
のんびり寝そべっていたかと思えば、物音にパッと反応して素早く様子をうかがったり、甘えていたと思ったら急に不機嫌になって噛みついたり…。ねこは本当に気まぐれな生きものです。
では、なぜねこはそんなに気分が変わりやすいのでしょうか?また、その気分を読み取るヒントはあるのでしょうか?
今回は、そんな「ねこの気分」について、わかりやすく解説していきます。

ねこには「子ねこ気分」「親ねこ気分」「ペット気分」「野生気分」という、4つの気分があるといわれています。しかも、これらは1〜2秒の間隔で次々に切り替わることもあるようです。
それぞれの気分について詳しくご紹介します。
「遊びたい」、「構ってほしい」という子ねこらしい気持ちがあふれている状態です。
おもちゃにじゃれついたり、毛布や飼い主さんの指を吸ったりと、まるで赤ちゃんのような甘えん坊モードになることもあります。
特に飼いねこは、この子ねこ気分が強く出る傾向があります。
というのも、飼い主さんという「親」がいつもそばにいて、ごはんをくれたり、遊んでくれたりと、ずっとお世話をしてくれるからです。
子ねこ気分とは逆に、「世話をしたい」、「守ってあげたい」といった「お母さんモード」になることもあります。
この気分のときは、飼い主さんを舐めて毛づくろいしようとしたり、虫や小さな獲物を持ってきたりする行動が見られます。
これは、ねこが飼い主さんを大切な家族の一員と認識しているサインともいえるでしょう。
安心しきっていて、まるで野性味が感じられないリラックスモードです。
仰向けになってお腹を見せる「ヘソ天」で寝ていたり、飼い主さんに食べ物をねだったりと、完全に甘えたペットらしい一面が見られます。
この「ペット気分」や「子ねこ気分」は、人間と暮らすようになったねこが進化の中で発達させてきたともいわれています。
かわいらしい性格のねこが人に好かれ、安全な環境の中で生き延びてきたのかもしれません。
甘えん坊なだけでなく、ねこには今も野生の本能がしっかり残っています。
この「野生気分」のときは、獲物に飛びついたり、高いところに登ったりと、本能に従って活発に行動します。
飼い主さんに呼ばれても知らんぷりすることや、無理に構おうとすると不機嫌になることもあるので、そんなときはそっとしておいてあげるのがよいでしょう。

先ほどご紹介したように、ねこには4つの気分があり、それらは瞬時に入れ替わることがあります。
これこそが「ねこは気まぐれ」といわれる理由のひとつです。
とはいえ、ねこの気分はランダムで変わっているわけではありません。変化には、きちんとした「わけ」があるのです。
ここからは、ねこの気分が切り替わるきっかけとなる要素について、詳しくご紹介していきます。
ねこは、本能に従って行動しています。
音やにおい、生き物の気配などを、鋭い五感で察知し、それに応じて行動を切り替えているのです。
たとえば、
このように、ねこの気分や行動は、そのときどきの状況によって目まぐるしく変化します。
でも、これは決して行き当たりばったりではありません。
ねこは常に本能に基づいて、その場で最も適した行動を選んでいるのです。
つまり、これはねこが「生きるための知恵」として身につけているものだといえるでしょう。
なお、ねこの気分や行動の優先順位は、受け取る刺激の大きさによって変わります。
たとえば、ごはんを食べている最中でも、不審な物音がすれば一気に野生気分に切り替わり、食べるのをやめて音の正体を探りに行くというようにです。
どちらを優先するかは、ねこの年齢や性格にもよります。
好奇心旺盛な若いねこであれば、物音を優先してすぐに動くことが多いですが、シニアのねこはあまり気にせず、そのままごはんを食べ続けることもあります。
ストレスも、ねこの気分に大きな影響を与える要素のひとつです。
ねこは本能に従って生きていますが、人に飼われている環境では、その本能を十分に発揮できないことがあります。
たとえば、完全室内飼いで狩りの機会がない、ペットとして飼い主に甘えるなど、本能に反した生活が続くと、ストレスになることも少なくありません。
その結果、急に年齢や性別にそぐわない行動を取るようになったり、普段とは違う反応を見せたりすることもあるといわれています。
たとえば、ねこをかわいがっている最中に突然怒り出すことがありますが、これもストレスが関係している場合があります。
なでられている途中で「こんなことをしている場合じゃない」、「縄張りのパトロールに行かなきゃ」と本能的に思ったにもかかわらず、飼い主がしつこく構い続けると、イライラして噛んだりひっかいたりすることがあるのです。
ねこの気分は、時間帯によっても変化します。
ねこは朝と夕方に活動が活発になる「薄明薄暮性(はくめいはくぼせい)」の動物です。
そのため、朝や夕方になると動きが活発になり、「子ねこ気分」や「野生気分」が強く出ることがあります。
一方で、昼間は「ペット気分」でのんびりと過ごすことが多く、日なたでうとうとする姿がよく見られます。
時間帯ごとのねこの活動度については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
ねこの気分は、天気の影響も受けやすいといわれています。
晴れている日は、ねこにとって絶好の「狩り日和」。光や音、空気の動きなど、五感を刺激する要素が多く、気分も高まりやすいため、活発に動き回る姿が見られます。
窓辺で外をじっと観察したり、鳥の声に耳をすませたりと、「野生気分」が強く出ることもあります。
一方、雨の日やどんよりとした曇り空の日には、どこか気だるげな様子を見せることが多く、ふかふかのクッションの上で丸くなって休んでいることがほとんどです。
このような日は、「ペット気分」や「子ねこ気分」で、甘えん坊になりやすいねこも多いようです。
天気ごとのねこの気分や注意するべきポイントは以下の記事で詳しくご紹介しています。
ねこも人と同じように、「年齢」によって気分や性格に変化があらわれます。
子ねこの頃は、すべてが新鮮で楽しく、好奇心旺盛です。おもちゃや動くものに飛びついたり、元気に走り回ったりと、まさに「子ねこ気分」全開で遊びまわる時期です。
成長して大人のねこになると、少しずつ落ち着きが出てきます。
無駄な動きは減り、気まぐれに甘えたり、自分のペースで過ごしたりする時間が増えてきます。
この頃のねこは、「ペット気分」や「親ねこ気分」がバランスよく現れることが多いようです。
さらにシニア期に入ると、のんびりとした生活スタイルへと移行します。
若い頃ほど物音や動きに反応せず、日なたでゆったり過ごしたり、好きな場所で静かに眠っていたりする時間が増えていきます。
この時期は、無理に刺激を与えず、ねこのペースを尊重してあげることが大切です。

