ねこの赤ちゃんは人間の赤ちゃんと同じく、ミルクや排泄などのお世話を受けないと生きていけません。
通常はお母さんねこがしっかりお世話をしますが、人に捨てられていたり、育児放棄されていたりする場合、人の手で赤ちゃん猫を育てなくてはなりません。
今回の記事では、赤ちゃん猫を拾った時の対処法や、お世話の仕方をご紹介します。
※本記事では生後6週間までの授乳期のねこを「赤ちゃん」とします。
道端や草むらで赤ちゃんねこを見つけたら、「捨てられている!このままでは死んでしまう、どうしよう」とパニックになってしまうかもしれません。
まずは落ち着いて、赤ちゃんねこの様子を確認することが重要です。
赤ちゃんねこを見つけた時にするべきことを以下にご紹介します。
お母さんねこがしっかりお世話をしているのであれば、急いで保護しなくても構いません。
赤ちゃんねこがよく太って元気そうな場合は、数時間~数日程度様子を見ましょう。
しかし、以下のような場合は急いで保護しなければ、赤ちゃんねこの命に関わります。
また、お母さんねこによってケアされている健康な赤ちゃんねこでも、保護が必要な場合があります。
放っておくと赤ちゃんねこが成長し、子猫を産んで野良猫が増えてしまうためです。
保護する際にはお母さんねこも含めて保護するのがベストです。
難しい場合は近隣の保護団体に相談してみましょう。
赤ちゃんねこを保護したら、健康状態を確かめます。
注意するポイントは以下の通りです。
また、以下の健康チェックはお世話中にも毎日欠かさずに行いましょう。
健康 | 要注意 | |
全身の動き | 元気に手足を動かしている | 元気がない、動かない |
体温 | 適度に温かい | 体が冷えている
異常に熱い |
毛と皮膚 | なめらかでツヤがある | 抜け毛やケガがある
ノミやダニがついている |
呼吸 | 口を閉じて規則正しく呼吸している | 口を開いて苦しそうに呼吸している
弱々しい呼吸をしている |
歯茎 | ピンク色で湿っている | 白い場合は酸欠もしくは貧血、青い場合は低血糖の恐れがある |
目、耳、鼻 | 汚れておらず、清潔 | 目やにや耳ダニがついている
鼻水が出たりくしゃみをしたりしている |
また、赤ちゃんねこの体重はこまめに測り、軽過ぎる場合は獣医師に相談しましょう。
週齢 | 体重(目安) |
0~1週 | 75~150g |
1~2週 | 150~250g |
2~3週 | 250~350g |
3~4週 | 350~450g |
4~5週 | 450~550g |
5~6週 | 550~750g |
赤ちゃんねこは元気そうに見えても体調が急変する場合があります。
できるだけ早く動物病院へ連れていきましょう。
動物病院では健康チェックや治療をしてもらえるだけではなく、赤ちゃんねこのおよその月齢も教えてもらえるため、より適切なケアができるようになります。
子ねこがかかりやすい病気についての知識も押さえておくと安心です。以下の記事で詳しくご紹介しています。
赤ちゃんねこをお世話するためにはさまざまな準備物が必要です。特に揃えておきたいグッズは以下の通りです。
※やけどには十分気を付けてください。
生後0~3週の赤ちゃんねこは体温調節や排せつがうまくできません。歩くこともほぼできず、多くの時間を寝て過ごします。
数時間おきの細やかなケアが必要になる大変な時期ですが、8~12日頃に目が開き、2週頃には耳が良く聞こえ始め、3週頃には歯が生え始めるというように、ぐんぐん成長する姿を楽しめます。
以下の点に気をつけて、しっかりお世話をしましょう。
0~3週の赤ちゃんねこはあまり活動せず、ミルクを飲んでは寝てを繰り返します。そのため、広い部屋は必要ありません。
高さ30センチくらいの箱にブランケットと保温グッズを置けば立派な保育部屋になります。
箱は段ボールでも構いませんが、衣装ケースやコンテナを使うと掃除が楽です。
この時期の赤ちゃんねこは体温調節ができないため、保温グッズを使って赤ちゃんねこの周りを温めましょう。
また、暑い場合はエアコンやサーキュレーターなどで室温を下げる必要がありますが、赤ちゃんねこに直接風が当たらないように注意しましょう。
【赤ちゃんねこの適温】
週齢 | 適正温度 |
0週 | 32℃ |
1週 | 30~31℃ |
2週 | 29~30℃ |
3週 | 26~27℃ |
※室温ではなく、赤ちゃんねこ周辺の温度です。
0~3週の赤ちゃんねこはミルクで育てます。
記載されている作り方通りにミルクを作り、哺乳瓶にミルクを入れて飲ませます。
飲ませる時は赤ちゃんねこのお腹を下に向けます。人間の赤ちゃんのように仰向けにすると、誤嚥の危険性があるので注意しましょう。
赤ちゃんねこの頭を優しく支え、哺乳瓶を下向きに持って乳首を口の中に入れます。
うまく授乳できると、赤ちゃんねこは乳首に吸い付いて、耳をピクピクさせながらミルクを飲みます。赤ちゃんねこのお世話をしている人だけが見られるかわいらしい姿です。
