ぽっちゃり体型のねこは、見ているだけで癒やされる方も多いのではないでしょうか。
しかし、ねこの肥満は人間同様、さまざまな病気の原因になるため注意が必要です。
ある調査では、家猫の実に50%近くが太りぎみ、もしくは肥満だったそうです。もはや肥満はねこの現代病と言えるのかもしれません。
今回は、そんなねこの肥満とダイエット方法について詳しく解説していきます。
ねこが肥満になる原因は大きく分けて3つあります。
どれも、根本は「食べすぎ」です。
避妊・去勢手術をすると太りやすくなるのは事実ですが、それに合わせてフードの量を調整すれば問題はありません。
つまり、適切に食事管理をすれば避妊・去勢後でも著しい肥満は避けられるはずです。
また、運動不足に関しても同様のことが言えます。
外で暮らしているねこは食べるために狩りをします。
しかし、家の中で暮らしているねこにはその必要がありません。
1日中ゴロゴロしていても時間になればご飯にありつけるのですから、狩をしない分だけ運動不足になります。
ただし、その場合も運動量にあわせた適切な給与量を与えていれば太ることはないでしょう。
ねこが肥満になる理由はいろいろ言われていますが、多くは「食べすぎ」が原因なのです。
肥満のねこは、理想的な体型のねこと比べて健康リスクが高いと言われています。代表的なものでは、糖尿病、膵炎、結石症があります。
糖尿病は一生つきあっていかなければいけない病気です。症状によっては、毎日1〜2回のインスリンを注射しなければなりません。
また、太っているねこの方が膵炎のリスクが高い傾向にあるようです。
膵炎になると食欲不振、嘔吐、下痢、腹痛といった症状があらわれます。
肥満と結石症の関連性も指摘されています。肥満のねこはおやつの食べすぎなどで食生活が乱れがちです。
そのせいでミネラルバランスが崩れて結石症になりやすいのではないかと考える獣医師もいます。
そのほか、体重が20kg以上になると呼吸不全で亡くなるリスクも高くなります。
ねこの関節症の主な原因には、加齢のほかに肥満があげられます。
関節症は骨と骨の間にある軟骨がすり減って痛みを感じるようになる病気です。
関節症のねこは痛みがあるため、高い場所に登らなくなったり、爪をとがなくなったりします。
症状が悪化すると足を引きずって歩く跛行(はこう)が見られるようになります。
肥満のねこが跛行に至るリスクは、健常なねこの5倍とも言われています。
肥満のねこでは、手術にも危険が伴います。
脂肪層が厚いために大きく切開しなくてはなりませんし、処置が必要な臓器が見づらくもなります。
その分所要時間が長くなるなどもあって、手術の難易度が高くなるのです。
また、太っていると麻酔の使用量が増えるうえに、麻酔が効きにくく醒めにくくもなるために体への負担も大きくなります。
ねこのダイエットは半年〜1年かけてゆっくりと体重を落としていくのが基本です。
理想的な減量のペースは、ダイエット開始時の体重に対して、1週間に0.5〜2%までとされています。
急激な減量は愛猫の健康を損なうおそれがありますので、適切な減量ペースを守るようにしましょう。
ねこは「理想体重の120%以上」になると肥満とされます。
一般的には、1歳のときの体重が理想体重だと言われています。
ご飯の量を決めるさいには理想体重を基準にしますから、忘れないように記録しておきましょう。
また、ねこの体型が理想的かどうかを判断する指標として「ボディコンディションスコア(BCS)」が広く使われています。
真上から見たときの腰のくびれやあご、首まわり、お腹まわりの脂肪のつき方、肋骨や背中を触ってみて、5段階で総合的に評価します。
ねこにとって理想的な体型は「腰のあたりにくびれがあり、胸部が適度な脂肪で覆われていて、軽く肋骨に触れられる程度」とされています。
肋骨の感触は人間の手の甲に似ていると言われていますので、触り比べてみるといいかもしれません。
もし、上から見てくびれがなく、胸部に触れて肋骨がわかりづらいのであれば、「やや肥満」または「肥満」ですから、獣医師に相談することをおすすめします。
ねこのダイエットで絶対にやってはいけないことが2つあります。
早く結果を出したいからと絶食させたり極端な食餌制限をすると、肝リピドーシス(脂肪肝)を引き起こす原因になります。
とくに肥満のねこは肝リピドーシスになりやすいと言われており、24時間の絶食でも危険です。
健康を守るためのダイエットなのに、それで健康を害してしまったら意味がありませんよね。
愛猫のご飯の量はどんなふうに計っていますか?もし、計量カップを使っているなら要注意です。
計量カップではドライフードの量を正確に計るのがむずかしく、数グラム程度の誤差が出てしまいます。
ほんの数グラムと思われるかもしれませんが、体の小さなねこにとっては大きな違い。
たとえば、毎日の食事が1gずつ増えただけでも太ります。