ねこは、数秒単位で気分がコロコロ変わる気まぐれな動物です。
だからこそ、ねこのその時その時の気分をうまく読み取り、できるだけご機嫌でいられるよう気を配ってあげることが大切です。
ここでは、そんなねこの気まぐれと上手に付き合うための「コツ」をご紹介します。
ねこの気分は、体の動きやしぐさから読み取ることができます。
特に「目」「ひげ」「耳」「しっぽ」は、ねこの気持ちが表れやすいパーツです。
それぞれの動きをしっかり観察することで、ねこが今どんな気分なのかを知るヒントになります。
| 部位/気分 | リラックス | 甘えたい | 遊びたい | イライラ |
| 目 | 半目・ゆっくりまばたき | ゆっくりまばたき・じっと見つめる | 瞳孔が開き気味・目をキラキラさせる | 目を細めてジッとにらむ・まばたきが減る |
| ひげ | 自然に左右に広がる | 前方に少し出る | 前にピンと張る | 後ろ向き・顔に張り付くようになる |
| 耳 | 少し外側に向いてリラックス | 前を向いてピンと立つ | 前方に集中して動く | 後ろ向き・ピクピク動く・寝かせ気味 |
| しっぽ | ゆっくり左右に揺れる・丸めている | 先だけ軽く動く | ピンと立って小刻みに揺れる | バタバタと大きく叩くように振る・毛が逆立つことも |
ねこが甘えたいときや機嫌の悪いときに見せる仕草については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
先ほども触れたように、ねこはストレスがたまると、気分が突然切り替わったり、普段とは違う行動を見せたりすることがあります。
たとえば、オスねこなのに母ねこのような行動をしたり、大人のねこが突然毛布を吸い始めたりする場合、それはストレスのサインかもしれません。
ねこはとても敏感な動物です。
ほんの小さな環境の変化でも、大きなストレスを感じることがあります。
以下のような「ストレスの原因」がないか、一度チェックしてみましょう。
ねこの「個性」や「欲求」を尊重することも、ねこの気まぐれとうまく付き合っていくうえで、とても大切なポイントです。
たとえば、クールな性格のねこは、「親ねこ気分」や「野生気分」で過ごしている時間が多い傾向にあります。
このようなねこは自立心が強く、あまり甘えてこないため、少し寂しく感じるかもしれません。
ですが、だからといって無理に抱っこしたり、しつこくなでたりすると、かえってねこにストレスを与えてしまうこともあります。
また、「甘えたいときに放っておく」、「眠っているときに遊びに誘う」といった、ねこの気持ちを無視した行動も、ストレスの原因になりかねません。
ねこにも「今こうしたい」、「今はそっとしておいてほしい」といった気分やペースがあります。
その個性や欲求をしっかりと見極め、できるだけねこの気分に合わせて行動することで、愛猫が快適に、そしてご機嫌に暮らせる環境を整えてあげられるのです。
ここまで、ねこが気まぐれな理由や、気まぐれなねこと上手に付き合うための方法をご紹介してきました。
ねこにはさまざまな「気分」があり、しかもその気分は、わずか数秒単位で次々と切り替わっていきます。
ひとりでいたいときに無理にかまったり、遊びたい気分なのに放っておいたりすると、知らず知らずのうちにねこがストレスを感じてしまうこともあります。
たしかに、気まぐれなねこと付き合うのは少し大変に思えるかもしれません。
でも、その気まぐれこそが、ねこの最大の魅力でもあります。
ねこの気分をよく観察し、気持ちに寄り添いながら、ねこがねこらしくのびのびと暮らせるよう、やさしく見守ってあげましょう。