毛が抜けたり、皮膚が荒れたりと痛々しいねこの皮膚病。
痒がっている姿もかわいそうで、早く治してあげたいものです。
しかし、皮膚病の原因はさまざまで、どう対策をすれば良いのか分からないということもあるかもしれません。
今回の記事では、ねこの皮膚病に見られる症状と良くある原因、対処法についてお話します。
ねこの皮膚は毛に覆われているため、皮膚病になっていても分かりづらいこともあります。
ねこの体や行動をしっかり観察して、皮膚病になっていないかどうかチェックしましょう。
ねこの皮膚病で良くある症状をご紹介します。
ねこは春と秋に換毛期を迎え、毛が生え変わります。
そのため毛が抜けること自体は異常ではありません。
しかし、以下のように毛が抜ける場合は、皮膚病の恐れがあります。
毛を触って脂っぽく感じる場合は、皮膚病により皮脂の分泌異常が起きている場合もあります。
悪臭を伴うこともありますので、においもチェックしましょう。
ねこがかゆがっていたり、毛が抜けたりしている場合は、毛をかきわけて皮膚のチェックをしましょう。
以下のような異常が見られたら、皮膚病の恐れがあります。
ねこが体の同じ場所をかきむしっている、もしくは舐めている場合は、その場所が痛かったりかゆかったりするのかもしれません。
放っておくと皮膚を掻き壊して、より症状が悪化してしまうことがあります。
また、睡眠不足や食欲不振につながる恐れもあるため、注意が必要です。
ねこの皮膚病の主な原因として考えられるのは、寄生虫、アレルギー、細菌・真菌(カビ)、ストレスなどです。
それぞれの原因から生じる皮膚病と、その症状を詳しくご紹介します。
寄生虫(ノミ、ダニ、シラミなど)によって皮膚病が引き起こされる場合があります。特にねこに起こりやすい寄生虫由来の皮膚病は以下の通りです。
病名 | 原因となる寄生虫 | 主な症状 |
疥癬 | ヒゼンダニ | 非常に強いかゆみ |
毛包虫症 | ニキビダニ | 脱毛、鱗屑
重度になると敗血症を伴うこともある |
ツメダニによる症状 | ツメダニ | 大量のフケ |
ノミの刺傷による炎症 | ネコノミ | かゆみ |
食べ物や虫などのアレルゲンも皮膚病の大きな要因です。ねこに良く見られるアレルギーとその症状をまとめると以下の通りです。
アレルゲン | 具体例 | 主な症状 |
食べ物 | キャットフード内のタンパク質 | 皮膚のかゆみ、発疹、脱毛、外耳炎、下痢、嘔吐など |
寄生虫 | ノミ、ダニ | 左右対称の広い皮膚炎
激しいかゆみ |
昆虫 | 蚊、アブ | 皮膚炎 |
その他 | 花粉、ハウスダスト | 頭、首、お腹などの皮膚に発疹ができる
上唇、口の中、肉球、腿にしこりや腫瘍ができる |
外部の細菌や真菌に触れたり吸い込んだりして体内に取り込まれる、もしくは抵抗力が落ちて体の中の常在菌が悪さをすることで生じる皮膚病もあります。以下に代表例をご紹介しましょう。
病名 | 原因となる細菌、真菌 | 主な症状 |
皮膚糸状菌症 | 犬小胞子菌
石膏状小胞子菌 毛瘡白癬菌 など |
顔や足を中心に脱毛、フケ、皮膚炎が生じる
※人間にも感染するため注意 |
膿皮症 | ブドウ球菌など | 円形脱毛、フケ |
マラセチア感染症 | マラセチア属の酵母菌 | 皮膚が脂っぽくなったり、厚くなったりする
耳の中が感染すると外耳炎になることがある |
引越しや新しいねこを迎えた時など、ねこがストレスを感じた際、体の一部分をひたすら舐めてしまい、「舐性皮膚炎」を起こすことがあります。
ザラザラしたねこの舌で、同じ場所を何度も舐めることによる脱毛や炎症が主な症状です。
ねこの皮膚病の治療として主なものを以下にご紹介します。
病名や症状によって治療法はさまざまです。
薬の副作用や食事療法のやり方など、疑問や不安があれば、必ず獣医師に相談し、適切な治療を行っていくようにしましょう。