ミルクをうまく飲めない場合はシリンジを使う方法もあります。弱っていてミルクを飲めない時は、迷わず獣医師に相談しましょう。
なお、赤ちゃんねこの1回当たりのミルクの量と回数の目安は以下の通りです。
週齢 | ミルクの量(1回当たり) | 回数 |
0~1週 | 5~10㏄ | 8~12回(2時間おき) |
1~2週 | 8~15㏄ | 4~8回(2~3時間おき) |
2~3週 | ほしがるだけ | 4~6回(3~4時間おき) |
3週以降 | ほしがるだけ
(少しずつ離乳食に切り替える) |
3~4回程度(4~6時間おき、離乳食後) |
※あくまで目安です。子ねこの状態や個性により、ミルクの量や回数は異なります。
小さな赤ちゃんねこは自分で排せつができません。母ねこがいれば、子ねこのお尻をなめて排せつを促してくれますが、いない場合は人の手でサポートをしてあげる必要があります。
ティッシュやトイレットペーパーのような柔らかい使い捨ての紙でお尻のあたりを優しくなでると、うんちやおしっこが出てきます。出し切るまでなで続けてあげましょう。
うんちやおしっこが出たらチェックします。授乳期の赤ちゃんねこのおしっこは透明か薄い黄色、うんちはからし色です。
排せつが終わったら、赤ちゃん用のお尻ふきなどでそっとお尻を拭いてあげましょう。
排せつサポートは基本的に授乳前に行いますが、授乳後にも行って体の中のうんちやおしっこを出し切ることで、快適にミルク後のお休みタイムに入れます。
なお、3週を過ぎると少しずつ自分で排せつができるようになってきます。少しずつトイレトレーニングを始めましょう。
※トイレトレーニングについては次項でご紹介します。
生後4週目に入ると、いよいよ離乳期です。周囲に興味を持ち始め、歩いたり走ったりします。毛づくろいや威嚇など、ねこらしい動作も見られるようになり、排せつも自分でできるようになります。
「赤ちゃん」から「幼児」に成長する時期で、ころころと遊びまわる様子は本当にかわいらしいものです。
この時期に特に大切なお世話を以下にご紹介します。
生後4週目以降の赤ちゃんねこは、筋肉や感覚が発達してよく遊ぶようになります。遊びを通じて運動能力やや社会性を身に着ける時期であるため、しっかり活動できるスペースを作ってあげましょう。
トンネルやハンモック、キャットタワーなど、隠れたり登ったりする場所を用意します。キャットタワーは大人のねこのものより低いものを準備してあげると良いでしょう。
また、おもちゃで遊んであげることも重要です。ねこじゃらしやボールなどで遊んであげましょう。ただし、手で遊ぶのはやめましょう。この時期に手を使って遊ばせていると、「人の手=噛むもの」と覚えてしまうためです。
赤ちゃんねこが興奮し過ぎておもちゃを強く噛んだ時は、「ダメ!」と叱りましょう。叱られることで、赤ちゃんねこは加減することを学びます。
ねこのおもちゃの選び方については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
離乳を始めるタイミングは赤ちゃんねこによって異なりますが、5週程度が目安です。最初は離乳食をスプーンや指に着けて赤ちゃんねこになめさせるところから始め、少しずつお皿で食べられるようにします。食事の量が十分でない時は、食後にミルクをあげて栄養を補いましょう。
赤ちゃんねこがしっかり離乳食を食べられるようになったら、子ねこ用のフードに切り替えていきます。新鮮な水をあげるのも忘れないようにしましょう。
赤ちゃんねこは3~4週あたりから自分で排せつをするようになります。浅い箱やトレイにねこ砂を敷き、赤ちゃんねこの排泄物を置いておきます。赤ちゃんねこがトイレを探す動作を始めたら、トイレに置いてあげると自分で排せつします。
ちゃんと排せつできたらしっかり褒めてあげましょう。しかし、おそそうをしても叱ってはいけません。
なぜ叱られたか理解できず、怖がらせてしまうだけになってしまうためです。
なお、赤ちゃんねこはねこ砂を食べてしまうことがあります。食べても問題のない、安全性の高いねこ砂を使いましょう。
※生後6週目までの赤ちゃんねこのお世話について、特に重要なものをご紹介しました。ねこの基本的な飼い方について知りたい方は、以下の記事も併せてお読みください。
生後6週までの赤ちゃんねこのお世話法や注意点について解説しました。
赤ちゃんねこはとても弱く、ミルクや排せつだけでなく保温調整などきめ細やかなサポートをしなければなりません。
いつも温かく清潔にし、成長したらたくさん遊べるよう環境を整えてあげる必要があります。
お世話は大変ですが、赤ちゃんから幼児、元気な子ねこへと成長するところを間近で見られる経験は、大きな喜びと充足感を与えてくれることでしょう。
この記事を読まれている方の中には、赤ちゃんねこを拾って、これからお世話しようと考えている方もいらっしゃるでしょう。
お世話が大変な赤ちゃんねこを保護したあなたの勇気と優しさは本当に素晴らしいものです。
一人で悩まず、獣医師や周囲の人の協力を得ながら、大切に、楽しんで赤ちゃんねこのお世話をしてあげてください。