ねこはあまり水を飲まない動物ですが、だからこそ飲む水にはこだわりたいもの。
ねこの健康のためには、どのような水が良いのでしょうか。
また、水を飲まない場合にはどのような工夫をすれば良いのでしょうか。今回は、ねこが飲む水の選び方やあげ方についてご紹介します。
ねこはあまり水を必要としない生き物です。
その理由はねこの祖先であるリビアヤマネコに関係しています。
リビアヤマネコは砂漠に住んでいることから、少量の水分でも生きていけるよう、尿を高濃度に濃縮できる能力を持っていました。
リビアヤマネコの血を引く現在のイエネコも水はそれほど必要なく、一日に40ml/kgが適量であるといわれています。
つまり、体重4kgのねこであれば、160ml、カップ一杯分程度ということになります。
ウェットフードなどの水分も含まれますので、かなり少量の水で生きていけるのです。
しかし、水を必要としないがために、ねこは喉の渇きを感じにくいという性質も持ち合わせています。
それゆえに必要な水も飲まず、尿路結石症や膀胱炎、慢性腎不全といった病気にかかりやすいという、リスクも負っています。
ねこは水をあまり飲まないから水には気を使わなくて良い、というわけではなく、むしろあまり飲まないからこそ、ねこにとって良い水を、飲みやすい環境であげないといけないのです。
水といえば水道水が安価で手軽ですが、ねこに水道水をあげても大丈夫なのでしょうか。
また、ミネラルウォーターやウォーターサーバーの水はねこにとって良いものなのでしょうか。ねこ用として適切な水をご紹介します。
ねこは流れる水が好きです。蛇口から流れ水道水をそのまま飲むというねこも多いようです。
水道水には塩素が入っているため、あげるのが心配、という方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、日本の水道水は世界でもトップクラスの安全性を誇っており、ねこにあげても問題ありません。
安価で簡単に手に入るのも水道水の大きなメリットです。ただし、塩素の味やカルキのにおいが苦手なねこもいますので注意が必要です。
ミネラルウォーターをねこにあげる場合には、先ほどご紹介したとおり、ミネラルの量に注意しなくてはなりません。ねこは人間より腎機能が弱いため、マグネシウムやカルシウムなどのミネラルを取り過ぎると、尿路結石になる恐れがあるからです。
水は含まれているミネラルの量により、軟水と硬水に区別されます。以下の目安を参考にして、ミネラルウォーターをあげる場合は、ねこには軟水をあげるようにしましょう。
ウォーターサーバーを置く家庭も増えてきましたが、ねこにも同じ水をあげて大丈夫なのでしょうか。
ウォーターサーバー自体は問題ありませんが、気をつけるべき点があります。
それは、ウォーターサーバーの水は水道水のように塩素消毒がされていないという点です。
その分雑菌が発生しやすいため、こまめに取り替える必要があります。
続いて、ねこにあげてはいけない水分についてご紹介します。
人間にとっては無害でも、ねこにとっては体に悪い水もありますので、注意して与えるようにしましょう。
先ほどご紹介したとおり、ミネラルの多い「硬水」は尿路結石などの原因になるため、あげない方が無難です。
ただし、硬質の水をあげると必ず病気になるわけではありません。
関東の一部や沖縄では、やや水道水の高度が高い地域がありますが、さほど神経質になる必要はありません。
ただ、ねこにとっては硬水より軟水の方が良い、という点は心に留めておきましょう。
アルカリイオン水とは、pH値9~10のアルカリ性の水のことです。
健康に良いともいわれており、好んで飲む人もいます。
しかし、ねこが飲むと尿路結石の原因になる恐れがあるため、避けたほうが良いでしょう。
ねこの飲み水としては、pH値6~8程度の中性の水が最適です。
ねこが水を飲まないからといって、人間が飲む牛乳やジュースなどを与えてはいけません。
ねこの多くは牛乳に含まれる乳糖をうまく消化・吸収できないため、牛乳を飲むとおなかを壊してしまう場合があります。
また、人間が飲むジュースには砂糖や添加物が多く含まれているため、ねこの健康を害する恐れがあります。
お風呂や花びんに溜まった水を好んで飲むねこもいます。
お風呂に入れたばかりの新鮮な水(お湯)なら問題ありませんが、洗面器に残った水などは、シャンプーやせっけんの成分が溶け込んでいる恐れがあり、ねこの体に良くありません。
また、お風呂の残り水を飲む癖がついてしまうと、浴室に入りそのまま溺れてしまう事故にもなりかねません。人がいないときにねこが浴室に入らないよう気をつけましょう。
また、花びんの水も良くありません。
ユリやスズラン、ポインセチアなど、家に飾る花の中はねこにとって有毒なものが多く、その成分が水にも溶けている恐れがあるからです。
また、花びんの水を飲む癖がつくと、飲もうとして花びんを倒してしまうことにもなりかねません。
ねこの水はねこ用の器や給水機であげ、決まった場所で水を飲む習慣をつけるようにしましょう。
先ほどご紹介したとおり、水を飲まないと腎臓の病気などにかかってしまう恐れがあります。
ねこが水を飲んでくれない場合は、どのような工夫をすれば良いのかご紹介しましょう。
ねこが水を飲まないとき、最も手軽な対処法として挙げられるのが、水をあちこちに置くことです。
移動するたびに水があるため、ついでに飲んでくれる可能性があります。
ねこはとてもデリケートな動物です。
水を飲むとき、ひげが水に当たると飲むのをやめてしまうねこもいます。
ねこが水を飲みやすいよう工夫された専用の器がありますので、いろいろ試してみるのも良いでしょう。
んなどにたまった水を飲みたがるねこは、水道水のカルキのにおいを嫌っているのかもしれません。
その場合は汲み置きの水をあげると飲んでくれる可能性があります。
軟水のミネラルウォーターや、竹炭を入れてカルキ抜きをした水、湯冷ましなども大丈夫です。
ねこは本能的に、たまっている水より流れている水を好んで飲む傾向にあります。
現在では常に新鮮な水を流してくれる、ねこ用の自動給水機もありますので、試してみると良いでしょう。
どうしても水を飲まない場合は、ねこ用のスープやミルク、ささみのゆで汁、ウェットフードなどをあげると水分を摂取できます。
ただし、カロリーや塩分のとり過ぎにならないように気をつけましょう。
ねこにあげる水は、基本的には水道水で構いません。
できるだけ新鮮なものを、飲みやすい場所、飲みやすい器であげるようにしましょう。
塩素の味やカルキのにおいが苦手なねこには市販の水をあげるのもOKですが、ミネラル含有量やpH値に気をつけて、ねこの体に良いものにしてください。
水は命をつなぎ、体を作る大切なもの。
特にねこは水をあまり飲まず、腎機能も強くありませんので、飼い主さんが良い水を選んであげることが大切です。