まずは問診を行い、症状の出ている箇所やかゆみの状況を確認します。
以下のような質問をされることがありますので、記録しておくとスムーズです。
問診のあと、原因を特定するために以下のような検査を行う場合があります。
【1】ノミやダニの確認
ノミやダニ、もしくはその糞があるかどうかを確認します。
【2】皮膚や被毛の検査
症状が出ている箇所を確認したり、皮膚や被毛を一部採取して細菌や真菌の培養をしたりします。
【3】アレルギー検査
アレルギーの原因と考えられる食材を含まない食事を与えて様子を見る「除去食試験」や、血液からアレルゲンを特定する「血清検査」などがあります。
【4】血液検査、レントゲン検査
体の中に異常があることにより皮膚に症状が現れていたり、膀胱炎など痛い場所を繰り返し舐めることにより脱毛や炎症が生じ、皮膚病のように見えたりする場合もあります。
皮膚病以外の原因が疑われる時は、血液検査やレントゲン検査を行うこともあります。
また、真菌(カビ)由来の皮膚病には抗真菌薬、アレルギー由来の皮膚病には抗アレルギー薬が使われます。
薬には飲み薬と塗り薬(クリーム、軟膏、スプレー、ローションなど)があり、病因や症状によっては組み合わせて処方されるかもしれません。
皮膚病の治療は長期に渡ることも多いため、薬の効果や副作用などを把握し、獣医師と相談しながら使用していきましょう。
食物アレルギーの場合は、アレルゲンとなる食材を除去します。
皮膚病対策のフードをお店やネットで購入することもできますが、獣医師の診断を受け、動物病院でしか取り扱っていないフードを紹介してもらうようにしましょう。
また、フードのあげ方やあげる期間なども獣医師の指示を守らなくてはなりません。
ねこの皮膚病は一度発症すると、治療が長引いてしまう場合がありますので、まずはしっかり予防することが重要です。
ねこの皮膚病を予防する方法をいくつかご紹介します。
皮膚病の早期発見のためには、ねこの皮膚を普段からチェックすることが重要です。
ねこをなでる、ブラッシングをするなどスキンシップをしながらねこの毛や皮膚の見た目や手触り、においを確認します。
また、ノミ・ダニの駆虫薬は定期的に投与しましょう。
保湿効果のあるねこ用のシャンプーやリンスでケアをするのも、皮膚病予防として良い方法です。
先ほどご紹介した通り、ねこはストレスを感じると体を何度も舐め、舐性皮膚炎を引き起こすことがあります。
また、他の皮膚病に関しても、ストレスによる免疫力の低下により症状が重くなることもあるかもしれません。
ストレスの原因が分かっている場合は、それを取り除きましょう。
また、おやつをあげたり遊んだりするなど、ねこが喜ぶことをしてストレスを解消させることも重要です。
室内の環境により皮膚病を発症、もしくは悪化してしまう場合もあります。
以下のような点に気をつけて、ねこが皮膚病になりにくい環境を整えましょう。
・清潔を保つ
部屋を掃除する、空気清浄機を置くなどして、アレルギーの原因となるハウスダストや、ダニやカビのえさになるねこの抜け毛やフケを取り除きます。
また、皮膚病のねこが使っているおもちゃや毛布などはこまめに殺菌しましょう。
・部屋の湿度を調整する
室内の湿度が低いとねこの皮膚が乾燥し、フケが発生しやすくなるだけではなく、感染症につながってしまうかもしれません。
逆に、湿度が高いとあごニキビなどの皮膚病の原因になるうえ、ダニやカビが発生しやすくなります。
ねこにとって快適な湿度は40~60%といわれており、人間とほぼ同じです。
加湿器や除湿器を使う、部屋の換気をするなどして、部屋の湿度を調整しましょう。
ねこの皮膚病の症状と原因、対策についてご紹介しました。
愛猫の皮膚が荒れている、毛が抜けている、かゆがっている、そんな姿を見るのは辛いものです。
普段からねこの皮膚や毛をしっかりケアし、環境を整えて、愛猫を皮膚病から守りましょう。