に連れて行って、しっかり治療をしてくださりありがとうございます。ねこちゃんも幸せだったと思います」と言ってくださったのです。
悲しみが少し和らいだ頃、同じ保護センターから2歳のねこを引き取りました。とてもおてんばな子で、先住猫と毎日運動会です。新しい子を迎えて、日常を取り戻せたように思います。

ペットロスが続くと心身の苦痛が大きくなり、日常生活にも支障が出てしまうことがあります。
自然な心の反応とはいえ、苦痛を和らげるための対策は必要です。
ペットロスから立ち直る方法としては以下のようなものがあります。
ペットロスを和らげるためには、悲しみと向き合い、しっかり泣くことが大切です。
悲しみを抑え込み続けると、かえって苦痛が長引いたり、大きくなったりしてしまいます。
愛する存在を失って悲しむのは当然のことです。間違ったことでも悪いことでもありません。
我慢せず思い切り泣くことで悲しみや喪失感を洗い流し、ストレス解消が可能です。
また、悲しくてたまらなかったり、心身に不調が出ていたりするにもかかわらず、無理をして仕事に行ったり、人前で明るく振舞ったりするのも、ペットロスを加速させてしまう要因になります。
辛い時にしっかり自分を休ませることは、自身の心身と誠実に向き合うことでもあります。
無理をせず、心身が回復するまでは仕事を休むことも選択肢に入れましょう。

一人で悲しみを抱え込んでいると、よりペットロスが長引いてしまいます。
家族や友人など、信頼できる相手に話を聞いてもらいましょう。話を聞いてもらうことで悲しみが和らぎ、気落ちに整理をつけられます。
身近に話を聞いてくれる人がいない場合は、インターネットを利用する手もあります。
ペットロス専用の掲示板やコミュニティサイトであれば、同じ境遇の人と悲しみを分かち合えるでしょう。
カウンセラーに相談するのも良いですがペットロスへの理解が不足しているカウンセラーもいますので、あらかじめ問い合わせるか、ペットロス専用のカウンセラーを探しましょう。
お別れの儀式をして心に区切りをつけるのもペットロス対策に有効です。
代表的なものはお葬式です。最近ではペットのお葬式を行っている業者も増えていますので、相談してみると良いでしょう。
ただし、ペットの葬式業者の中には悪質なところもありますので注意が必要です。
インターネットのクチコミや、電話対応の誠実さなど、良し悪しはしっかり見極めましょう。
お葬式をしない場合は、愛猫の写真や愛用の物(おもちゃや食器など)を整理するのも心の整理につながります。
ただし、写真やグッズを見るのが辛い場合は、無理にしなくても構いません。
自身が一番楽になれる方法で、少しずつお別れを受け入れていきましょう。
ねこのお葬式については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
「ねこは亡くなる時人の心にねこの形の穴をあける。その穴はねこにしか埋められない」という言葉があります。
新しいねこを飼うことで悲しみが和らぎ、ペットロスから立ち直れる場合があります。
ただし、ねこを飼う気持ちや環境が整っていない状態で、悲しみを和らげるために新しいねこを迎え入れるのは望ましくありません。
自然に「またねこと一緒に暮らしたい」と思えるようになるまで待ちましょう。
また、愛猫を亡くした後、新しいねこと出会って飼うことになったという経験をした人もいます。
それはもしかしたら、亡き愛猫がつなげてくれたご縁かもしれませんね。

ペットロスは非常に苦しく悲しいものですが、悪いことばかりではありません。
耐え難い苦しみや悲しみを経験した後、人はより成長し、他者の苦しみに共感し、命についてより深く考えるようになるといわれています。
ペットロスを乗り越えた後で得られる成長や学びには、以下のようなものがあります。
自分を無条件で愛し、楽しい日々を一緒に過ごしてくれた存在に感謝し、人生の喜びを感じられます。
また、ねこと暮らすことで家族が仲良くなり、家庭が温かくなったと感じる人もいます。
ねこがいなくなった後でも、悲しみを分かち合い、思い出話をすることで家族の絆が強くなることでしょう。

人より短い命を精いっぱい生きるねこの姿は、生きることの貴さや別れの悲しみを教えてくれます。
ねこの生と死を通じて、生命とその可能性や、死後の問題について深い関心を抱くようになる人もいます。
ねこを飼うだけではなく、その最後まで見守ることで、命の大切さや動物に対する思いやりが育ちます。動物を飼うことは楽しいだけではなく、悲しみもあることを学び、情感がより豊かになります。

ペットロスを経験したことで、愛する存在を亡くした人の気持ちに寄り添えるようになります。
また、自分を心から愛してくれたねこの存在により自己肯定感が上がり、目標に向かって前向きに取り組める人もいるようです。
愛するねこを失った時、ペットロスになるのはごく自然なことです。
まずは自身の悲しみを受け入れ、しっかり泣き、無理をせず心身を休めることが重要です。
また、愛猫の話をしたり、お別れの儀式をしたりすることでペットロスの悲しみを和らげられる場合があります。
ねこは亡くなってからもなお、飼い主に温かな思い出とたっぷりの愛情を届け続けてくれています。
その思いにこたえ、愛猫に笑顔で「ありがとう」が言えた時、悲しみの涙は温かな喜びの涙に変わることでしょう。