だからこそ、ダイエットを成功させるには、1gの違いにこだわる必要があるのです。
給与量を正確に計測するには、0.1グラム単位で計れるデジタル式のキッチンスケールがおすすめです。最近は安価なものも多いので用意しておきましょう。
本格的なダイエットが必要な場合は、一般的なキャットフード(総合栄養食)ではなく、ダイエット用の療法食に切り替えます。
総合栄養食でも給与量を減らせば痩せますが、必要な栄養素を摂取できずに筋肉量が落ちてしまったり、体調を崩してしまうかもしれません。
その点、ダイエット用の療法食にはねこが健康に痩せられるようにさまざまな工夫が盛り込まれています。
低脂肪、低カロリーでいて、タンパク質などの必要な栄養素はしっかり摂取できます。
繊維質を多めに配合してかさ増ししているため、ダイエット中でも空腹を感じにくくなっているのも特徴です。
なお、療法食は獣医師の指導のもとで与えることを前提にした特別なご飯です。
肥満の度合いや持病の有無などにあわせて最適なものを選ぶ必要がありますので、必ず獣医師に相談してください。
ねこの1日の給与量は以下の式を使って計算します。
・給与量(g)=安静時エネルギー要求量(kcal/日)×係数÷代謝エネルギー(kcal/100g)×100
「安静時エネルギー要求量」は適温の環境で普段どおりに飲食し、運動せずに過ごしている状態で1日に消費するエネルギーの量です。以下の式で求められます。
・安静時エネルギー要求量(kcal/日)=70×体重の0.75乗
「係数」はライフステージや体質、運動量などに応じた数値です。この2つを掛け合わせたものが「1日あたりエネルギー要求量」となります。
太り気味〜肥満の場合の係数は「1.0〜0.8」を掛けます。
「1日あたりエネルギー要求量」はキロカロリー単位なので、これをグラム単位の給与量に変換するには、与えるキャットフードの「代謝エネルギー」で割ります。
多くのキャットフードでは「100グラムあたり」の数字が記載されているので、グラム単位にするために「100」を掛ける必要があります。
iPhoneの電卓アプリを使って計算するときは、画面を横向きにして、以下の順にタップしてください。
・体重Xy0.75=×70×係数÷代謝エネルギー×100=
一般的な電卓では、以下の方法で計算します。
・体重×体重×体重=√√×70×係数÷代謝エネルギー×100=
なお、上記の計算結果はあくまでも給与量の目安です。より厳密に給与量を決める必要がある場合は、獣医師に相談することをおすすめします。
食事のたびに「もっと」とせがまれて、ついつい多めにあげてしまう。
そんな機会が多いねこには、食事の回数を増やしてみるといいかもしれません。
ねこの食事は1日に2回と言われますが、小分けにして回数を多くしたほうが健康にも肥満防止にもよい効果があると言われています。
食事の回数が少ないとお腹が空いた状態が長くなるため空腹感が強くなり、そのせいで必要以上に食べてしまいがちです。
ところが、同じ給与量であっても小分けにして食事の回数を増やしたほうが空腹感が抑えられて食べすぎを防げると考えられています。
ねこの健康のためにも肥満防止のためにも、1日の食事回数を3〜4回にすることをおすすめします。
ダイエットが必要だからといって、こちらが思うようにねこが運動してくれるはずもありません。
でも、ちょっとした工夫で運動量を増やすことは可能です。
誰でも簡単に実践できる方法としては以下のようなものがあります。
これらの方法なら、あまり遊ぶことがなくなった大人のねこやシニアねこもゲーム感覚で無理なく運動量を増やせます。
食べるのが好きなねこほど高い効果が得られるでしょう。
ダイエット中はおやつを与えないのが理想ですが、ルールを守れば与えても問題ありません。
大好きなおやつを抜いてストレスを溜めるよりは楽しくダイエットをする方法を考えましょう。
通常、ねこにおやつを与える場合は、1日の摂取エネルギーの20%までとされています。
これは、主食にプラスするのではなく、主食のエネルギーの20%をおやつに置き換えるということです。1日の総摂取カロリーを増やしてはいけません。
ただし、ダイエット中の場合は1日の摂取エネルギーの10%までにしましょう。
獣医師の指導を受けている場合は、おやつを与えてもよいか必ず確認してください。
ぽっちゃり体型のねこは愛嬌があってかわいいですよね。
しかし、ねこにとっては健康上のリスクが増えるだけでなく、高いところに登れなくてストレスを感じたりなど、生活の質を著しく低下させることにもつながります。
愛猫に少しでも長く健康でいてほしい、楽しく暮らしてほしいと思うなら理想的な体型を維持するようしっかりと管理しましょう。
もし、「うちの子、太っている?」と思ったら早めに獣医師に相談することをおすすめします。